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告白へ



「あれ? どしたの、ボクの部屋に来るなんて珍しいね」
 自分の部屋でくつろいでいたロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)が、突然やってきたエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)に聞きました。
 近づこうとして、ロートラウト・エッカートが身体を動かしますが、まだどことなくぎこちない動きです。
 先の決戦で両手両足を大破してしまったので、今は仮のパーツを取りつけてあります。汎用パーツではないので、取り寄せに時間がかかっている……はずです。決して、予算がないなどとは……。
 まさか、このまま仮パーツで過ごしてくれと言いに来たのでしょうか。さすがに、それはちょっと困ります。
「いや、確かに、あの決戦以降、俺たちを脅かすほどの敵は金欠以外にはないが、今日はそういう話ではない。そのレンタルのパーツも、じきにちゃんとした物に変えてやる」
 別の話できたんだと、エヴァルト・マルトリッツが言いました。その言葉に、ロートラウト・エッカートが、ほっと胸をなで下ろしました。
「あー、なんだ、もう何度か言ったが、先の決戦ではお疲れさん。今日は修理費とかの話じゃない。今まで、それにこれから、共に歩んでいく身として、言っておきたいことがあってな。……なんと言うべきか。俺は相変わらず恋愛にゃ無縁なわけだが……。お前相手には、なんとか想いに応えてやりたいと思うようになってきた」
「ええっと、もう一回いい?」
 何を言われたのかよく分からなくて、ロートラウト・エッカートが聞き返しました。
「こんなこと、恥ずかしくって何度も言えるか!」
 なんだか、急にエヴァルト・マルトリッツが怒りだします。
「もしかして、ボク、今、告白っぽいこと言われた?」
「……多分、お前が思う解釈で間違ってないはずだ」
 ロートラウト・エッカートの言葉に、エヴァルト・マルトリッツがぼそぼそっと答えました。
「う、嬉しいけど……いいの? ボク、こんな身体だから、えっちぃことできないよ?」
「おいこら! せっかく俺が今までと違うジャンルの勇気出して言ったのに、そういう反応があるか! それじゃあ、まるで、俺がエッチなことだけが目的みたいじゃないか」
 違うと、エヴァルト・マルトリッツが強く主張しました。
「お、怒ることないじゃん! 男の子はみんなそういうの好きだって言うし!」
「だからって俺もそういう奴だと決めつけるなー! お前だって、その、あの、ちゃんとした……女の子だろうが」
 真っ赤になりながら、エヴァルト・マルトリッツが言いました。
「ホント!? 嬉しい! 狂喜乱舞!」
 思わず、ロートラウト・エッカートが小躍りして喜びます。が、その手足が壁にぶつかりました。壁に穴が開くとともに、レンタルパーツが微妙にひしゃげます。
「あっ……、またちょっと壊れちゃった……」
「あおっ!? 照れて、レンタルの腕と脚まで傷物にしやがった!? ああもう、さっきの言葉撤回したくなってきたぁー!」
「えー、ダメだよ、撤回しないでー!」
 バタバタと暴れて、またレンタル品を傷つけるロートラウト・エッカートに、修理代と新品の購入費が頭の中をグルグルとかけめぐるエヴァルト・マルトリッツでした。とかく、女の子は、お金がかかるのです。最大の敵は、未だに強敵のままでした。多分、これからも……。