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リアクション
第4章 遺跡の決闘
「きゃあああああああ! いやああああああああ! やめてえええええええ!!」
アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)の絶叫が、シボラの古代遺跡に響きわたった。
「ヘヘヘヘヘヘヘ。おとなしくしな。優しく触ってやるからよ」
サル獣人はいやらしい笑いを浮かべながら、アリアのお尻を撫でまわした。
「ニョロニョロー!! 締めつけて舐めてやめる!!」
アリアの身体に長い身体を巻きつかせているヘビ獣人が、舌舐めずりをしていった。
ラゾーンで他の生徒の裸をみるのが嫌だったアリアは、ジャングルの中の古代遺跡を探検しようと思ったのだが、一人で行ったのが災いしたのか、たちまちのうちに2匹の獣人に襲われてしまったのだ。
「いまの悲鳴は!? 襲われた方がいるようですわ」
中願寺綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)は、埃がうずたかく積もった遺跡の廊下を歩む足を止めて、悲鳴がした方角を振り返った。
「どうすべきかしら? 助けに行くの?」
魔鎧として綾瀬に装着されている漆黒のドレス(しっこくの・どれす)が、綾瀬に尋ねた。
「考えている余裕はないですわ。ほら、私たちにも歓迎の徴が現れましたわ」
綾瀬は、前方から現れたカマキリ獣人の姿を認めてそういうと、戦闘態勢に入った。
「いま、悲鳴がしたよ! 行かなきゃ!!」
同じく、遺跡を探検していた小鳥遊美羽(たかなし・みわ)は、ただちにアリアを助けに行こうと決心した。
「でも、美羽は奴らのリーダーと闘うために力をためた方がいいですよ。ここは私がやります」
そういって、ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が小走りに駆けて、美羽に先行してアリアのもとへと急いだ。
「アリアさん、大丈夫ですか!!」
ベアトリーチェは呼びかけるが、ヘビ獣人に全身を締めつけられ、サル獣人にうなじを舐めあげられているアリアには、聞こえていないようだ。
「ヘッヘッへ。うまいなー、この身体。舐め甲斐があるぜ!!」
サル獣人はよだれを垂らしながら、アリアの胸に顔をうずめていく。
「いや、いやあああ! ああ、汚らわしい。やめて、ひーん、ひくひく」
アリアは、涙を流し、鼻をひくひくさせて悶えている。
ベアトリーチェは、女体を貪るのに夢中なサル獣人にツカツカと歩み寄ると、その真っ赤なお尻を思いきり蹴り飛ばしていた。
「くらえ! シュゥゥゥゥゥゥト!!」
「あ、あぎゃああああああ!」
サル獣人は悲鳴をあげてのたうった。
「アリアさんから離れて下さい! でなきゃ、もっときついお仕置きです!!」
ベアトリーチェは、サル獣人とヘビ獣人を睨みつけていった。
「ニョロロロロー。やれるもんなら、やってみろ! この女はもう、身も心も俺たちのモノだ!!」
ヘビ獣人は細長い舌をチロチロとひらめかせ、笑いながらいった。
「ウキー!! そうだ、そうだ! みろ、もうこんなにデカくなっちまったんだよ。いまさらやめられるか!!」
サル獣人も歯を剥き出して怒って、何かが突き出している股間を揺らせてみせた。
「仕方ないですね。それでは!!」
ベアトリーチェが殲滅の態勢に入ったとき。
「ギー!! 俺たち全員とやりあって、本当に勝てるつもりか?」
コウモリ獣人がどこからか現れて、襲いかかってきた。
「ニャオー。恐ろしいニャン。怖いニャン」
さらに、ネコ獣人も現れて、すばしこく襲いかかってくる。
「くうっ!!」
ベアトリーチェは絶体絶命のピンチに見舞われた。
そのとき。
「ベアトリーチェ!! 突っ走っちゃダメだよ!!」
美羽が、やっと追いついてきた。
それだけではない。
「あら。もう探検している人がいるの? 何、これ! たいそうなお出迎えだわ」
宇都宮祥子(うつのみや・さちこ)が、驚いたような顔で現れたかと思うと、瞬時に戦闘態勢に移る。
「ドスケベな獣人がいるのね。吐き気がするわ」
続いて現れた魔威破魔三二一が、サル獣人の股間をみて顔をしかめた。
「詩穂、参上☆ ノーパンだから、強さに補正かかってるかもだよ☆」
さらに騎沙良詩穂(きさら・しほ)が現れると、ファイティングポーズをとった。
「騎沙良。まだまだ獣人のいる気配がするぞ」
魔鎧として詩穂に装着されている清風青白磁(せいふう・せいびゃくじ)が、囁いた。
「詩穂様。ダウジングによると、発掘していた生徒たちが連れられていったのは、この先の階段の下ですわ」
セルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)が、詩穂の背後に隠れていった。
「オッケー☆ じゃ、こいつらを蹴散らして、降りていくしかないね☆」
詩穂は、片目をつぶってそういうと、手にした本気狩る☆ステッキをくるくると振りまわした。
「るるるるるーん。リリカル☆本気狩る、斬りかかる!!」
襲いくるコウモリ獣人を、詩穂のステッキが打ちすえた。
「うぎゃああ! それ、痛ぇぞ!!」
うめいて、コウモリ獣人はきりきり舞いする。
「痛いのは当然☆ そして、痛いのは気持ちいい☆ 何を隠そう詩穂は、ノーパンパワーでリフレッシュ! だよ」
つま先をリズミカルに動かしながら、詩穂は掌をお尻に当てて微笑んだ。
詩穂が足でリズムをとるたびに、スカートの中の太ももが神秘の風を巻き起こし、ノーパンである詩穂のデルタに脳まで突き抜ける不思議なエネルギーを与えるのだ。
詩穂の本気狩る☆ステッキからは、ノーパンパワーにより増幅された詩穂の魔法攻撃が、ステッキの力でさらに増幅されて放たれているのである。
さしものシボラの獣人も、生半可な覚悟ではやられてしまう攻撃であった。
ああ、詩穂!
君は美しい!!
「騎沙良さん、ノーパン派だったんですか?」
突然出てきたアケビ・エリカがふと浮かんだ疑問を口にする。
「そんなことをいっている状況ではないですわ。それに、私もいまは……」
ノーパンだし、ノーブラですわ、という言葉を崩城亜璃珠(くずしろ・ありす)は飲み込んだ。
連れ去られた生徒たちを追って、エリカと亜璃珠も遺跡の中に踏み込んできたのだった。
運がよいことに、祥子たちに合流できている。
だが、詩穂ががんばっているとはいえ、獣人たちの数は多い。
それに、一刻を争う状況である。
亜璃珠は、気を抜けないと感じていた。
そこに。
「チューン。ここが遺跡だよ! あっ、お前ら、やめろ! 女の子を襲うなんて、最低だぞ!!」
イタチ獣人に案内された、風森巽(かぜもり・たつみ)が顔をみせた。
「ウン? アシキ、ジュウジン。オマエラ、テキ!!」
記憶喪失でしかもカタコトの言葉しか話せない風森は、アリアを襲う獣人たちをみて、歯を剥き出しにして怒っていた。
「あっ、風森さん! 無事だったんですのね。心配しましたわ」
亜璃珠は、風森をみてホッとしたような口調でいった。
だが、風森は、亜璃珠をチラッとみるだけで無反応だ。
「様子がおかしいですね。どこか頭を打ったんでしょうか?」
エリカは眉をひそめた。
「いやあああああ、やめてえええええ!!」
ヘビ獣人に絡みつかれているアリアは、ますます身悶えた。
ヘビ獣人の尻尾がアリアの感じやすい部分を、きりきりとねじ入るようにして刺激している。
気がつけば、サル獣人が、今度は自分の股にアリアの顔を挟もうとしていた。
「ハァハァ。ウキ、ウキー!!」
すっかり発情しているサル獣人。
「おい、やめろっていってるんだよ!!」
イタチ獣人は、勇敢にもサル獣人に飛びかかっていった。
「あぁ? 何だ、やんのかよ!! 邪魔なんだよ!!」
サル獣人の爪がイタチ獣人の顔を引き裂く。
さらに、サル獣人の後ろ足キックがイタチ獣人を無様に転倒させた。
「ウガー! イタチ、ダイジョウブカ!!」
風森は、慌ててイタチ獣人を助け起こした。
「チューン。やったなぁ!! ちくしょう!!」
額から血を流してうめくイタチ獣人。
「ウ、ウウー! ワレ、トモダチ、マモル。ヒキョウナヤツ、ユルセナイ!!」
怒りに燃えて、サル獣人に立ち向かっていく風森。
だが、サル獣人もまたいよいよ怒りを燃やして、風森に憎しみに満ちた拳を叩き込み、蹴りの雨を降らせる。
「ウ、ウウー!!」
風森は、血まみれになって悶えた。
「ニョロロロロロン? いい気味だ。この際、貴様から先に死ね!!」
ヘビ獣人は嘲笑うと、アリアから離れて、風森の身体に絡みつき始めた。
「ウ、ウガアア、ウガアアアアア!!」
風森は、獣のような雄叫びを発してもがいた。
そのとき。
キラーン
風森の腕の、ゲゲの腕輪が不思議な光を放った!!
「ガアアア、ヘンシン!! シィィィィィィッ、ボォォォォォォ、ラァァァァァァ!!」
風森は、本能的に、記憶の奥底に埋まっていた「変身」という単語を叫んでいた。
シィィィィィィッ、ボォォォォォォ、ラァァァァァァ
シィィィィィィッ、ボォォォォォォ、ラァァァァァァ
悠久のときを経た古代遺跡の内部に、風森の叫びがこだまする。
「ああっ、あれは!? 風森さんがときどき変身するという仮面ツァンダーソークー1ですか? いえ、違いますね。あれは、あの姿は!」
エリカは絶句した。
光に包まれた風森の身体が次の瞬間に変身してみせたものは、仮面ツァンダーソークー1などではなかった。
その姿は、全体として、緑の地に黒のラインが走ったようになっており、マスクには巨大な牙のようなものがうかがえて、全体のフォルムは大トカゲを思わせる、不気味なものだった。
「くすくすくす☆ 巽ちゃんのベルトと、ゲゲの腕輪のエネルギーが相互干渉を起こして、新しい姿を生み出したんだもん☆ あれは、そう、あれは、仮面ツァンダー……」
詩穂がいいかけたとき。
「シィィィィィィッ、ボォォォォォォ、ラァァァァァァ!! ウガアアアアアッ!!」
脳内が完全に野生化した風森は絶叫すると、全身にすさまじい力を込めて、絡みついているヘビ獣人の身体を思いきり振りほどいた。
「ニョ、ニョニョニョ。何だ、こいつは!!!」
ヘビ獣人の身体がすさまじい勢いで吹っ飛ばされる。
「ウキー!! 舐めんなよ!!」
サル獣人は邪悪な笑いを浮かべながら、風森に飛びかかった。
「グギャアアアア!!」
風森は叫ぶと、飛びかかってきたサル獣人に、自分から組みついていった!!
「な、なに!? 力比べか!! オレと同じ動きで勝負しようというのか?」
呻くサル獣人と風森は、組み合ったまま遺跡の廊下を転げまわった。
「キャキャア、キャキャア!!」
風森の爪がサル獣人の皮を引き裂き、鋭い牙がガブリと真っ赤なケツを噛む。
「お、おわああああああ!! い、痛ぇぇっ!! て、てめえ、獣か!!」
サル獣人は、自分を棚にあげて叫んだ。
「ウキ、そいつを押さえつけておけ!! オレが食ってやる!!」
ヘビ獣人が叫んで、大口を開けて飛びかかると、サル獣人を圧倒している風森を頭から飲み込んでしまった。
「きゃ、きゃああああ、風森さん!!」
エリカの絶叫が遺跡にとどろいた。
「よし、この隙にこの女はもらっていくぜ!!」
サル獣人はニヤッと笑うと、呆然としているアリアの身体を抱えて、遺跡の奥へと姿を消した。
「ハハハハハハ! 腹一杯に……うん!? ぐ、ぐああああああ!!」
風森を飲み込んで高笑いしたヘビ獣人は、お腹の中からわきあがる激痛に悲鳴をあげた。
めりっ
ヘビ獣人のお腹が裂けて、風森の手がのぞいた。
「あ、あがあああああああ!!」
次の瞬間、吹きあがる鮮血とともに、ヘビ獣人の皮を切り破って、風森が外に踊り出ていた。
「ぐ、ぐおおお、あが、あが。許さねえぞ。死ね!!」
血を吹きながらも、ヘビ獣人は風森になおも襲いかかろうとする。
「ケケケケケケ、ケーン!!」
全身にヘビ獣人のどす黒い血を浴びてものすごい姿になっている風森だったが、まったくひるむ様子もなく、ヘビ獣人の首に腕を巻きつけると、思いきり締めつけた。
「ぎええええええー!!」
ヘビ獣人は悲鳴をあげて、のたうった。
その瞬間、周囲の人々の目には、風森が消えたように移った。
しかし。
次の瞬間には、風森の身体は跳躍して、ヘビ獣人の真上の空間に現れていた!!
「ヒャッハァァァァァ!! ダーイチョンパァァァァァ!!」
絶叫とともに、風森は手刀をヘビ獣人の額に叩きつけた。
ぶしゅうううう
鮮血が吹きあがり、ヘビ獣人の頭部がまっぷたつに裂けてしまう。
「お、おごぉ!? ニョ、ニョロニョロ、ぐげげげげげげげげげげー!!!!」
すさまじい断末魔の悲鳴とともに、ヘビ獣人は息絶えた。
「シィィィィィィッ、ボォォォォォォ、ラァァァァァァ!! ワオオオオオオオ!!」
血まみれの姿のままのまま、ヘビ獣人の死骸を持ちあげて、勝利の雄叫びをあげる風森。
「か、勝ったのはいいけど、これじゃ、どっちが獣かわからないわね」
三二一は、息を呑んでいた。
「う、何じゃ、こいつは!! ばさばさばさ」
「ニャア!? いきなりラスボス、じゃないよニャ?」
コウモリ獣人とネコ獣人は、風森のすさまじい動きに圧倒されてしまっていた。
「く、くそっ、負けてたまるか、行くぞ、みんな!!」
いつの間にか現れていたブタ獣人が、他の獣人に発破をかけた。
「姉ちゃん、いいケツしてまんな!! ちょっと舐めさせろやあああ!!! ブヒー!!」
ブタ獣人は、鼻息も荒く、亜璃珠に飛びかかっていった。
「あらあら。ノーパンの股間の匂いにひかれたのですわね。ですが、ちょうどいい囮になれましたわね」
亜璃珠は笑って、いった。
「なに!?」
「じゃじゃーん☆ ブタちゃんの相手は、詩穂がするよ☆」
ブタ獣人の前に、ニコニコ笑っている詩穂の姿が現れた。
すると。
次の瞬間、詩穂のすっと伸ばした指先が、ブタ獣人の鼻の中に差し込まれていた!!
「くす☆ ブタちゃんは既に死んでいる☆ 閻魔の掌を使って、指先ひとつでダウンだよ☆」
詩穂は、ニッコリ笑っていった。
「しっかり、決まったけんのう。即死じゃけん」
詩穂の魔鎧である清風が呟いた。
そして、間もなく。
ぴううううううう
ブタ獣人の顔が真っ赤に膨れあがったかと思うと、血を吹いて裂けてしまっていた。
「ぴ、ぴにゃああああ!? の、のだはどじょぉ!?」
うめいて、ブタ獣人は倒れた。
「お、おわあああああ!? こいつら、半端じゃないぜ!! ばさばさばさ」
コウモリ獣人は、仲間が次々に倒れていくのをみて、動揺して超音波を飛ばしまくっていた。
「ニャ、ニャアアアア!! 大丈夫、どんどん増援がきてるミャ!!」
ネコ獣人が、ホッとしたような口調でいった。
ネコ獣人のいったとおりだった。
遺跡の地下からわいて出てきたかのように、大量の獣人が百鬼夜行の妖怪かと見紛う大行列をなして、暴れる風森たちの周囲を包囲しつつあった。
「ウガアアアアア!!」
風森は全く動じた様子もなく、原始の本能に従って獣人を次々に血祭りにあげている。
「まずいですね。いくら何でも、数が多すぎます」
エリカは、戦慄を禁じえない。
「アリアさんが連れて行かれましたわ。倒すことにこだわらず、ここは先にいかなければいけないですわ」
亜璃珠がいった。
そして、祥子がいった。
「祈るのよ。パンツァーに」
遺跡の床にひざまずき、一心に祈りを捧げ始める祥子。
そんな祥子に、押し寄せる獣人たちが次々に襲いかかっていく。
「オホ、オホ。死ねぇぇぇぇぇ!!」
ゴリラ獣人が両手で胸をゴンゴン叩きながら祥子を突き飛ばそうとしたとき。
「ぴーっち、ぴーっち、ちゃぷちゃぷ、らんらんらん、ですねー」
ステップを踏みながら、藤原優梨子(ふじわら・ゆりこ)が、遺跡の闇の中に現れでたのである。
「お嬢、ここの地下に何かあるぜ。けど、こいつら、邪魔だな」
宙波蕪之進(ちゅぱ・かぶらのしん)が、獣人たちを睨みつけていった。
「そうですね。邪魔といえば邪魔ですが、同時に、情報を持ってそうでもありますよ。ふふふ」
楽しそうに笑うと、優梨子は、祥子の前にいたゴリラ獣人の首根をつかんで、自分の方に引き寄せた。
「オホ!? 何をするかー!!」
怒れるゴリラの首を両手でつかんで、ぎりぎりと締めあげる優梨子。
「さあ。教えて下さい。いにしえの干し首は、どこにありますか?」
「な、なに!? どうして、お前に教えなきゃいけない!? むぎぎ」
わめくゴリラ獣人の顔が、苦痛に歪む。
首の骨がヘシ折れそうなくらいに、優梨子は力をこめていた。
「ち、地下に……生贄の、首が、……がが」
「生贄の首!? それは、レアですね。儀式に使われる前に奪ってしまわないといけませんね」
優梨子はニヤッと笑うと、ゴリラ獣人の首筋に、お礼代わりに噛みついた。
がぶっ
ぴゅぴゅ
「オ、オーオッホッホ」
首から血をしぶかせながら、ゴリラ獣人は目を見開いて呻いた。
吸精幻夜の力で、全身の気が抜かれたようになって、意識がぼんやりとする。
「ふふふふ。血の雨、雫が、ぴーっち、ぴーっち、ちゃっぷちゃっぷー」
肉人形と化したゴリラ獣人の身体を突き放すと、優梨子は笑いながら駆けた。
立ち塞がる獣人たちに次々に襲いかかり、ある獣人には噛みつき、ある獣人にはその首をはねるなどした。
どびゅうううう
ごろ、ごろ
血がしぶき、斬り落とされた首が遺跡の廊下を転がる。
「しぎゃあああああ!!!」
「ぐぎゃあああああ!!!」
悲鳴をあげながら、獣人たちは倒れていった。
「藤原さん。すごいですわね」
亜璃珠は感心したような口調でいった。
「そうですか? 私より、そちらの原始人さんの方がよっぽど華麗かと思いますよ」
そういって、優梨子は風森に襲いかかっていった。
「グギャアアアア!!」
吠える風森。
「面白い方ですね。是非、お手合わせ願いたいです」
笑いながら、優梨子は風森の周囲を踊りまわりつつ幻惑の一撃を放つ。
「ケーン!!」
だが、風森は、宙高くジャンプすると、優梨子から距離をとって走りだしていた。
「あら。相手にしてくれないんですか。待って下さい」
優梨子は、片手で口をおさえる仕草をしてみせながら、ステップを踏んで、風森の後を追って遺跡の後へと進んでいった。
優梨子たちの足下には、おびただしい数の獣人の屍体があった。
だが、これも、地下に潜む獣人たちの中では、ほんのわずかなのである。
「大魔弾!! 零距離からの発動!!」
中願寺綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)は、カマキリ獣人のカマ攻撃をかいくぐると、その腹部に大魔弾を押しつけ、発動させていた。
どどーん
「カーマ、カーマスートラ、カマカマボコ!!」
カマキリ獣人はブスブスと焼け焦げた身体をひっくり返らせてバタバタ暴れていたが、やがて、力尽きた。
「他愛ないものですわね」
綾瀬は、肩をすくめた。
「綾瀬。地下に何かがあるわ。儀式に、お宝の気配が」
魔鎧として綾瀬に装着されている漆黒のドレス(しっこくの・どれす)が、ひそひそと囁く。
「なるほど。他の生徒たちも、地下に向かっているようですわね。虎穴に入らずんば何とやら。どこまでも闇に堕ちてみますわ」
そういって、綾瀬は笑った。