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リアクション
どこかの遊園地の屋外のウォーターエリア。
そこでは二人組のアイドル<シニフィアン・メイデン>のサマーライブ最終日が行われていた。
「もうすぐ夏が終わっちゃうけど、別れを惜しんでる暇なんてないわよ! 今日は盛大に見送っちゃおう!」
パステルカラーで可愛らしさを前面に出したデザインの水着を着た綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)が夏の暑さにも負けぬ元気な声で観客達に呼びかけた。
さゆみに続いて
「……今日は夏の最後の一日ですがわたくし達と一緒に素敵なものにしていきましょう」
アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)も観客達に呼びかけた。アデリーヌも同じく水着でさゆみとデザインが同じだがさゆみと違ってフリルなどの装飾はなく清楚な感じの中に隠れたセクシーさを漂わせるような物だった。ちなみに本日はマイクではなく動きやすさ重視のためヘッドセットを装着している。
「私達、<シニフィアン・メイデン>の新曲、『LOVE BARRAGE』で歌うわよ!」
さゆみは先程の勢いのまま本日披露する新曲のタイトルを叫んだ。
途端、
「新曲!」
「うわぁ、生で聞けるなんて今日はここに来て良かった」
「どんな曲なのかな」
「今日の二人水着も素敵ね」
ライブを知って来た者も知らずに来た者もいてファン達は大騒ぎ。
しかし
「行くよ♪」
「聞いて下さい」
さゆみとアデリーヌは合図と同時にさゆみは『エクスプレス・ザ・ワールド』をアデリーヌは『トリップ・ザ・ワールド』で
「ビーチだ」
「えぇ、さっきまでプールじゃなかったけ?」
「これも演出なのかな」
会場全体をビーチになったような錯覚を観客達に与えると共にスピード感のある曲を始めた。
「♪♪」
「♪♪」
失恋したばかりの女の子が一人で海へ遊びに来たが、ろくでもない男にナンパされたり、恋人達を見て爆発しろとか呪ったりと空しくなったところで、またナンパされるという失恋した女の子の辛い気持ちとそれとは裏腹に賑やかなビーチの様子を歌い上げる。
さゆみは情熱的にアデリーヌはどこまでもたおやかに二人の個性が出るように歌い続ける。隠し味にさゆみとでアデリーヌは『トランスシンパシー』で歌に力を込めて聴く人の心を揺さぶる。
「♪♪」
「♪♪」
ナンパする男に頭に来た女の子は水鉄砲で勝負して勝ったら付き合ってあげると言ったら、そのままウォーターガンでの銃撃戦に。サビの部分ではちょっとしステージ演出を展開する。
「♪♪(アディ、ここでももっと盛り上げるためにアクロバティックに行くよ)」
「♪♪(さゆみ、みんなの残暑の暑さを吹き飛ばしましょう)」
さゆみとアデリーヌはウォーターガンを手にアクロバティックな動きと曲のリズムとをシンクロさせ銃撃戦を演ずる。その際、さゆみは『ソウルヴィジュアライズ』で観客達の感情の動きを見て動きを調整し全力で観客達に楽しんで貰おうとする。
「すげぇ、演出だな」
「夏にぴったりじゃん」
観客達は手を叩いたり腕を上げたり声援を送ったりとアイドル達を応援。すっかりプールで遊ぶ事を忘れてしまっていた。
歌は素敵な展開を見せる。
「♪♪」
「♪♪」
男をとっちめるつもりが、女の子は段々惹かれるものを感じ、新たな恋の始まりという恋する夏にぴったりであった。
新曲を歌いきり
「……」
二人が何か言葉を発するよりも先に
「新曲良かったよ」
「今日の衣装も素敵だった」
「<シニフィアン・メイデン>、サイコー」
歓声や拍手が湧き起こった。
この後、何曲か歌い暑い夏を熱い夏にし、観客達の夏最後の一日を素敵な思い出にした。それはさゆみ達も同じであった。
ライブ曲全てを歌いきった後、
「聞いてくれてありがとう!! サマーライブ最終日に相応しいものになったのはみんなのおかげだよ!! ありがとう!!!」
さゆみは疲れを全く感じさせない元気な声で最後まで自分達の曲を楽しんでくれた観客達に礼を言った。
「本日は本当にありがとうございました。サマーライブは最終日はもう終わりますが、これからも<シニフィアン・メイデン>をよろしくお願いします」
アデリーヌは微笑を浮かべ自分達を応援する観客達を見渡していた。
観客達はさゆみ達がステージから消えてもしばらく声援や拍手を送り続けていた。
これでさゆみとアデリーヌの暑い夏が終わった。
かと思いきや
賑わいを見せたライブを終えた夜。
「あぁ、ライブが終わったと思ったら、大学の課題が……あぁ、アディ」
そうではなかった。学生としての夏休みがさゆみにはまだ残っていた。サマーライブで輝いていた笑顔はどこにもなくとことん必死な形相で大学の課題をにらんでいた。
「これですわね……」
アデリーヌはさゆみが必要としている課題に必要な物を手渡してから
「……何か冷たい飲み物を持って来ますわね(この様子だと今日は徹夜になりますわね)」
気分転換になればと飲み物を用意しに行った。胸中で溜息を洩らしながら。
案の定、アデリーヌの予想通り徹夜となった。
最後までさゆみ達の夏は盛り上がっていた。