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パートナーの飯が不味いんだがもう限界かもしれない

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パートナーの飯が不味いんだがもう限界かもしれない

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■爆発から始まる味の崩壊■


 工程工程で爆発が起きていたりして高峰は自分の料理が心配だったが、味見をした所問題はなかった。
 しかし、見た目が壊滅的に不味そうである。
 色はおかしな事になっているし、形も原形を止めていないばかりか煙まで出している。
 盛り付けでどうにか誤魔化そうとしたものの、それも駄目だった。
「……あっ、あの、こんなのですみません……その、私あまり、盛り付けが得意でなくて……あ、味は普通……なんです、これでも……」
 小さくなる高峰だったが、料理人のメンバーを見て、こういうものがでると思っている面子揃いで、驚いて逃げ出す事はなかった。
 ……けれど、知らなければ、逃げ出す人も多かっただろうと思われる。
「うまっ!」
 見た目とは裏腹に美味しい料理に、次々と箸が伸びていく。
 高峰は、ほーっと胸を撫で下ろした。

 そして、美味しそうと言えば、セイルのレアチーズケーキである。
 美味そうとわらわらと人が集まって来る。
「ゼラチンを使わずレモン汁で仕上げ、口当たりを最大限に高めました」
 極上のクリームチーズと生クリームを贅沢に使用。
 クッキーを砕いて下に敷き詰めたレアチーズケーキ。
 本当に、とっても美味しそうだ。
「さぁ、召し上がれ」
 にこやかなセイルから料理を受け取る人々。
 無限は、心配そうにその様子を遠くから見ていた。
 ボンッッ!! 

 爆発が起きる。
 口に入れた途端、ボンッと音がして、第一犠牲者は口から煙を吐いてぶっ倒れた。
 目を白黒させた高峰が慌ててキュアオールを詠唱した。
 セイルは、心の込めた愛情――もとい、破壊力がいい味を出している事に満足な笑顔を見せた。
 じりっと後ずさって遠巻きになっていく人々を見て首を傾げた。
「……えっ、食べたくない?」
 セイルの言葉にブンブンと首が落ちそうな勢いで頷く人々。
 すーっと、セイルは戦闘モードに入った。
「逃がすと思ってるのか? ずべこべ言わず食え! クククッ、アハハハハッ!」
 追いかけて、その口の中へとチーズケーキを放り込むセイル。
 数々の爆発が起きていった。
 ルカルカは夢想の宴を使い、メイド姿の美緒がデザートを持ってくるという幻を皆に見せながら、気を失っていく皆を回復していった。

 事が済んで。
 セイルのケーキを口にした者達は言った。
「地獄すら生温い絶望が、口いっぱいにとろけて広がる味」
 と。


 数々の料理が並べられていく中、ルカルカは美緒にトリュフチョコを渡した。
「飲物の添え物とかデザートの片隅に乗せてもらえると嬉しいな」
 獅子のチョコレート(安らぎのチョコレート)を使って作ったルカルカお手製チョコレート。
 薔薇のコックコートを着て、みらくるレシピ、虹色スイーツ使用で、ものすごく美味しいチョコレートを作って来たのだ。
 これで食べた人の気力は回復するだろう。
「美味しい〜」
 ルカルカのチョコレートを食べて、とても幸せそうに頬を綻ばせる美緒。
「『美味しいは幸せ!』これが合言葉!」
「美味しいは幸せ!」
 ルカルカの台詞を美緒は真似、にこーっと二人は笑い合う。
「美緒の料理、凄く楽しみっ、美緒も一緒に食べようよ」
 今にも逃げ出しそうなラナの腕を掴みつつ、席に勧めるルカルカ。
「そうですね、もう料理も出すだけになりましたし……。ほんのちょっとだけ失礼しますね」
 自分が作った料理を、どう作ったか、もとい誰と作ったか事細かく説明していく美緒。
 話を聞けば、見た目は大分マシになったものの、元はものすごかったようだ。
 それに、美緒の料理は片っ端から誰かしらの手が入っているらしく、傍でそれを聞いていたラナは安心したらしく力が抜けていった。
 まず、周りに被害を出さないようにと考えているならば、まず手が出るのが『見た目からして、ひどそうな物』からだろう。
 地獄絵図を描いたような料理から手を出すルカルカ。
 一緒にラナも手を出すが――一瞬にして気を失いかける。
 潜在解放で、ルカルカはラナの耐性力を上げた。
 ナノ治療装置を使い自動回復中のルカルカは、肉体の完成も使用して持ちこたえる。
(美味しい! 幸せ!)
 トランスシンパシーで、その想いを皆に飛ばし、シュトゥルム・ウント・ドラングで気を奮い立たせる。
「美味しいよ」
 にっこり笑顔を見せたルカルカに美緒も満開の笑顔を見せる。
 野外任務でもっと酷い物食べてるルカルカにとって、贅沢はいえない代物だったようだ。
 見た目が単独で作った美緒の料理と似ているため、少々錯覚を起こしそうだが、それはセレンフィリティが単独で作った料理である。
 美緒自身の料理は、ふっと気付くとちょっと手伝っただけで、ほぼ冬山、ネージュ、ユリナ、リーブラの料理上手なメンバーが下拵えから仕上げまで作ってしまったのだ。
(美緒が頑張って作ってくれんたんだもん。それだけでも美味しい)
 ふーと幸せに浸っていると。
「これがわたくしが作った――というより、手伝ったに近い気がしますが、料理です」
 こちらも是非どうぞ、と、美緒から渡された料理。
 それはごくごく普通に美味しそうな麻婆豆腐だった。
 ちょっと考えて、さっき食べたのは他の人が作ったと悟ったルカルカは、改めて気を取り直して美緒の料理を口にした。
「美味しい〜」