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学生たちの休日16+

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ヴァイシャリーの休日



「それでは、今日は味噌汁を作ります」
「はーい」
 樹月 刀真(きづき・とうま)の言葉に、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)がちょっと気のない返事をしました。
 どうしてこうなった……。
 おむすびの次はお味噌汁だと息巻いていたのですが……。

 妄想中……。

『月夜の作る味噌汁はいつ飲んでもうまいなあ』
 現在、漆髪月夜妄想ビジョンで100倍に美化された樹月刀真が投影されています。
 しばらく我慢してください……。

 ……。

 はい、もういいです。
 結局、玉藻 前(たまもの・まえ)に笑われて、またまたまたお料理教室の始まりです。
「では、まず、葱と油揚げを適当な大きさに切ります」
「油揚げ? なんか、違う……」
 予定では葱のお味噌汁を作るはずだったのですが、なんで油揚げが出てきたのでしょうか。
「ふふり」
 あっ、今、陰で玉藻前が計画通りという顔をした気がしました。
 とりあえず、切っちゃいましょう。
「てい、てい、ていっ!」
 とんとんとんと、包丁を華麗に動かして葱と油揚げを成敗します。
「こら、そんな大きさじゃ、お椀に入らないだろうが」
「だって、適当にって言ったじゃなーい」
 樹月刀真に言われて、漆髪月夜がちょっと頬をふくらませて答えます。やれやれと、樹月刀真が軽く額に手をやりました。
「次は、それを水で煮て、火が通ったら出汁と味噌を入れま……こらあ、一気に入れるんじゃない!」
「え〜っ」
「やりなおし!」
 リテイクです。
 まあ、それでも手順は分かりましたので、今度はしっかりとお味噌汁を作ります。その様子を見て、うんうん、成長したなあと樹月刀真が陰でそっと涙を拭いました。
「よくできたじゃないか。じゃあ、御飯にしようか」
 漆髪月夜が味噌汁を作っている間に、御飯を炊いてメインのおかずを作りあげた樹月刀真が言いました。なんだか、極端に二人の効率が違う気がしますが、触れないことにしておきましょう。
「うん、美味しいねえ。特に、この油揚げが♪」
 玉藻前を交えての食事は、全員に好評でした。
「んー、満足満足」
「あ、後片づけは、私やる」
 樹月刀真をソファーに追いやると、漆髪月夜がかいがいしく洗い物を始めました。
 片づけまでが料理だと、樹月刀真がのんびりとそれを見守ります。そのうちに、満腹のせいもあってか、うつらうつらとしてきてしまいました。
「終わったよー。あれ、寝てる?」
 洗い物を終えた漆髪月夜が戻ってくると、樹月刀真はソファーで眠り込んでいました。
 本当に寝ているのかと、漆髪月夜が樹月刀真の顔をのぞき込みました。そして、ちょっとあたりをキョロキョロと見回すと、軽く目を閉じて樹月刀真の唇にそっと自分の唇を重ねます。
 しばらくして薄く目を開けて見あげると、ニコニコしている玉藻前とバッチリ目が合いました。
「み、み、み、見たあっ!?」
 口をバクバクさせて漆髪月夜が言うと、玉藻前は答える代わりにタオルケットを一枚二人の上に放り投げました。広がったタオルケットが、漆髪月夜と樹月刀真の上にふわりと掛かります。
「おやすみ」
 そう言うと、玉藻前は二人を残して去って行きました。