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血に染まる学園

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血に染まる学園

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赤黒い憎悪と恐怖に染まる学園

 夏來 香菜(なつき・かな)を始め、次々と犠牲者を出している蒼空学園内。

 その廊下を匿名 某(とくな・なにがし)が憎悪にまみれた表情で歩いている。

「(あの子はその場いただけだ……悪いことなんてしてない、本当に優しくていい子だった。俺にとってあの子は『世界』そのものだった……。
俺から『世界』を奪った!)許さない……奴らだけは全員ぶち殺す。命乞いも言い訳も聞かねぇ」

 某は殺された大事な子を想いつつ、ずんずんと女王の加護とディメンションサイトで警戒した状態で進んで行った。


ーーーぴんぽんぱんぽーん


 よくある校内放送を知らせるチャイムが鳴り響く。

『あーあー。聴こえるか? 聴こえるよな? みんなよく聞いてほしい。現在あちこちで猟奇事件が発生しているのは知っているな? パニックになるのは分かるが、ここで個別に行動するのは危険だと言うことを自覚するのだ。今は速やかに各学年の一組教室に移動せよ』

 この放送が嘘か真か分からないハズなのに、聴こえてくる声は生徒たちにとって上位に立つものであると、この声に従わなければという気を起こす。
 そう誰か分からない声には適者生存の気配がするのだ。

『その教室内にいる者同士、互いに互いを守り、妙な動きをする者を監視すれば、自ずと個別行動を取るよりは生存率が上がるだろう。
どうか、今はそれぞれの教室へ移動してくれ。我は一人でも多くの生徒を救うために言っているのだ。頼むぞ』


ーーーぴんぽんぱんぽーん



◇          ◇          ◇




 放送のスイッチを切る砂場 時鍵(すなば・ときかぎ)
 深く息を吐き、深く椅子に腰かける。

「ふー……これでよし。あとは我が教室に行って、周囲を落ち着かせれば良いのだ。我ならできる……」

 恐怖で震える手に力を込め、時鍵は放送室を出ていく。

「よ、よし……誰も襲ってこないな……」

 超感覚と野生の勘で誰も襲ってくるような気配が無い事を確かめながら、教室目指して歩いて行く。
 途中で出会う生徒たちには放送で行った様に、適者生存で信頼を得て共に教室を目指す。


………………
        ………………
                ………………


「よし、ここまで来ればもう大丈夫だ。後はこの中に入るメンバーで互いを守って行くぞ」

 辿り着いた教室の前で時鍵が共についてきた生徒たちに語りかける。
 そこへ教室内から、キャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)の悲鳴にも似た叫びが聴こえてくる。

『ジョウダンジャナイワ、殺人鬼と一緒にはいられないワヨ!』

 ガラッとドアが開き、キャンディスは時影が止める間もなく走ってどこかへ行ってしまう。
 キャンディスの騒動で落ち着きかけていた生徒たちの不安が再び湧きあがって来る。

「落ち着け! パニックになることが一番危険だ!!」
「こ、これが落ち着いてられるか!」
「そうよ!」
「さっき出て行った子が言った様に、もしこの教室に犯人がいたらどうするのよ!?」
「だったら、怪我した時はこの教室に来れば良いのですよ」

 パニックで廊下も教室内もうるさくなっている中、なぜか九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)の声はスッと生徒たちの胸に入ってきた。

「私は医者です。襲われたとしても、命がある限り私が手を尽くしてみんなを手当てする事ができます。この教室に居たくないのなら、別の場所に行けば良いだけのことです」
「しかし、それだと……」
「キミは互いに監視し合えば良いと言いますが、今の状態じゃみんな疑心暗鬼で殺し合いに発展してしまいますよ」
「ぐ…っ」
「もう一度言いますよ? 怪我がしたらここに来れば良い。彼のように監視し合う事に賛成なら教室に残る。それが嫌なら教室を後にすれば良い。さぁ、どうしますか?」

 生徒たちがそれぞれ顔を見合わせどうしたものかと悩む。
 しばらく無言の時が流れ、一人がもう一人の手をつないで教室を後にするのを見て、我も我もと教室を後に出ていく者が幾人も出てくる。
 それでも、全員が出て行く事はなかった。

「良かった。残ってくれる人がこれだけいて」
「全員が出て行ってくれなくて良かったぞ」
「そうですね。と言っても私はここに残るつもりだったので、ゼロってことはなかったんですけどね」
「そうか」
「では、放送で言ってたように相互に監視、怪しい行動をした時は、ここにいるみんなでその人を捕縛ってことで。それで良いですか?」

 ローズがそう言って教室内を見回す。
 それに否を唱える者はいない。

 こうして時鍵、ローズがいる教室では監視し合うことでこの窮地を乗り越えようとするのだった。