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リアクション
第7章 スキルの考案しましょ〜♪ Story1
エリザベートと刀真が魔法学校の校長室へ戻り、会議が再開された。
真宵はテーブルの上をてきぱきと片付け、テスタメントに用紙を新しい用紙を広げさせた。
「ざっとだけど、担当エリアが決まったわけだから。次は魔道具とスキルの考案ね」
「俺たちが席を外していた時、他に何か話していたか?」
「いえ、特に何もなかったわ。2人がいないのに、話を進めるのもって思ったのよ」
「そうか…。あれ、パソコンの横に…」
置いておいたシャンバラ電機のノートパソコンの横に、紙束が積まれていた。
「意見などをメモしたものだ。それで打ち込みをするんだろ?」
「あ、まぁそうなんだけどさ、和輝」
今からこれをやるのかと思うと、頭の中が真っ白になりそうな気分だ。
「キレイな字だな。これって和輝の字か?」
「そうだが、見づらかったか?」
「いや、なんだろうな…。ごめん、何でもない」
自分が普段ノートにメモする字を思うと、ちょっと悔しかった。
これ暗号?って言われるほど酷くはないが、お世辞にもキレイとは言い難いものだ。
「呪術をレジストすることはできても、かけようとした相手はノーリスクですわね。クローリスの力を借りて、倍返しするスキルはどうですの?」
「うう〜ん、そこまではどうなんでしょうねぇ…」
「ルルディちゃん、できないかなぁ?」
ノーンもニュンフェグラールで召喚したルルディに聞いてみる。
「跳ね返す潜在能力は、…ありません」
「ないって、おねーちゃん」
「では、無効化は?」
「聞いてみるよ。…ルルディちゃん無効化ならどう?」
「―…何らかの作用でスキルとして成立すれば、…ですね。ですが、かなり精神力をいただくことになります」
呪術の無効化は可能かもしれないが、それなりの消費リスクはあると告げた。
「なるほど。それだけの能力なら、負担はいたしかたありませんわね」
強い呪いほど消費も激しくなるかもしれない。
能力を引き出す度に精神力を使うことを思い返せば、当然のことだと納得した。
「クローリスの香りのおかげで、呪いにかかりにくくはなるけど。効果をもらう前に、風で香りが飛ばされないかな?効力が減ったりしないか気になるよね。スーちゃん、その辺ってどうなのかな」
「んとね、かぜのえいきょうはないよー、おりりん」
風の影響で効力が減少したり、かからなかったりする心配ないと五月葉 終夏(さつきば・おりが)に教える。
「へぇー!そうなんだ」
「まだふあんなことあるのー?」
「うん、魔性と強制融合する黒魔術のことなんだけど。神速で動かれると術があたりにくいと思うんだよね。そこで、足止めスキルなんてどうかな?」
ポレヴィークやクローリスの力を借りて、相手の足に絡みつく様子をテーブルに敷かれた紙に描いてみせた。
「止められなくっても移動を低速化させれば、攻撃や呪術に対する対策もしやすいと思うんだよね。その間に哀切の章とか使ってもらうと、取り込まれた魔性の正気を取り戻すためにも、役立つかもしれないよ」
「おりりん、ましょーをきずつけたくないからなんだねー」
「できれば術で苦しみ始める前に、開放したいからね」
肩から降りて膝の上にのったスーの頭を撫でて言う。
「樹ちゃん、エキノ君が勝手に出てきているけど…疲れない?」
「エキノの能力を使っていないからな。そこまでではない」
疲労していないか気遣う緒方 章(おがた・あきら)にかぶりを振った。
「親父〜、お袋が呼び出したんだろ」
「そうだったの?」
「ニュンフェグラールで召喚しない限り、勝手に出てきたりはしないぞ」
「うむ、基礎的な知識だな」
アウレウス・アルゲンテウス(あうれうす・あるげんてうす)もその通りだと章に教える。
「あれれ〜、俺のほうが後から学んだのに。親父ってば忘れたのか?」
技術面では章が勝っているが、知識は追い抜いたと思いにやけ顔をする。
「―……っ!そ、そんなことは…ない、はず…」
自信なさげに言葉を小さくしていく。
「かか様!うちも術とか技とかが使いとうございます!」
「騒ぐなエキノ」
召喚による疲労よりも、エキノに騒がれるほうが倍疲れそうだった。
「これまで黒フードたちが、使い魔使いに狙いを絞って攻撃することが多かったから。僕の場合は防御に特化出来るスキルとか、術式があるといいんじゃないのかな〜って思うんだ」
「そーです!うちもかか様と一緒に、どーんとか、ばーんとかやって、とと様やあに様のお手伝いがしとうございます!」
「…でも、エキノ君は、攻撃したがっているワケなのね?」
「使い魔の特性にふさわしいスキルがあるといいんじゃないのか?花なら花粉とか、樹ならツタとか、水なら…なんだろ…津波?」
「なぜ花粉なのじゃ。目がかゆくなったりくしゃみを狙っているのかのぅ」
緒方 太壱(おがた・たいち)のスキルチョイスに、ジュディ・ディライド(じゅでぃ・でぃらいど)が首を捻る。
「例えばだって。べつに花びらの防御でもいいと思うし」
「進化したクローリスには、すでに魔法防御に対するもののような能力が加わっているのだが。主に、闇黒系にだろうがな」
「え、マジ?」
アウレウスの言葉に“もうあったのか〜!”と驚く。
「付属するものが増えると、アウレウスたちの負担が大きくなる」
「主、なんとお優しいお言葉!」
使い魔用の能力スキルによる、さらなる負担を心配されたアウレウスが感激する。
「アイデア術で事足りるものもありそうじゃ。津波じゃが、例えば哀切の章とニクシーの水を出す能力で、可能じゃなかろうか。スペルブックの章による能力を混ぜれば、仲間を巻き込んで傷つける心配もなくなるじゃろう。アイデア術とは、そういうものなのじゃよ」
「な、何!?魔道具でそういうことができるのかよ、ジュディ」
ジュディにアイデア術とは何かと教えられ、新たな知識が増えた。
「力を合わせて工夫すれば、いいってことだね」
「そうです、とと様、聡明なのです!あに様!エキノも戦えますよねっ!」
「ルカルカ君が持っているエコーズリングを使うとよさそうだね、エキノ君。すでにある術とかでね」
クローリスを扱える樹なら、他のメンバーが成功させた術でも使えそうだと言う。
「確か今あるのは、花嵐とサンクチュアリだよね。それなら、樹ちゃんがエキノ君を呼び出して使えそうだよ」
「私だけでもということか?」
「うん。劣化版の能力になるけど、樹ちゃんが使い魔を扱う能力を上げれば、オリジナルと同様として使えるみたい」
「ふむ…」
「上級以上の能力があれば、劣化のない力が使えちゃうのよ♪ルカは後もうちょいかな」
章の説明にルカルカが付け加えて言う。
「でも使い魔を呼び出して使いう場合は、呼び出せる人のみなの。だからね、劣化しない力を引き出すには、能力としてクリエイター以上は必要よ」
「なんと……っ」
先は長そうだと目の前が白くなりかけた。
「ま、まぁ、望みはあるんだから。頑張ろう?樹ちゃん。エキノ君もこんなにはりきっちゃってるし」
ばたばたとはしゃぎ回るエキノへ章が視線を当てる。
「ああ、こらっ!他の者に迷惑をかけるな!」
「痛いのです!」
「くぁあっ」
殴った拍子にトゲがチクリと樹の拳に刺さった。
「エキノだって戦えます!サボテンだもの!サボテンだもの!」
「サボテンだからというのはよく分からんが」
元々クローリスだけでは攻撃能力はなく、強調しているエキノをうるさそうに見下ろす。
「これ以上騒ぐなら帰還させるぞ、エキノ」
「いやなのです、かか様っ。ごめんなさい〜っ」
帰還させられては大好きな樹といる時間が終わってしまう。
エキノはしぶしぶ大人しくしていることにした。
「エリザベート校長先生、どちらの方が良さそうですか、攻撃と防御の?もしもーし、…怒ってます?」
騒ぎ過ぎて怒らせてしまったのだろうか。
無表情で振り返った幼い校長の機嫌を窺う。
リオンと磁楠も爆発寸前といった様子でこちらを睨みつけていた。
「いいえ?もっと騒ぐなら、フレアソウルの炎を出そうとか、考えてませんでしたよぉ全然♪」
「うん、怒ってますね…。ごめんなさい!」
エキノたちに代わって章はエリザベートに、全力で深々と頭を下げた。
「こほん…まぁ許してあげますぅ」
エリザベートは咳払いをして苛立ちを沈めた。
「質問のことについてですがぁ、攻撃する人を守る人が少なくなるのも問題ですよねぇ」
「攻撃は最大の防御にはならないってことですよね。いやぁまぁ、火山の件でなんとなく分かってましたけども」
自分のチームメンバーで、樹やアウレウスへの守りが薄かった苦い経験を思うと、なるほどと納得するしかなかった。
「オレのほうは治癒や防御よりも、黒魔術に対するカウンタースキルを考えてみたんや」
「興味深いですぅ!どんなのですかぁ〜?」
黒魔術をどうカウンターするのか気になり、エリザベートが身を乗り出す。
「指差し方向のほうへねじ曲げて、効果を別へ逸らすスキルやね」
「こーやって、どこか違う方向にですかぁ。対象が何かに変わるってことじゃないですよねぇ」
「せやね、被害が行くようなものとはちゃうし、唱えた相手に跳ね返すってのもアリやと思うんや」
「発動されたらってことですよねぇ」
「そりゃそうやね。受けたもの軌道なんて変えられんし」
「我が提案書を書いておくのじゃ♪」
書き込んだメモ用紙を千切り、入力をしている刀真のほうへ持っていく。
「これもよろしくのぅ」
山済みの紙束の上へさらに乗っけた。
「皆…、手書きなんだな。いや、当たり前か」
集中して打っているため、聞き漏らしてしないか心配だったから、書いてもらうのはありがたい。
やはりというか丁寧に書いてくるものだから、普段の自分の比べてはため息をついた。
「私からは、魔道具の白の衝撃を媒体とした、白魔術を提案しよう。そこでエリザベート校長、白魔術に関する文献はあるかな?」
「はぁ〜い♪貴重なものですからぁ、大切に扱ってくださいねぇ」
スキルの参考に見たいという者もいるはず。
そう思い校長室に運んでおいたのだった。
本の鍵を外し、涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)に渡した。
「(年代からすると当然だが、校長も生まれていない遥か昔のもののようだね)」
白魔術を行使するものがいなくなり、失われてからだいぶ時が経っているようだ。
スペル文字を解読し、分権を頼りに学べば習得に至るかもしれないが、かなりの時間を費やしそうだった。
文献を元に白魔術の気を秘めている魔道具より、発動まで至る新たなスキルを開発することを選んだ。
「まったく読めん」
陣も覗き込んで読んでみるが、さっぱり分からなかった。
「先生方は解読できるのかな?」
「えぇ、大変でしたけどねぇ。なんとか読めるようにはなりましたよぉ〜、涼介さん」
「読んでもらえると、とても助かるのだけど」
「いいですよぉ〜♪最初のページですけどぉ。邪の二心なく曇りのない穢れなき心、他者への献身的に尽くす者ではなければならい…とありますねぇ」
にっこりと笑顔で言いエリザベートは読み始めた。
「穢れを求める邪道に至る者は、これを使うに至らず…」
外法である黒魔術を扱う者は行使に至らないと告げた。
「やっぱ破壊とかもそうなんか?」
「そうでしょうねぇ、陣さん。誰かを悲しませたり、故意に傷つけたりする者には使えないんですぅ。前にも言ったかもしれませんが、逆に…私とラスコット先生は黒魔術は使えませんからぁ。そーゆうことなんですぅ」
「素養もないってことなんやね」
「はい〜、まったくありませんねぇ。私は長生きしたいしですし、使いたいとも思いませんからぁ。例えばぁ、陣さんや涼介たちみたいな方にもないと思いますぅ」
「それって喜ぶべきポイントなんかなぁ。うん、そうやな…オレ」
外法へ至る素養ナシと言われ、素直に喜ぶものなのかと自分に確認するように言う。
「陣さん。邪道に走りそうにないってことだから、よいことだと思うよ」
「ヒトとしてオワタッ!になるもんなんて、いらんもんなぁ」
「ネットじゃ闇落ちするかもしれんが、そっちの意味の闇落ちでなくよかったのぅ、陣」
「当たり前やジュディ。寿命縮めて楽しいことなんてなんもないやろ。人生太く短くなんてありえん」
からかうように言うジュディに、真剣な面持ちで言う。
リミットの時計の走らせてしまえば、エターナルソウルの力でも戻しきれないものだ。
仮に壊滅させたとしても、そこで針が止まるだろう。
たが、残された者たちの針は進み続ける。
リーズたちを残して先に逝く選択はない。
「グラルダ。扱った者の対価は、他者へも悲しみとして大きな痛みを与えるようです」
「アンタ、アタシに何を言いたいわけ?」
「別に…感じたままのことを口にしただけです」
シィシャは人をいうものはこうなのだと言い、目を逸らそうとするグラルダへ皮肉を含めた言葉を投げつた。
「校長、続きをお願いしたい」
「そうでしたね。清き水流は、疫をもたらす暗き泥を退かせ、泥は天の熱で浄化されるだろう…とありますぅ」
「泥とは、黒魔術のことかな?」
「はい〜、おそらくは」
「魔道具を上手く使うには、イメージも大事だったね。白魔術の気を引き出し、スキルとして具現化まで至るような感じはできないだろうか」
対黒魔術用防御として浄化するスキルを提案する。
「ふむ、守る者なら倒されぬよう相応の能力を、身に着けなければということじゃな。リーズも囮で倒れるわけにはいかぬだろうしのぅ」
「俺からもよいだろうか」
「うむ!」
ジュディはダリルに頷いてペンを用紙にスタンバイさせた。
「不可視化した魔性や、姿を隠しているフラワシなどを可視化する魔術についてだ。術者だけでなく、誰の目にも見えるようにな」
「エアロソウルがあると思うが。それではいけないのか?」
「樹、本や使い魔を呼び出す者では扱えないだろ」
「ううむ…」
「んー、検討じゃな。打ち込み、よろしくなのじゃ刀真♪」
つらつらと書き込み、ようやく紙束を処理し終えるかと思ったところへ積んだ。
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