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忘れたき黒歴史の流出危機

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忘れたき黒歴史の流出危機

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 と、時を逆行している間に美羽と海は武李との距離をあっという間に縮め、その喉仏に喰らいつこうとしていた。
 だが部下たちが力を結集させ、武李をかばう。
「ここを耐え切りましょう。そうすれば後は暴露してしまうだけです」
 武李の部下たちを巧みに扱う十六凪。
 完全防御態勢に入った武李たちに構わず、一点突破を目論む美羽と海。
「に、にげてっ! あの人たち目がマジだよ! いくら君たちが僕より強いと言ってもあの二人には勝てっこないよ!」
「そう、ですね。でもね武李様。俺たちはそれでいいんですよ。あなたの壁になって、あなたを守れるなら、それで……」
「き、君たちっ……! ……ありがとう!」
 そう言って武李はできるだけ距離をとろうと後退する。
 武李に優しく微笑みかけた部下たちは鬼神と化した二人へと向き直り、心の中で念じた。

(俺たち、この戦いが終わったら……メイドさんの膝でゆっくり休むんだ。ふひひ)

 その数秒後、彼らは秋の季節に散っていくイチョウの葉のように、散っていった。
 その捨て身ともいえる防御は二人の攻撃から武李を守った。
「……みんなの覚悟が、僕の心を叩いてくれた。もう容赦はしない! 全部、全部全部全部!! 暴露してやる!
 覚醒を果たした武李がPCを開き眼前にいる契約者たちの黒歴史を検索し、手始めに暴露しようとする。
 その愚考を止めようにも武李も一点に留まるわけではなく、またオリュンポスのデスストーカーや十六凪がそれをフォローするだろう。
 最早実力行使で短時間で武李を無力化するのは難しい。
「なら、俺の出番やな! これで終わらせたるでぇ!」
「ちょっと、あんまり変なこと言わないでよ?」
 実力行使がだめならば、と名乗りをあげたのは上條 優夏(かみじょう・ゆうか)。その隣には優夏の暴走を止めようとフィリーネ・カシオメイサ(ふぃりーね・かしおめいさ)が苦言を呈していた。
「黒歴史に始まったこの事件、なら黒歴史でしめなあかん! それもさいっこうの、どでかいやつを! ほないくでぇ!」

-----上條 優夏の黒歴史-----
「俺はな、前世は超勇者で魔王をその身に封印した、光と闇が合わさった最強のヒーロー……。
時には人として、時には魔としてあらゆる事象に干渉し己が道理で道を切り開くんや!
もちろん、いつ決め時が来てもいいようにポージングの練習もかかさへん!
その証として新世界への扉のスキルをぶっ放せるようになったんやで?
ほんでラストはな……最強のHIKIKOMORIのネ申(かみ)になるんや!
超勇者魔王最強HIKIKOMMORI神、ここに爆誕や!」(【HIKIKOMORIヒーロー】上條 優夏談)
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「ドヤ、俺より酷い黒歴史持ってる奴おるんやったら会ってみたいもんやな!」
「それ威張れる事じゃないから!」
「あだっ!」
 優夏の黒歴史暴露に、たまらずフィリーネが突っ込む。しかし最後まで言わせたのは素晴らしい判断だった。

――――エラ_発生。 ラ_ハッ生。シsiス theムを周fgしまzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz

ボンッ!!

「あいたー!! ……ってPCが爆発したー!?」
 エラーが蓄積していたPCが、最後の最後で特大の一撃を喰らい、遂に爆発した。
 これで武李の手元に黒歴史のデータはなくなった。彼はバックアップなど、取っていない。つまり黒歴史のデータは消滅した、ということになる。
「で、でもっ! 君たちの黒歴史はさっき見ていたからまだ覚えている! さささ、最後くらいは道連れにっ」
「そこまで。もう勝負はあったでしょ? 引き際を悟るのも重要だよ?」
 事の成り行きを見守っていたルカルカ・ルー(るかるか・るー)が現れた。自棄になっている武李にゆっくりと近づく。
「せめて最後の一太刀、くらい!」
「蒙 武李。二十四歳。二十三までは普通に暮らしていたが、今の部下たちに泣きつかれて今に至る。子供のころ「武李には無理」と言われ続ける。また、好きだった人に頑張ってアプローチするも「武李って名前なんだから、無理だってわかりなよ」とそこでも自分の名前を理由にフラれて以降、軽度の人間不信に陥る。だが、部下たちのために日々寝ずに情報を収集し、今回の事件を引き起こした」
 ルカの口からつらつらと語られる武李の実態。
「ど、どうしてそれを……」
「そこらにいた部下の人が教えてくれたわ。自慢出来る人なんだーって、うれしそうに。……それで提案なんだけど、それだけの情報集能力があるなら、それをそのまま仕事にしちゃえば?」
「え?」
 きょとんする武李に、ルカが続ける。
「それでメイドさんも雇ったらいいじゃない? それだけデータを集められるなら問題ないよ!」
「……その発想はなかった」
 ルカの言葉に驚愕しながらも、そっちの方がメイドさんにも会いやすい、かつ社会の歯車にはなりにくい職種でもあるため、何も問題はないと今更になって気づく武李。
「……ただこのまま何も言わずに終わるのも、ちょっと釈然としないというか」
「あ、そういえば。ナガレツキ、っていう人の黒歴史だけは公開しないでほしいな♪」
 まったくもってその通りである。
「あ、それ覚えてます。……なんかやられっぱなしもアレなので、最後にその人の黒歴史をバラしてやる!!」
 なん…だと…?
「キャーヤメテー」
「問答無用!」

-----ナガレツキ カズトの黒歴史-----
「これはまだこの人が制服を着ていたころの話なんだけど、
超大型のアミューズメントパークに友人と一緒に行ったらしいんだ。
当然、はっちゃけまくりでテンションあげあげだったんだけど、ふとお手洗いに行きたくなってトイレに向かった……。
トイレの入り口まで来たんだけど、何か周りの女性に不審な目で見られる。
おかしいなぁと思っていざ中に入ろうとした時、ふと気づいたんだ。
『ん、なんで女性がいるんだ』って。……そしてある恐ろしいことが頭をよぎる。
急いで引き返して、トイレ入り口にあるマークを見て愕然とする。そこは……『女性用』のトイレだったのだから。
これで終わればよかったんだけど、運悪くスタッフさんに見つかり事情を聞かれ混乱して、しどろもどりになりながらひたすら謝ったらしい。
今でも、女性たちの白い目が忘れらないそうな」(蒙 武李談)
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「ワザとなら、とんだ変態ね」
「だな。さぞ女の人たちは怖かったろうに」
 ……と、雅羅と海が謎の人物の黒歴史に辛らつな言葉をかける。
「というか、この事件自体が黒歴史になっちゃいそうね」
 そう雅羅と海に話しかけるフィリーネに、ルカが笑いながら横から口を挟む
「んーでも二人はまだまだ黒歴史がいっぱいだよ? 例えばねぇ……」
「「言わないで!・言うな!」」
 二人のハモりは、これ以上勘弁してくれ、そんな心の叫びにも聞こえた。
「ふぅ……よし。こんなバカげたことはもうやめよう。普通に働いて、メイドさんを雇おう」
 そう言う武李の目は、ひどく綺麗に染まっていた。

 この後、蒙 武李は全国に謝罪し、探偵のような仕事を始めることになる。
 念願であるメイドさん雇用のために、部下たちと日々頑張っているそうな。
 これにて少しだけ世の中を騒がせた事件は、少数の契約者の心を抉りつつ、何とか幕を下ろした。

担当マスターより

▼担当マスター

流月和人

▼マスターコメント

いや、あれは本当に事故でした。よほど疲れたのです。
ただ、ガチで睨んでた女性のあの目。今でも忘れることが、できないとです……。

どうも、ナガレツキ兼流月和人です。別に「ルツキ」や「ルゲツ」「リュウゲツ」などなど色んな呼び方をして頂いて問題ありません。
まずは黒歴史を叫んだ勇者たちに敬礼を。

……………………………………

はい。今回はアクション内に皆さんの黒歴史を記載するという『不幸の手紙』ばりのシナリオガイドに、
なんと十人以上のPLさんが集まりました。なんというチャレンジ精神っ……! ありがてぇ……!と夜正座で祈りを捧げたのを覚えています。
このようなカオスチックなシナリオに参加して頂き、本当にありがとうございました。
これからもカオス渦巻くシナリオを、いわばカオスシナリオを公開できたらなと思います。
それでは、またご縁があれば生暖かく見守ってください。