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魂の器・第2章~終結 and 集結~

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魂の器・第2章~終結 and 集結~

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 11 防衛体制整う

 バズーカを置いた作業台をライナスとモーナ、未沙、ティナ・ホフマン(てぃな・ほふまん)が囲んでいる。ステラも、ライナスのサポート及び後学の為の記録をしようと、デジカメを持ってバズーカの解析を待っている。研究の第一人者の実際の作業を間近で見れて、自分もその手伝いを出来るなど何よりのことだ。しかも、研究対象が機晶技術で有名なポータラカのものであり、これがファーシーの脚を治すことにも貢献出来るというのだから尚更だ。
「さて、では改めてやっていくか」
 ライナスが言うと、未沙も気合を入れて工具を握る。
「まずはポータラカのバズーカをきっちり研究しよう。この技術を吸収して応用出来ればいろいろ役に立ちそうだからね」
 未沙の手伝いをしよう、と後から来た朝野 未羅(あさの・みら)朝野 未那(あさの・みな)と一緒にライナスノートを読んでいた。中身を覚える(内部へ記録する)気満々のようだ。ページを繰りながら、未羅は言う。
「ファーシーさんに会ったことないから、会うのが楽しみなの。仲良くなれたら嬉しいの。ー。早く覚えて、私もいっぱいお手伝いするのー」
 彼女達がノートを読み進む中で、未沙達はバズーカを慎重に分解していく。ティナもそれを、興味深く眺めていた。
「ポータラカの技術とは面白いわね」
「……ライナスさん、お客様ですぅ」
 そこで、メイベルが月島 悠(つきしま・ゆう)麻上 翼(まがみ・つばさ)を中に案内してきた。初めに全学園宛てに連絡をしてからもう随分と経つ。あれから幾つかの情報が増えたようだが、話を聞いた生徒達が集まってくる頃合であった。
「あれ、悠、どうしたの?」
 未沙が聞くと、悠は冷静な軍人然とした雰囲気で言った。
「以前護衛をした研究所がまた狙われていると聞き、護衛に駆けつけた。まだ、問題は起きていないようだな」
「ライナスさん、お久しぶりです」
 翼が挨拶すると、ライナスも作業状態を保存して前に出てきた。
「ああ、久しぶりだな」
「護衛の状況はどうなっている? 一応、入口を千夏に任せてきたが」
 そう言う悠に、ライナスは以前の事を思い出した。
「チカ……前は来ていなかったな。一度中に入ってもらって顔合わせをしたいのだが」
「いや、千夏は……」

「なるほど……」
 外に出たライナスとモーナは、藤 千夏(とう・ちか)の外見に納得した。心から納得した。
 千夏は、トーチカ型機晶姫だった。背中側のハッチから中を確認すると、人が2〜3人は入って座っていられそうなスペースがあった。
「銃眼を備えているから内部からの射撃もできます。追加装甲代わりに、ひび割れた装甲板を使用中です」
 翼が説明していると、千夏本人が喋りだした。
「我輩は動き回ると目立つので、研究所の入り口付近に陣取らせて貰おう。簡易関所の役目を担うと思ってくれて良い」
「うわっ!」
 モーナが分かりやすく驚き、ライナスは僅かに目を見開いた。まさか喋るとは思わなかったようだ。2人の驚きなぞ何のその。千夏は続ける。
「相手も目標の入り口付近に防衛用施設があれば警戒し、無謀な行動には出難いだろう。また、万が一の場合は我輩を盾にすることで研究所の被害を抑えることもできよう」
「そ、そうだね……口は何処?」
 その質問は、当然のようにスルーされる。
「で、話を戻すが、現在の防衛状況は?」
「ああ、中の見回りを時間交代でしてもらっている。後は、助手達への警戒通達くらいだが」
「そうか……。私達は研究所の周辺を見回ることにしよう。不審な者は通さない」
 無理に通る気ならば、力付くで抑えるだけだ。
 そこに、荒野の向こうからアピス・グレイス(あぴす・ぐれいす)シリル・クレイド(しりる・くれいど)ネヴィル・パワーズ(ねう゛ぃる・ぱわーず)がやってきた。シリルは、ライナスを見ると元気溌剌に手を振った。
「ライナスさんおひさしぶりー。あたいのためにじゅうそうこうアーマーと6れんみさいるぽっどつくってくれてありがとー」
「ああ、相変わらず元気だな。今日は、礼に来たのか?」
「ぼうえいにきたんだよ! とりあえずわるいひとがきたらやっつけちゃうよー!」
「以前は変な集団に襲われたし、今回も何か襲ってこないとも限らないから、研究所を防衛するわね」
 親しそうに話すアピスとシリルを見て、ネヴィルは思う。
(アピスさんとシリルは以前ココに来た事があるみたいですね。ボクがまだ契約してなかったころでしょうか)
 そして、ライナスに話しかける。
「開発のお手伝いとかは専門知識がないので全然出来ませんけど、代わりにこの研究所の防衛をさせて頂きます。よろしくお願いしますね」
「これだけ人数が集まれば、防衛も問題なさそうですね」
 彼女達を見ながら、モーナが少し安心したように言った。

                           ◇◇

 その頃、廃研究所から持ってきた大学ノートを読んでいた緋山 政敏(ひやま・まさとし)は、来る前に聞いたアクアの話を思い出していた。テーブルの上には、一緒に持ってきた写真も置いてある。よれよれの白衣を着た、頬のこけた無精髭の男。メタルフレームの眼鏡をかけている。見た目よりも年は取っていない。そんな感じだ。
「…………」
 やがて彼はノートを手に、戻ってきたライナス達に近付いた。
「これ、研究所に残っていた日記なんだけど……アクアは、結生さんに関しては大きな勘違いをしているみたいだ」
「アクア、か……」
 ライナスは日記を受け取る。
「私は、彼女の話を聞いた事は無いし直接の面識も無いが……。話を聞いて、彼女の管理者と結生が同一人物だと言われて正直ピンと来なかった。どうにも印象とそぐわなくてな」
 そうして、ライナスはノートを広げた。アクアに関心のある他の生徒達も集まってくる。
「これは……」