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訪れた特殊な平行世界

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訪れた特殊な平行世界

リアクション


■対決、記憶食い


 パラミタ中に刻々と特殊な平行世界は侵食し、赤き光、記憶食いは記憶を求めて飛び回り、記憶を貪っては数を増やし、危機を増長させていた。

 ヒラニプラ。

「公務で忙しいのにまさかこんな騒ぎに遭遇するなんて……」
「対処して欲しいと言われたからには無視する訳にはいかないわね」
 水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)マリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)は公務中にイルミンスールから協力要請が入り公務を一時中断して特殊な平行世界の対応に取り掛かっていた。
「えぇ、その通りよ。ただ、協力するのは記憶提供ではないわ」
 協力するとは言えゆかりが参加するのは記憶提供ではなく
「あの記憶食いとやらを捕縛するのね。見るからに厄介そうだけど」
 マリエッタが察し先回りして言うなり貪り舞う赤色の光が存在する空をにらんだ。
「そうよ。厄介な相手だから向こうから来て貰うわ」
 ゆかりは正解とばかりに口元を歪めつつ閃いた作戦を口にした。
「……向こうからという事は囮作戦ね」
 マリエッタはすぐにゆかりが提案する作戦を察し詳細を促した。
「そうよ。記憶を狙うのなら抜かずに持っている記憶も狙って来ると思うから私は囮になってみるわ。知的生命体から分離した物ならその程度の知能はあるはずだから」
 ゆかりは作戦について自身の考察も交えながら明かすと
「そこを叩くというわけね。それならあたしはカーリーから一定の距離を保ちつつ尾行して隙を見て捕まえるわ」
 マリエッタはすぐさま自分の立ち回り方を考えた。
 互いの役目が決まったところで
「お願いするわ。もし私の考え通りでなかったら記憶を抜いて引き寄せれば何とかなるはず。記憶素材化魔法薬を吸引してくるからマリーは記憶食いを閉じ込める容器の準備をお願い」
 ゆかりは記憶素材化魔法薬を吸引しに行き
「容器の方は任せて。丈夫な物を用意しておくから。カーリー、気を付けて行って来て」
 マリエッタは記憶食いを閉じ込める容器の調達に動いた。
 その際、二人は記憶食いの特殊な性質についての情報を入手する事に成功した。
 とにかくゆかりは無事に魔法薬を吸引し素材を生やしマリエッタは頑丈な容器を手に入れる事が出来た。

 囮作戦実行中。
「……(記憶食いはあそこね……なら、ここを右折した方が襲撃を受けた時に立ち回り易いわね。何とか記憶が消えてしまう前に出来る限り捕縛出来ればいいんだけど)」
 ゆかりは素材化した記憶を持ちつつ諸々の条件を満たしたポイントを巡回しなかなか来ない記憶食いが襲撃するのを待っていた。
「……(来ないわね。カーリーが無事なのはいいけれど)」
 マリエッタはゆかりから一定の距離を保ちつつ潜みながら尾行をしていた。当然ゆかりの安全のため周囲の警戒は怠らない。
 なかなか作戦が成就せずだが、諦めず続けていた。

 そしてとうとう
「……(狙いを付けたみたいね。私の予想通りという事かしら。相手は知的生命体の一部、気付いた事を悟られぬように……襲撃するまで待って……何とか無事に行けばいいけど)」
 記憶食いの気配を察知したゆかりは自分に狙いを定めた事を知るが、何もせず気付いていないかのように振る舞い無防備を演じ、記憶食いが襲撃するように仕向ける。
「……(襲撃して来たら逃がさずに確実にひっ捕らえる)」
 マリエッタはしっかりと調達した容器を確認しつつ、一目たりともゆかりから目を離さない。
 互いに慎重に事を進めようとさらに気を引き締めた瞬間
「!!」
 赤き閃光が真っ直ぐにゆかり、いやゆかりの記憶を狙い迫って来た。ゆかりは『戦況把握』で瞬時に状況を把握しつつ『局所戦闘術』で町中という戦闘には不向きな場所でありながらも巧みに動きを読み、迫る記憶食いを紙一重にかわしつつ自分の記憶に相手を引き寄せる。
「……あたしの出番ね」
 マリエッタはすぐには飛び出さず、冷静に『ディメンションサイト』で周辺の地形を把握し、自分の地点と記憶食いの距離を確認し、もっとも最短で接近出来るポイントを割り出す。
 そして、
「……」
 容器をしっかりと手に持ち、鋭い視線が記憶食いに照準を定めた瞬間、『ポイントシフト』で一瞬にして姿は物陰から記憶食いの死角へ移動。
 接近するなりすぐさま
「はぁっ!!」
 手に持つ頑丈な容器に記憶食いを閉じ込めた。

 捕縛後。
「マリー、お見事」
「カーリーもお疲れ様」
 ゆかりとマリエッタは互いを労い合ってから
「しかし、予想通り狙って来てくれて良かったわ。とりあえず、連絡は入れておいた方がいいわね」
 ゆかりは記憶食いについての情報の拡散を
「そうね。あたしは近くの探求会に引き渡しに行くついでに薬の案配も聞いて来るわ」
 マリエッタは記憶食いを詰めた容器を付近にいる調薬探求会に引き渡しに行った。

 用事を終えた後。
「情報は何とか伝えたわ。そっちは?」
「まだよ。すぐに出来るだろうとは言われたけど」
 ゆかりとマリエッタは互いに報告をし合った。
 記憶食い消滅薬はまだだが、
「そう。でも、まぁ、やるしかないでしょ。自分達が処理出来る数はたかが知れているだろうけど」
「えぇ、もちろんよ」
 ゆかりとマリエッタは記憶食いの相手はやめずにしっかりとやり遂げるのだった。途中記憶食い消滅薬を手に入れ、捕縛はずっと楽になった。