校長室
ガルディア・アフター ~甦りし影の魔女~
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終章「深淵なる闇」 〜屋敷・大広間〜 「ぐぅぅああッ!」 押し寄せる闇の波動に薙ぎ払われ、ガルディアは地面に叩きつけられた。剣を杖代わりにふらつきながら立ち上がる。 「なんだ、あの力は……」 彼の隣からベルネッサが銃撃を浴びせるが弾丸は全て闇に吸い込まれるようにして消えた。効果はほとんどないといっていいようだ。 その攻撃を嘲笑う様にストレガは無数の影の大槍を生成、二人に目掛けて放った。 「……これならっ!」 ベルネッサが凶司からもらった弾頭を放つ。その攻撃は着弾と共に周囲を巻き込んでいくつかの影の大槍を消滅させるが、その全てを撃ち落すには至らなかった。 「どいていろ……」 目を閉じ、刀を納刀してガルディアは精神を集中する。彼の髪色が紅へと変わり、開いた瞳は深紅に輝いていた。 左の手の平から引き出す様にして紅色に輝く太刀を抜き放つ。 ガルディアはそれを両手で構えなおすと跳躍、影の大槍に立ち向かう。黒と紅がぶつかり合った。 幾重にも放たれた紅い剣閃は影の大槍を斬り裂き、その全てを塵へと変えていく。 着地と同時にガルディアの髪色が元の色へと戻った。 ぐらりと倒れそうになるガルディアをベルネッサが抱き留める様にして支える。 「なに無茶してんのよ、もっとポンコツになったらどうする気ッ!?」 「問題ない、現在の損傷でも……一度の発動は可能だった……多分」 「多分ッ!? はぁ、もう。たまにいい加減よね、あなたって……」 ガルディア達とは反対側から攻撃を仕掛ける匿名 某(とくな・なにがし)と結崎 綾耶(ゆうざき・あや)。 ポイントシフトを活用し、綾那はストレガの攻撃を躱しながら接近。その隙をついてラブアンドへイトを放つ。 ストレガの足元からいくつものヤドリギが突出し魔女の身を絡め取ろうと枝を伸ばした――――がそれらはストレガに触れた瞬間枯れていく。 「それならば、これはどうですっ!!」 ポイントシフトでストレガの上空へと出現した綾那は両手をストレガへと向けた。 直後、ストレガの足元が陥没、超重量の加重が掛かる。動きが多少鈍くなっている様子はあるが体感速度的にはそこまで変わらない様に思えた。 にやりと妖しい笑みを綾那に向けるとストレガは無数の黒い腕を伸ばす。ポイントシフトで逃げるが執拗にそれは追いかけ、ついには綾那を捕縛した。 ぎりぎりと黒い腕が彼女を締め上げる。意識が次第に遠くなり、何か声が聞こえてくる。しかしその声が綾那にははっきりと聞き取れない。恐らくマインドシールドの効果だろう、ストレガの言葉が正しく届かない様だった。 「斬り裂けッ!!」 フェニックスアヴァターラ・ブレイドに指示を飛ばし、黒い腕に囚われた綾那を救うと彼はストレガに向かって突進する。 走りながらフェニックスアヴァターラ・ブレイドが剣へと変化。某はそれを振り回す様にストレガへと迫った。 至近距離からゴッドスピードで加速した高速の斬撃が放たれるが、斬り裂く傍からストレガの闇は再生し斬撃の効果はない。 斬り裂いた闇の隙間から何か煌めく石のようなものが見える。それは攻撃を躱すように直ぐに隠れ、その姿をくらます。 「あれが核なのかもしれない……ッ! だけど、こうも再生が早いと……うわぁッ!」 突如突き出した闇の槍を頬を軽く裂かれながら紙一重で躱す。攻撃を避けた某は後方に跳躍して距離を取った。 彼の代わりに前線へと大谷地 康之(おおやち・やすゆき)が猛進する。聖騎士槍グランツを巧みに操り、迫る影の腕を斬り飛ばしながらストレガに接近した。 「うおおおおおーーーッ!!」 武器が霞むほど高速の突きを放ち、ストレガの身体に無数の風穴を上げた――と思ったのも束の間、すぐさま穴は塞がってしまう。 そればかりか康之の眼前に無数の剣が顕現しその身を斬り裂く斬撃を放つ。咄嗟に聖騎士槍グランツを回転させるようにして防ぐが、全ては防ぐことができずいくつかの手傷を負った。 「がっ、ぐおおっ!」 彼は自分の身体の動きが鈍っている事に気づき、後方へと跳躍。しかし、うまく着地することができず地面を転がった。 「腕と……足が、動かねぇ……ッ!」 それは先程ストレガの斬撃を受けた箇所であり、その部分が黒く変色して彼の言う事を一切聞かなくなっている。 康之は構わず無理矢理に動かそうとするが、石にでもなったように彼の変色した腕や足は動かない。 「ちくしょぉ……動け、動けよッ!」 「無理はしないで、後は……俺がッ!!」 ゴッドスピードのの速度を生かして急接近した某はストレガと接敵したと同時にヴィサルガ・イヴァを発動する。 光の粒子が発生し、彼の力を飛躍的に高めていく。確かな力の奔流を感じた某は全力の斬撃を放った。 「でやぁあああーーーーッ!」 振る度に加速していくその斬撃は徐々にではあるがストレガの再生速度を上回っていく。 次第に核と思われる石が見えるタイミングが増えていった……が、まだ手を止めればすぐさまストレガは再生し、事態は振り出しに戻ってしまうだろう。 (俺が、核を砕けなくても……足止めさえできれば――後はッ!) ヴィサルガ・イヴァの発動限界時間が近づく中、ストレガに照準を合わせタイミングを狙っているのはフェイ・カーライズ(ふぇい・かーらいど)。 彼女は今回某達が作戦に参加する要因となった人物であり、ベルネッサに対して並々ならぬ感情を抱いているようであった。 「ストレガ……正直、私はここまで来る途中から非常にブチ切れそうなのだ」 言葉を発しながら銃のセーフティーを外す。唸るような機械音がエネルギーの上昇を伝えている。 「……理由はたった一つのシンプルなものだ」 融合機晶石【ライトニングイエロー】の力が発現し、彼女の身体を雷光が包む。 「お前は、操り人形になりやがったポンコツを使って……私の大切な友達のベルを傷つけた、 それは万死に値する事だ」 エネルギーの収束が完了し発射準備完了を示すランプが点灯する。 「……死んで詫びろ」 メルトバスターの砲身から光り輝く黄色のビームが放たれる。それはストレガへ向かってまっすぐに直進した。 発射を確認し某は後方へと跳んでビームの直撃コースから外れる。 ビームが再生中のストレガに命中しその身を削っていく。しかし、まだ威力が足らない。まだ若干再生力の方が上回っているらしく徐々にではあるがストレガはその形を取り戻しつつあった。 「くっ……」 (どうする……出力を最大まで上げる? でもそれだと衝撃が強すぎて……でも、ここはやるしか……) 覚悟を決めた表情のフェイの腕をベルネッサとガルディアが両側から支える。 「大丈夫、支えるから……安心して全力を出して」 「そうだ……ポンコツなりの働きは約束しよう」 「ガルディア、余計なこと言わないで。彼女の集中が乱れちゃうでしょ!」 「……すまない」 そのやり取りに安堵したのかフェイの緊張は解け、全力を放つことに集中する。 「はぁああああッ! 消し飛べぇぇぇぇーーーーッッ!」 轟音と衝撃波を一際大きく放つと、メルトバスターが最大出力で放たれた。ビームは太くなりストレガを飲み込んでその体を塵へと還していく。 浴びせられ続けた凄まじい光の奔流に逆らえず、ストレガは身体は跡形もなく消し飛び、核石が砕け散る。 砲身から煙を放ちながら、フェイはストレガのいた方向を見据える。 「……ベルが受けた痛みと私の怒り、思い知ったか」 それだけ言うと全身の力を失ったように彼女は倒れる。 すかさずガルディアとベルネッサが彼女を抱き留めた。どうやら疲れ切って気を失ってしまったようである。 ストレガが打ち倒されたと同時に、町を包む影の暗雲は晴れ、平和が戻った。 影の艦隊や影の魔物達は跡形もなく消え去り、後には崩れた街並みが残る。 数日後、その復興作業にあたるのは契約者達によって救出された領主の娘ルカ。 衰弱している父に代わり、陣頭指揮を執る彼女の姿に契約者達は安堵し、町を後にするのであった。 彼女のような人物がいるのなら、町に活気が戻るのもすぐであろうと。そう確信して。
▼担当マスター
ウケッキ
▼マスターコメント
お初の人もそうでない人もこんにちわ、ウケッキです。 今回は空中、地上、救出戦と三方向に展開していたシナリオでした。 色々初の試みの部分もありますので、探しながら読んだら もしかしたら、あーここかなーなんて箇所があるかもしれませんね。 それでは今回はこの辺で。
▼マスター個別コメント