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雨と稲妻

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雨と稲妻

リアクション

「――っぐ、甘く見すぎたか」
 激しい戦いだった。
 岩山はバラバラに砕けて彼方此方に吹き飛ばされ、地表は大きなクレーターがいくつも出来ていた。
契約者たち4人はそんなボロボロの世界の中で倒れていた。
 ウェスペルも無事では済まなかった。
体は傷だらけで片方の目は美和の【ファイナルレジェンド】の光によって一時的に見えなくなっていた。
「ここまで押されるとは想定外だったな。視力の回復には時間がかかりそうだ」

 突如、空間の一部が砕け破片が飛び散った。
空間の外に銃を構えたセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)がいた。
後ろにはセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)緋柱 透乃(ひばしら・とうの)緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)もいた。
契約者たちは飛び降りて地面に着地する。そして、3人はウェスペルに向かって身構えた。
「おまえがウェスペルだな。へぇ、なるほどそこそこ楽しめそうだね」
「ふん。また四人か。何人で掛かろうが無駄だ。お前たちではこの私とドグマ教は――」
【女王の加護】で守りを固めたセレンが突っ込んで武器の大剣を振るった、ウェスペルは咄嗟にをそれを回避する。
すぐさまセレアナの援護が続く、彼女は手にした武器で標準を定め敵に【絶望の旋律】を打ち込んでいく。
ウェスペルは襲い掛かる剣を回避し、弾丸を剣で切り落としていく。
「呑気にお話なんて聞いてらんないわ!言いたいことは私たちを倒してからにしなさいよね!」
 ウェスペルも攻め込まれてばかりではない。剣を振り攻撃する、セレンはそれを回避する。
大きく体を仰け反らせる、青い刃が空を斬る。
セレンはその麗しい体をしならせ曲線を描き、指先を躍らせながら攻撃を回避していく。
「一撃が強力でも、当たらなければ意味がないわ!」
「えぇいちょこまかと!ならばこれはどうだ!」
 ウェスペルは剣の切っ先を向ける、セレンはそこから放たれた攻撃を食らってしまった。
「っぐ!この攻撃は――!」
「セレン!」
 セレアナが声を上げるとセレンは倒れた。
彼女の足元に何かが転がった。転がったのはセレアナが放った【絶望の弾丸】だった。
「あれは……絶望の弾丸!どうやって……まさか!」
「私が弾丸を切り落としているとでも思ったか!」
 ウェスペルは斬り落していたのではなかった。剣の刃と弾丸が触れ合う瞬間に刃を軟化させて、弾丸を青い刃の中に吸収していたのだ。
「終わりだ!」
 ウェスペルがセレンに向かって攻撃をしようとした瞬間、遠くから三日月状の形をした刃が飛んできた、彼はとっさに反応してそれを斬り捨てた。

「やりますね、私の攻撃を弾き返すなんて」
 陽子の攻撃だった。彼女は遠距離から【訃刃の煉鎖】を放ったのだ。
ウェスペルは陽子に向かって剣の切先を向け、【絶望の弾丸】を放つ。
陽子はすぐさま【訃刃の煉鎖】手元へ回収すると再びウェスペルに向かって投げた。
刃と弾丸がかち合い火花が散った。
「その程度の攻撃など……ん!?」
 ウェスペルが振り返る、そこには反対側から迫っていた陽子のフラワシの【ストレンジレイス【朧】】がいた。
ウェスペルに見つかった朧は驚いて急停止してしまった。
「邪魔だ!」
 朧に向かって一刀、朧は素早く回避する。その一瞬だ。攻撃を放ったところに隙が生まれた。
「隙あり!!」
 背後にいた透乃がウェスペルの片腕を掴んだ。
「残念!私に隙を見せたのが命取りだったね」
 透乃の怪力は凄まじくうまく体を動かすことは出来ない。
そのときウェスペルの握った剣に【グレイシャルハザード】がぶつかりたちまち刃は氷付けになった。
「好機です。ここから一気に……」
 陽子はウェスペルの剣目掛けて【訃刃の煉鎖】を投げた。鎖と刃が剣に絡みつく。
そして陽子が「はっ!」と力を込めると刃はバラバラに砕け散った。
「武器さえなくなってしまえばこっちのものだよ!」
 そう言うと透乃はウェスペルを空中へと放り投げた。

「まさか武器を狙いにくるとは……なんだ、空の様子が」
 彼の頭上に暗雲が満ちていた。それは陽子の魔法【緋災】だった。
【魔力解放】によって魔力をあげた陽子はウェスペルの空間の中に特殊な嵐を呼び起こしたのだ。
「ぐわああああっ!!」
 ウェスペルに暗闇、氷結が何度も襲い掛かる。陽子さらに【紅の魔眼】で魔力を引き上げる。
「効いていますね。透乃ちゃん後は頼みますよ」
「っぐ、こざかしい魔法を――なっ!!」
 ウェスペルは気がついた。目の前に拳を構えた透乃がいたのだ。
美和の【ファイナルレジェンド】で一時的に目が見えなくなっていた彼には
気配を消して接近していた透乃が分からなかったのだ。
「たあああああっ!!」
 透乃大きく体を捻って手の甲をぶつける【透破裏逝拳】の炸裂だ。
直撃を受けたウェスペルの体は地面まで吹き飛ばされズシリと地上に落下した。
「っぐ、これしきこのとで……」
 ウェスペルは立ち上がる、しかしダメージに耐え切れずばたりと倒れた。
「どうだ!私たちをなめるとこうなるんだ――ん?今度はなんだ?」
 異変に気が付いた透乃は頭上を見上げた。きらきらと輝くすすが落ちてくる。空間全体からミシミシと音が聞こえる。
突如空間が一気に弾けた。バラバラになった破片は契約者たちに降りかかる間もなく消え去った。
そして、全てが終わると周囲は元の石造りの部屋へと戻いた。

「なぜだ――またしてもこの私が――やられるものか、ここでやられるわけにはいかんのだ」
 ウェスペルは持てる力を振り絞って立ち上がった。彼にもドグマ教のボスとしての意地があったのだ。
 それだけでない。ウェスペルの敗北はドグマ教の崩壊を意味しているのだ。
 突如、床から魔方陣が現れた。ウェスペルはその中に入ると姿を消した。