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終りゆく世界を、あなたと共に

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終りゆく世界を、あなたと共に
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「……っ、はあっ、は、あ……っ」
 世界が滅んだ、その瞬間。
 ジェイコブ・バウアー(じぇいこぶ・ばうあー)は自身のベッドの上で、汗だくになって飛び起きた。
「……夢、か……」
 即座に確認したのは、隣で眠る妊娠中の妻……フィリシア・バウアー(ふぃりしあ・ばうあー)の姿だった。
 よかった、無事だ。
 起こしていない。
 それを確認すると、やっと自分の状況に気が付いた。
 身体中に夢の残滓のように不快な熱がこもり、全身が汗でぬるぬるしていた。
 心臓の音は、まだ早い……
 それらを振り払うかのようにジェイコブは頭を振ると、そっとベッドから抜け出した。
 フィリシアを起こさないようにして。
「……シャワーでも浴びるか」
 カーテンの隙間からは、やや早い朝の光が微かに差し込んでいた。

 シャワーの音を聞きながら、フィリシアはベッドの中で微睡んでいた。
 つい先程まで、世界の終末の只中にいた。
 夢だと分かってからも、心臓の激しい鼓動は止まらなかった。
 そっと、お腹に手を当ててみる。
(生きてる……)
 自分よりも、まずその事実にほっとする。
 夫は、シャワーを浴びているのだろう。
 多分、わたくしと同じ夢を見て……
 ジェイコブがシャワーから出るのを待って、フィリシアもシャワーを浴びようと立ち上がった。

 朝食は、ベーコンエッグとバターロール。
 ジェイコブはコーヒー。
 フィリシアはノンカフェインのものを。
 全て、今日の朝食当番のジェイコブが用意したものだ。
 食べながら、2人は他愛のない話をする。
 今日の予定や、これからどうするかということ。
 夢の……世界が終わる話なんかしない。
 しかし、とジェイコブは考える。
 もしも、本当に「その時」がやってきたらどうするか。
(あがき続ける、しかないな……)
 妻と、これから生まれてくる子供を守るため。
 今の、この他愛ない、しかしかけがえのない幸せを守るため。