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リアクション
「 くだらない世の中でありますね、キロス。同士の約束も忘れて、もうお帰りでありますか? 」
「て、てめえ! 放しやがれ!」
葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は、キロスを背後から羽交い絞めにしていた。彼がこんなにあっさりと捕まったのは、やはり他人との交流で気が抜けていたからだろうだろう。
だが、吹雪は違う。リア充が憎いリア充が憎いリア充が憎いリア充ががひたすら憎い。戒めが強力なのは、吹雪の怒りの証だった。
「 女の子おんぶして、女の子に迎えに来てもらって、満足してお帰りでありますか? クソみたいな男でありますね 」
「ちょ、ちょっと、なにするのよ!?」
キロスを一緒に連れて帰ろうとしていた香菜もイングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)に不意打ち気味に襲われて押さえ込まれている。
「寄るな! 動くと香菜が大変なことになるぞ。この書き手は何でもやるんだ」
助けようとやってきたメンバーに、イングラハムがメタな威嚇をする。
「 ぐふふふふ。この二人を助けたかったら、リア充どもに爆発してもらわないといけないでありますね? ……一人ずつ、断崖絶壁から飛び降りてもらいましょうか 」
吹雪が、立てこもり犯のごとく要求を出し始めた。
「 一分ごとに、一人。さもないと、キロスや香菜が大変なことになっていくであります 」
「ふざけろ! てめえ、ぶっ殺すぞ!」
キロスがわめくが、吹雪にはもはや関係なかった。そして、彼女は知っていた。終わりのときが近づいていることを。
「ぶっちゃけ、キロスとかどうでもよくね? あいつもリア充狩りの一人だったんだし」などと言い始めている。
「てめぇら、後で覚えてろ!」
「だが、香菜が……!」
そう言おうとしたイングラハムは、突如どこからともなく飛んできた木製の長槍に頭を貫かれていた。
「ごふっ……。こんなあっさり……」
彼は、もはやこれまでと『破壊工作』スキルを自分に使い爆発を試みる。
「殺ったどー!」
そのイングラハムの頭を鷲づかみにぽいっと放り投げたのは、あの後野生に戻り食べれそうな野生の動物を狩っていた九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)だった。
ジェライザ・ローズは、こんなばかげた騒ぎには自分は向いていないとばかりに、香菜の手を取りその場を立ち去る。
その背後で爆発が起こった。
「ちくしょおおおおおおおお! リア充爆発しろぉぉぉぉぉ!」
断末魔を残してイングラハムは姿を消した。
「あ、ありがとう……」
全く、何だったんだ? 呆気に取られた香菜がジェライザ・ローズに礼を言う。ジェライザ・ローズは微笑み返しただけだった。
香菜から危機が去るのがわかると、全員一斉に吹雪に襲い掛かってくる。
「結局、携帯ゲームも取り戻せたし、めでたしめでたし」
女の子を傍にはべらせたアキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)が、プレイを再開しながら、その光景を遠巻きにニヤニヤ見ている。
「ソロ充とかないわー。やっぱ、夏はリア充だろ。美少女に食べさせてもらうフルーツはうめぇうめぇ……」
「 おのれぇぇぇぇぇぇ! 神よ! この世に自分を生んでおきながら、何故同時にリア充も生んだのでありますか!? 例え地獄に落ちようとも、また戻ってくるでありますよ! 」
吹雪は全員にフルボッコにされ、最期の時を悟った。
「 さらばでありますよ、キロス。次ぎ会うときは、裏切るなであります! 」
吹雪は『エンヴィファイア』を膨張させて暴発させる。憎しみと呪いのみに取り付かれた彼女ならばこその最後の自爆技。
「 リア充爆発しろ! 」
吹雪は、キロスもろとも『エンヴィファイア』の黒い炎に包まれながら弾け飛ぶ。
ドドドドーーーーーーーーン!。
呪いと憎しみの爆発が当たり一面を吹き飛ばしていた。
「ざっけんなクソがぁぁぁぁぁ!」
「SHIIIIIIIIIIIIIIIIIIT!!」
島のメンバーの罵声が、吹雪への何よりのはなむけだった。
空に、吹雪とイングラハムの笑顔が浮かび上がる。
だが、誰も見ていなかった……。