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みんなで楽しく?果実狩り! 2023

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みんなで楽しく?果実狩り! 2023

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【灰とブドウとお詫びの手紙】

「おば……豊美ちゃん。先日収穫された葡萄に関する報告が上がりましたので、お伝えします」
 後日、『豊浦宮』にて飛鳥 馬宿が『アッシュブドウ』に関する報告書を読み上げる。正座して聞く豊美ちゃん、横では鵜野 讃良が『豊浦宮』に届けられたダリル作のパンをはむはむ、と頬張っていた。
「……以上のように、売上は順調に推移しています。
 収穫の際の混乱はありましたが、費用の面において損失は発生しません。農園と『豊浦宮』、双方に利益をもたらすことでしょう」
 報告書を読み上げ、一礼して馬宿が席に着く。『豊浦宮』の活動の成果もあって、『アッシュブドウ』はなかなかの売上を叩き出していた。
「よかったですー。アッシュさんも根はいい人でしたし」
 膝の上でごろごろ、とする讃良ちゃんを撫でながら、豊美ちゃんは先日の事を振り返る。『アッシュブドウ』の生産者であるアッシュに対して、利益の一部を還元する旨を伝えたものの、「俺は金が欲しくて育てたわけじゃない、みんなに美味しい果物を食べて欲しかったからだ」とアッシュは言ってのけた。何度と無くアッシュ似の何かに困らされているのは確かだが、だからといってアッシュが悪いわけではないのだ、と再認識出来た。
(アッシュさんのためにも、事件を解決しないといけませんねー)
 意識を新たにして、豊美ちゃんはさて、と気分を切り替え、手元に机を引き寄せると書きかけの手紙の執筆に取りかかる。
 それは、先日の果実狩りで謎の負傷を負った者たちへの、アッシュの代理でしたためるお詫びの手紙だった。


 ――事の発覚は、ベアトリーチェから託されたパイを渡しに向かった美羽と魔穂香が、農園の一角に何個もの不自然に落ち葉が積まれているのを見つけた事によるものだった。
「豊美ちゃん、これって……」
 その光景に見覚えがあるらしく、表情だけで何なのかを訴える魔穂香に豊美ちゃんは落ち着いた顔付きで、「ここは私に任せてください。あっ、パイも私が渡しておきますね」と告げる。魔穂香と美羽が戻るのを見送って、豊美ちゃんは『ヒノ』を呼び寄せると高らかに掲げ、集めた魔力を落ち葉の塊へ向ける。すると辺りは、一見何も起きていないかのように変わった。脱ぎかけたネージュに使ったもののさらに応用版で、持続的な癒やしの力もかかるようになっており、数時間もすれば動けるくらいに回復するだろう。
(これでよし、と。じゃあ、アレクさんの所に戻りましょう)
 頷いて、『ヒノ』を仕舞い、豊美ちゃんは籠を持ってエイボンから聞いた言付け通りにアレクの車へ向かい歩き出す。
 どうしてこのような自体に陥ったのか、豊美ちゃんには予想出来ないが、自分が眠っている間に沢山の人が交流し、様々な事が起こった結果なのだろうと察すると、豊美ちゃんは敢えて一から追求しようとしなかった。なんとなく、それが一番正しくて、優しい対応な気がしたのだ――。


「皆さん、早く元気になってください」
 そんな思いを込めて、豊美ちゃんは手紙をしたためる――。



『みんなで楽しく? 果実狩り! 2023』完

担当マスターより

▼担当マスター

菊池五郎

▼マスターコメント

 本シナリオに参加頂いた皆様、読んで下さった皆様、どうも有り難う御座いました。

【東 安曇】
 東です。
 だからガイドで『普通でいられる訳がない』って言ったじゃないですか……。はは。

【保坂 紫子】
 保坂です。
 結末は、まぁ「ですよねー」ですが、楽しんで書かせていただきました。

【猫宮 烈】
 猫宮です。
 実は執筆中、自分が最後だったわけですが、それまで他のお二人が書かれたリアクションを読んで思ったのは、
 「これは最後を締める者として、この惨状になんとかオチをつけなければ!!」
 という(まあ、無駄かもしれない)使命感でした。

 というわけであんなオチです。
 アレクさんに○された人たち、(もちろんな話なのですが)無事ですのでご安心くださいませ。


 さて、今年も実りの季節がやって来ました。
 日々、店頭に並ぶ果物の変わり具合を楽しみにしています。今は梨が少なくなって、葡萄や林檎が増えてきました。
 まだまだ果物を楽しめる期間は続きそうです。
 それでは、またお会い出来る事を切に願って――。