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【ダークサイズ】続・灼熱の地下迷宮

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【ダークサイズ】続・灼熱の地下迷宮

リアクション

 レヴィシュタールは【氷術】で目に見える範囲があらかた凍ったのを見て、

「ロア、それにグラキエスたち。これなら貴公らも、いくらか捜索に集中できるであろう」

 と、ロア・ドゥーエ(ろあ・どぅーえ)そしてグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)にも、サポートとしての役割を果たす。
 ドゥーエは探索へのテンションを上げながら、

「助かるぜ。よーっし、グラキエス。探索には気合い入れていこうぜ」

 と、ドゥーエがグラキエスに近づこうとすると、レヴィシュタールが【奈落の鉄鎖】でグンと彼を引き寄せる

「待て」
「おい何だよ! これじゃ何にも発見できねえぜ!」
「何を探すと言うのだ? グラキエスの新しい吸血ポイントか?」
「あのよー、ここまで来てあいつの血なんか吸ったら、いよいよグラキエスのやつ、死んじまうぜ? フレイムタンでそれはやらねえって」
「その確証は?」
「見てただろ? グラキエスの口に俺の血を垂らしてやった。今日ばっかりは、俺があいつのエネルギー源になってやらねえとな」

 グラキエスは二人の会話を聞いて、

「何? どうりで身体が少し楽になっていると思ったら……あなたが血を飲ませてくれたのか……」

 と自分の拳を握って、少し力がみなぎっているのを感じた。
 ゴルガイス・アラバンディット(ごるがいす・あらばんでぃっと)はグラキエスの肩に手を置き、

「だがグラキエス、無理は禁物だ。並みの人間ですら、ここの熱はその命を奪う。もしもモンスターが潜んでいた場合、貴公が戦えば、あっという間にそのエネルギーは尽きてしまうであろう。あくまで我らの布陣の中心から外れるな。貴公は『宝探し』に集中するのだ。戦闘には加わるでないぞ」

 このドラゴニュート、近寄りがたいほどの恐ろしい容姿でありながら、グラキエスに対しては相変わらずの甘やかしっぷりである。 ロア・キープセイク(ろあ・きーぷせいく)も、ゴルガイスの提案には全面的に同意する。

「エンド。戦闘的なスキルは出来る限り避けてください。【歴戦の獲得術】、【サイコメトリ】、【トレジャーセンス】。ただでさえこれだけのスキルを使おうというのですから。あと、私からも付け加えておきます。【吸精幻夜】を使う余裕は、必ず残しておいてください。ドゥーエだけでなく、私たちもエンドのエネルギー源です。少しでもめまいを感じたら、すぐさま【吸精幻夜】を使うのですよ?」
「……」
「……エンド?」
「ん? ああ、すまない」

 グラキエスは彼の話を聞きながらも、探索をどこから進めようかと楽しい妄想にふけって返事を忘れただけなのだが、キープセイクたちパートナーからすると、

「いけない! ドゥーエの血の効果がもう切れてしまったようです」

 と、緊張感が急上昇する。
 ゴルガイスがさっそくその太い腕を出す。

「いかんぞグラキエス。さあ【吸精幻夜】だ。我の血を早く」
「いやゴルガイス。今のはよそ見をしていただけで……」

 グラキエスがわけを話そうとすると、キープセイクがゴルガイスを押しのける。

「いけません、ゴルガイス。あなたの熱を持った血を、グラキエスの肉体が耐えられると思いますか? 逆に彼を破壊してしまいます」
「ぬうっ、何と言うことだ。肝心な時に役に立たぬなど……我が血をこれほど憎んだことが、今まであっただろうか」
「さあエンド、私の血を」

 と、今度はキープセイクが腕をまくる。
 グラキエスは、

「ああ、だからそうではなくて……」
「何をもたもたしているのですエンド! 倒れてからでは遅いのですよ!」

 キープセイクは思わず声を高くする。
 話を聞いてもらえないグラキエスが困っているとドゥーエが、

「おい落ち着け。なぜグラキエスが【吸精幻夜】を渋ってんのか、おまえともあろう者がこいつの表情から読み取れねえっていうのか?」

 と制す。

「はっ、私としたことが」

 キープセイクはグラキエスの顔を見、グラキエスは、

(よかった……今は満腹であることが、気づいてもらえたようだ)

 と、安堵してドゥーエを見る。
 ドゥーエは、

(フッ、分かってるぜ)

 といった感じで笑うが、レヴィシュタールも納得した顔で、

「なるほど、貴公はただ、身に付けたばかりの【吸精幻夜】を上手く発動できないだけなのだな。そうであろう?」
「……いや、ちが」

 せっかくドゥーエがグラキエスの心情に気付いたのに、レヴィシュタールが台無しにして、キープセイクは少し悔しそうに、

「そうだったのですね、エンド。水臭いではありませんか。それならばそうと言ってくださればいいのに」
「いや、だからちが……」
「よいよい、落ち着いてゆっくりやってみるのだ。貴公は人間。吸血に慣れぬのは当然のことだ。ロアは余計なことができぬように縛ってある。こやつで練習するがよい。イレイザーに投げつけてもピンピンしておる。少々吸い過ぎても死ぬことはあるまい」
「……」

 ドゥーエはというと、

(いや、こいつ単に腹いっぱいだと思うんだけど……ま、ついでにグラキエスを愛でれそうだし、いっか)

 と、首筋を差し出す。
 グラキエスは、仕方なしに【吸精幻夜】でドゥーエの血を吸う。
 実際まだ使いなれないのと、お腹いっぱいであることから、グラキエスの吸血は舐める程度のものに抑えた。
 レヴィシュタールはこくりと頷き、

「ふむ、まあ初心者であるから仕方あるまい。ではグラキエス、それを十回繰り返すのだ」
「えっ……?」
「どんなスキルでも、素振りやトレーニングを繰り返して使いこなせるようになるものだ。さあ、あと九回だ」
「では、今度は私の血を」

 と、キープセイクが腕を出す。
 少し食傷気味になりながらキープセイクの血を吸う。
 レヴィシュタールは首をひねり、

「なるほど。グラキエス、貴公は吸う息が短すぎるようだな。もっとこう、一息を長くするのを意識するのだ」
「いや、もう……」

 グラキエスが大きく息を漏らすと、ずっと黙って見ていたウルディカ・ウォークライ(うるでぃか・うぉーくらい)が腕を出す。

「ウルディカ、今はもう……」
「……」

 ウルディカは、

(なぜ俺の血は吸わない? 他のヤツのは吸ったのに、俺の血は飲めないと言うのか?)

 というのを目で訴え、さらに腕をぐいと出す。
 レヴィシュタールは、ウルディカの反対の腕を取り、

「仕方あるまい、私の手本を見て、真似るがよい」

 と、【吸精幻夜】でウルディカの血をたんまり吸う。
 ウルディカは立ちくらみしそうになるが、それに耐えてグラキエスに腕を出す。
 グラキエスは、いっぱいの腹部を少しさすった後、

(……ままよ)

 と、ウルディカの血を吸った。

「……」

 グラキエスは血の吸い過ぎで顔色が少しおかしくなり、ウルディカは静かに貧血を起こして倒れた。

「ウォークライ……! 仕方ありません。エンド、私を練習台に! さあ!」

 もはや意識をもうろうとさせながら、グラキエスはキープセイクの肌に歯を立てる。

「うむ、その調子だグラキエス。なかなか筋がよいぞ」

 と、レヴィシュタールがようやく合格サインを出したところで、

ごばあっ

 グラキエスは血を噴き出しながら倒れた。

『ぐ、グラキエーーース!!』

 こうして、レヴィシュタールの吸血教室は幕を閉じ、グラキエスとウルディカは【小型飛空艇アルバトロス】へ運ばれていった。
 ドゥーエからグラキエスが倒れたのを聞いて、ダイソウは、

「そうか。捜索スキルが使える者は抜けてほしくないな。できるだけ早く追いついてくるのだぞ」

 と言い、その間に、

「ねーねー、こっちに地下に降りれる階段があるよー! ここ地下なのに、もっと地下だって!」

 と、カレンが階段を見つけ、

「エネルギーの管理室といえば、地下と相場が決まってるもんね」

 と、円がペンギン部隊を出発させる。

「ちょ、ちょっと! あんたたち警戒とかそういう考えないわけー?」

 菫が叫ぶかと思いきや、

「施設運用の管理室と言えば、最上階って相場が決まってるよね!」

 と、チーム・サンフラは最上階を目指す。
 菫は、

「バカのツープラトン攻撃だわ……」

 と頭を抱える。
 ダイソウは、地下へ降りる者が多いのを見て、

「菫。お前はチーム・サンフラを追うのだ。妙なスイッチを押してしまわないか心配なのでな」
「あんたが言えた義理じゃないけどね。あーもー」

 と、菫に向日葵たちを追わせた。