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学生たちの休日15+……ウソです14+です。

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ツァンダにて



「ふふふふ、今日はエイプリルフールですね。これは、何か考えないと……」
 日めくりカレンダーの「1」という数字を前にして、両手を腰にあてた山葉 加夜(やまは・かや)が、何やら悪巧みしていた。
「うーんと、そうだ!」
 ポンと、軽く手を打ち合わせると、山葉加夜が寝室へとむかった。
「涼司君、朝ですよー。起きてくださーい。起きないとくすぐっちゃいますよー」
 にこにこしながら、山葉加夜が山葉 涼司(やまは・りょうじ)から掛け布団を引き剥がした。
「……、もう少し……」
 連日の仕事に疲れたのか、それともいろいろで疲れたのか、山葉涼司がダブルベッドの上で丸くなった。
「もう、パパなんですから、ちゃんとしてくれないと困ります♪」
「ほへっ?」
 わざとらしく科を作る山葉加夜の言葉に、山葉涼司がベッドの上で身を起こした。
「できちゃったみたいです♪」
 身体をクネクネさせながら、山葉加夜が言った。これは、インパクト大だろう。勝った、エイプリルフールに。
「涼司君、……涼司君?」
 反応を確かめようと山葉涼司を見た山葉加夜が引きつった。ベッドの上に、石像がおいてある。いや、固まって石になった山葉涼司だ。
「もしもーし。涼司君、もしもーし」
 ショックが大きすぎたかなと、山葉加夜が山葉涼司のそばで呼びかけた。とたんに、山葉涼司が復活する。
「な、な、な、なんだってえー」
 山葉加夜の両肩を掴んだ山葉涼司が、勢いよく彼女の身体を前後にゆさぶった。
「じょ、冗談ですよ。今日は、エイプリルフールですからあ。ちょ、ちょっと、落ち着いて……うっぷ」
 乱暴にゆすられたので、気持ち悪くなって山葉加夜が洗面台へと直行した。なんだか、吐き気がこみあげてくる。
「このくらいで、ちょっと疲れたのかなあ」
 鏡に映る自分の顔を見ながら、山葉加夜がつぶやいた。

    ★    ★    ★

「凄いです、これ全部お店なんですか!?」
 ツァンダ商店街を歩きながら、ラフィエル・アストレア(らふぃえる・あすとれあ)がクルクルと首を左右に振りながら叫んだ。
「まあ、今日は新年度のバーゲン中だからなあ。いつもよりはちょっと派手だけど」
 まだまだこういうことは珍しいのかと、ヴァイス・アイトラー(う゛ぁいす・あいとらー)がラフィエル・アストレアを見て、ちょっと新鮮な気分になる。
「好きな物買っていいのだよ。浪費や趣味物買いはヴァイスで慣れておる」
「いつオレが浪費したよ」
 アルバ・ヴィクティム(あるば・う゛ぃくてぃむ)に言われてヴァイス・アイトラーが即座に言い返した。とはいえ、いちいち指摘されそうになって、あわててごまかす。まあ、趣味の細々した物をよく買うのは事実だから、浪費とは思わないが、細かく突っ込まれるとちょっと耳が痛い。
 そんな二人の姿を見て、ラフィエル・アストレアがクスリと笑う。
「じゃ、まずは着る物からだな。任せとけ」
 ヴァイス・アイトラーがラフィエル・アストレアをブティックへと連れていった。仕事柄、女物の服やアクセサリーには抵抗がない。知識だって、まあある方だ。
「こ、これ、全部買ってもいいんですか!?」
「い、いや、全部は、さすがにね……」
 キラキラと目を輝かせるラフィエル・アストレアの言葉に、ヴァイス・アイトラーがちょっと頬をひくつかせて答えた。さすがに、店全部を買ってくれと言われたら、こちらとしても対応しきれない。いや、親馬鹿なアルバ・ヴィクティムなら、もしかすると……。
「とりあえず、着られる物だけね。気に入った物あるかな、これなんかどうだろう」
 ヴァイス・アイトラーが、ラフィエル・アストレアに似合いそうな服を見繕ってきて言った。服選びが始まってしまえば、後は本当に選ぶだけである。楽しく、好きな服を探せばいいのだ。
 しばらくラフィエル・アストレアの着せ替え遊びを楽しんだ後、ヴァイス・アイトラーが選んだ服をレジへと持っていく。一応下着類は店員さんに任せたが、きっちりと数を買い込む。本来であれば、可愛い物をきっちりかっちり選びたかったのだが……。
「次は、どこへ行かれるんですか?」
 初めてのショッピングにわくわくしながらラフィエル・アストレアが訊ねた。
「そうであるな、次はラフィのための整備器具であるかな」
「整備器具?」
 アルバ・ヴィクティムに言われて、ラフィエル・アストレアがちょっと不思議そうに聞き返した。
「ほら、うちには機晶姫用のメンテナンス設備がなかったのでな。大型の物は後で手配するとして、まずは必要な物をと思ってな」
「どんな物が必要なのですか?」
 ふむふむと、ラフィエル・アストレアが訊ねた。メンテナンスは受けたことがあるが、あまりはっきりした記憶はない。
「そうであるな。まずは、ハンマー」
「えっ!?」
 一瞬にして、ラフィエル・アストレアが凍りついた。まさか、ハンマーで、頭をポカリとかするのだろうか。
「ドライバー」
 クルクルはダメー。
「それから、ノコギリ」
「ええっ!?」
 ギコギコは、嫌ー。
「カンナ」
「えええええー!」
「ドリル」
「ひー」
「ピンセット!」
「もうだめー」
 いったい、メンテナンスとは何をすることなのだろうと、ラフィエル・アストレアが引きつる。
「そのへんにしようよ。どうせ、エイプリルフールだろう?」
 さすがに、見かねたヴァイス・アイトラーが間に割って入った。
「エイプリルフール? ははははははははははははは、そ、そうであるな。そ、そうなのだよ。ははははははは……」
 なぜか、アルバ・ヴィクティムが大声で笑った。