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終りゆく世界を、あなたと共に

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終りゆく世界を、あなたと共に
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「ほら、やっぱりここは蒼空がよく見えるわね」
「ええ……今日も、とっても綺麗ですわ……」
 綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)は、空京の展望台にいた。
 遥かなる蒼空を見渡すことのできる、穴場的なスポット。
 かつて、2人はよくここでデートした。
 取りとめのない話をして、抱き合って、キスをしてそして……
 この空間の隅々に、そんな幸せな記憶が焼き付いている。
「覚えてる? そこの角で、アディったら急にキスしてきたわよね」
「さゆみだって…… 階段で後ろから抱き付いて来た時にはどうしたのかと思いましたわ」
「もう……!」
「ふふ……」
 幸せな思い出を語り合いながら笑う2人。
 そんな甘さに満ちた幸福な一瞬を、2人は噛みしめる。
 絶望から、解放されたから。
 それはこの世界の圧倒的多数の者達が感じていたものとは、真逆のものだった。

 2人には、いずれ約束された終わりがあった。
 寿命の差による、別離の日。
 それは千年の時を生きてきたアデリーヌと、その十分の一しか生きられないさゆみにとって、避けられないもの……の、はずだった。
 だが、今日この日をもって、二人はそこから解放された。
 もう、片方が先に死に、片方が取り残される未来は来ない。
 だからこれは、2人にとって永遠の日。
 永遠に、結ばれる日。

 空の色が翳ってきた。
 そろそろ、終わりの時が迫って来たのだ。
 2人はどちらからともなく近づくと、抱き合った。
 キスをかわし、手を繋ぐ。
 2人の間に、絶望はない。
「怖くないわ……だって、もうずっとずっと、アディと一緒にいられるから……」
「ふふ……さゆみとなら、例え地獄へ落とされても構いませんわ。あなたと一緒なら……何もいらない……」