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雨と稲妻

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雨と稲妻

リアクション

 降り続く雨。
 丘の頂上に魔方陣が展開される。その中からルカルカとダリルが姿を現した。
ドグマ教のアジトから数キロ離れたとこにある丘の上からはドグマ教のアジト全体を見下ろすことが出来た。
アジト全体を何機ものイコンが取り囲んでいる。
「これは――まさかウェスペルは俺たちを助けたのか?」
「2人ともー!だいじょうぶー!」
「みんな!脱出できたんだね!」
 声の主は美羽だった。
「ふぅ、今回はまったく大変な目に会ったわ。女王の加護がなかったらヤバかったわね」
 美羽の後に続くセレンが言った。彼女の後ろにはセレアナがいて、後からコハクに涼介、クレア、陽子、透乃もやってきた。
「あのときは仕留めそこなったけど、結果的に私たちの勝ちだね!」
 透乃が言った後だった。
 突如、アジトで爆発が巻き起こり、熱風が丘の上まで吹き付けてきた。契約者たちは咄嗟に顔を防いだ。
彼らが再びアジトに目を向けるとそこからは大きな炎と黒い煙が巻き上がっていた。
地下のペステたちの地水火風の魔法が入り混じり、化学反応を起こして大爆発を引き起こしたのだろう。
大きく火の上がるアジトを見ていた涼介は一言呟いた。
「これでドグマ教は終りだな……」

 降りしきる雨の中を男が一人走っていた。
立ち止まり、息を切らしながら後方を確認した。直後雨の中に破裂音が響く、男はうつ伏せに倒れ動かなくなった。
「やっと仕留めたぞ。手間を掛けさせやがって」
 茂みの中から先回りしていた特殊部隊たちが次々に現れだす。後方のからやってきた特殊部隊も追いついた。
彼らはうつぶせに倒れた男を中心にぐるりと取り囲んだ。その中から一人の兵が歩み出てきた。
彼は屈みこんで倒れた男を仰向けにする。目を閉じていた男。すっとした鼻筋で端正な顔立ちをしている。
「この顔。間違いない。首領のウェスペル・ブリッツだ」
「――死んでいるのか?」
「いや、眠っているだけだ。こいつが食らったのは眠りの効果が付加された銃弾だ。暫くすれば目を覚ますだろう――ん?」
何だ?――こいつ服の中に何か仕込んでいるぞ?」
 兵は服を無理剥がすと「うっ!」と声を上げ後ずさりした。
服の中には規則正しく並んだ小さい金属の輪がびっしりつまっていた。
「ちぇ、チェンメイルだ!」
 ただのチェンメイルではない。ドグマ教特製のチェンメイルだった。
「――ふふふ」
「気をつけろ!弾丸は効いていないぞ!」
 兵は慌てて立ち上がり、起き上がった相手に銃を向けた。周りの特殊部隊は銃を構えると全員が一歩後退した。
「む、無駄な抵抗はするな!既にアジトは崩壊した。お前の負けだウェスペル!」
 そう言われると男は握った二つの拳を胸の前に差し出した。
「なんだよ。抵抗すんなって言ったのはお前だろうが。
早くしろ。雨も強くなってきやがった。こんなとこにいたら風邪ひいちまう。ほれ、とっとと逮捕しろや」
 促された兵は腰から施錠を取り出し男の両手首にガッシリと手錠を掛けた。
「お前には刑務所が待っている。そこでしっかり罪を償うんだな。――こちら追跡部隊。
逃亡者のウェスペルを逮捕した。繰り返す、こちら追跡部隊。逃亡者のウェスペルを逮捕した。
これよりただちに撤収する」
 他の部隊に連絡を終えると男は大勢の特殊部隊たちに連行されていった。
 降りしきる雨の中、レーゲンは一人、怪しく笑った。

担当マスターより

▼担当マスター

藤松 明

▼マスターコメント

 契約者たちの活躍によってドグマ教のアジトは崩壊しました。
ウェスペルとゴワンはその後どうなったのでしょう。そして、ウェスペルを装うレーゲンは何を考えているのでしょうか。
お話はもう少し続きます。

▼マスター個別コメント