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リアクション
第5章 復活の儀式
「いあ! いあ! 大いなる主よ!」
いんすますぽに夫(いんすます・ぽにお)は、古代の遺跡の地下のさらに奥にある祭壇に立ち、邪神に祈りを捧げていた。
ぽに夫のさらに前には、邪神の司祭、クマ獣人クマーが両腕を広げて立ち、復活が近い邪神の力の躍動を願ってひたすら祈りを捧げている。
周囲の獣人たちも、クマーとぽに夫の祈りの声に合わせて、いっせいに祈りを捧げていた。
「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん! いあ! いあ! 大いなる主よ!!」
ぽに夫はひときわ高く絶叫したかと思うと、くるりと背後を振り向いて、儀式の間の中央に集められている、生贄の生徒たちの姿を不気味な瞳で凝視した。
「お、おわあああああ!! 獣人たちがやってきても関係ねえって、みんな追い払ってくれると思って全裸でひたすら発掘しまくってたら、見事に捕まってしまったぜ!! くそー、もう終わりか? ここで食われるのか? いや、オレはまだ、古代のパンツをみちゃいない!! パンツをみるまで死ねるものか!!」
儀式の間におびただしく立てられている十字架のひとつに、全裸のままはりつけにされている国頭武尊(くにがみ・たける)が、呻いて叫んだ。
まさに絶対絶命の状況だった。
だが、国頭は、これまでも、似たような修羅場をいくつもくぐってきたのである。
ときには、本当に死にかかった瞬間に、パンツの力に助けられたこともあった。
今回の状況も、絶対絶命度がかなり高いといえたが、国頭は決して諦めるつもりはなかった。
とはいえ、理屈を超えた、原初の恐怖心とでもいうべきものが徐々に国頭の心身を蝕み始めているのも事実だった。
この感覚は、あのときのあれに似ている。
国頭は、以前、Sの館でサッド・ヘタインが何かを召還したときに、似たような戦慄を覚えたのを思い出していた。
あのとき、召還されて現れたのと同じような存在が、いまここに現れるのだとしたら?
考えるだに、恐ろしいことだった。
「ヒャッハー!! 俺も見事に捕まっちまったが、あともう少しで、古代パンツの謎が解き明かされるという気がするぜ!! 謎が解けるまでは、死ぬつもりはないぜ!!」
国頭の隣にはりつけにされている南鮪(みなみ・まぐろ)も、絶対絶命の状況の中で、自らの志を強く持とうとしていた。
「あぁ。またはりつけですね。何て興奮させる状況なんでしょう。ああ、もう、じゅくじゅくと出てしまいますね」
同じくはりつけにされている秋葉つかさ(あきば・つかさ)は、国頭たちとは対照的に、期待と歓喜にうち震えて身をくねらせ、自ら拘束の紐を股間に食い込まさせて、あふあふ喘いでいる。
みると、つかさの十字架の下に、正体不明のベタベタした液体がこぼれ落ちていた。
液体から漂ってくる不思議な香りが、儀式の間の混沌とした状況を煽っているように思えた。
「いあ! いあ! 大いなる主よ!!」
祈りの言葉を詠唱しながら、ぽに夫が少しずつ、生贄の生徒たちに近づいてきた。
こらえきれず悲鳴をあげ、わめきたてる生徒も多い中で、つかさだけは、熱っぽい吐息をついて、身体を燃えたたせている。
ぽに夫は、本能的に、つかさの方に近づいていった。
ぽに夫には、つかさが恐れていないことが不満だった。
邪神の生贄としてふさわしくなるよう、この女に恐怖を味わわせなければならない。
最初に脅すのはこの女にしようと、ぽに夫は決めた。
脅して、怖がらないなら、食ってしまえばいい。
ぽに夫は、他の獣人たちにつかさを取り囲むよう指示すると、自身もまた、顎を大きく、ばっくりと開いて、つかさの顔に向かって暗黒の吐息を吹きかけていった。
「ああ、もう、たまらないですね。クライマックス、エクスタシー、昇天、写生!! そろそろですね」
暗黒の吐息を吸ったつかさは、興奮の絶叫に達し、ケラケラと高笑いしながら、そのしなやかな身をくねらせ、あっという間に拘束から抜け出てしまった。
「ぐおおおおお、おおおおおお」
ぽに夫は、つかさが自分に向かってくるのをみて、目を白黒させた。
予想外の展開だが、どんな逆境でも邪神への祈りを欠かしてはならない。
「あはははははははははは、この儀式は私が乗っ取らせていただきますね」
つかさは、笑って歩きながら、無造作に真空派を放った。
その瞬間、ぽに夫は、衝動的にひざまずいて、邪神により深い祈りを捧げようしたため、立っていたときの首筋の位置を襲ってきた真空波を、辛うじてかわすことができた。
ひゅるひゅるひゅる
すぱっ、すぱっ
「ぐええええええ!!」
「ぎゃああああああ!!」
つかさの真空波は、ぽに夫の後方に位置していた獣人たちの首をはね飛ばし、鮮血をしぶかせる。
「おいしそうな血ですね」
つかさは舌なめずりすると、その血の中にひざまずいた。
「おい、何やってんだ。脱出したなら、早くオレたちを助けろ!!」
国頭はわめいたが、つかさは知らん顔だ。
「みなさんには、獣人たちと一緒に、パンツァー神を呼び出すための生贄になってもらいますね。そして、私がこっそり発掘していた、このパンツも一緒に」
そういって、つかさは、ずっと握りしめていた、石のようなものを地面に置いた。
それは、ラゾーンに眠っていた、古代のパンツにほかならなかった。
「おおお!? ついに古代のパンツをみられたぞ!! もう死んでもいい……って、まだだ!! まだまだパンツをゲットしなきゃ死ねないぜ!!」
国頭は、喜びの声をあげながら、何とか生き延びようという闘志を奮いたたせた。
「ああ、パンツァー神様!! どうか、今宵、この場にご光臨下さいませ! 血と汗と涙と何かの液体と、そしてパンツを捧げます!!」
つかさは、一心に祈りを捧げた。
他の「パンツァーの巫女」がいなくても、自分一人でもパンツァーを呼べるという自信が、つかさにはあった。
司祭であるクマーは、つかさをちらっとみるだけで、何もいわず、祈りを続けている。
ぽに夫も、ひざまずいた状態で祈り続けている。
獣人たちの祈りの声が、次第に高くなっていき、ついに、絶頂を迎えた。
もくもくもく
儀式の間の奥、司祭クマーが向き合っている、タコに似た不気味な像から、黒いオーラが漏れ出てきた。
「おお、ついに!!」
クマーは、歓喜の叫びをあげた。
「パンツァー!! きて下さったのですね」
つかさもまた、歓声をあげた。
そんなつかさをみて、ニコニコ笑いながらクマーはいった。
「感謝するぞ。おぬしの中の邪悪な波動が、復活の最後の後押しをしてくれた!!」
「え? 何ですか、それ?」
つかさは、一瞬ぽかんとしたが、すぐに気づいた。
「もしかして、私の祈りが、間違って邪神を復活させてしまったのでしょうか?」
まさか。
いや、そのまさかだ。
つかさは、儀式の間に現れつつある、唾棄すべき存在、宇宙的邪悪そのものといえる存在を、まじまじとみつめた。
普通の人間なら発狂してしまうくらいのどす黒いオーラを身に受けながら、つかさははっきりと悟った。
違う。
これは、パンツァーではない!!
「お、おい!! どうしてくれるんだよ!!」
国頭は、泣きそうな声をあげていた。
「ああ、邪神が復活してしまったんですか。さすがパラミタの修学旅行、スケールが大きいですね。こうしてはいられません。私もそろそろ介入しましょう!」
次百姫星(つぐもも・きらら)は、儀式の間の片隅でお宝を探っていた顔を上げて、生贄の生徒たちを襲おうとしている邪悪な影を目にするや否や、勇敢にも駆け出していた。
「っていうかさ、修学旅行じゃないよね、これ。まあ、いいさ。どんな敵でもぶっ飛ばしてやる!!」
鬼道真姫(きどう・まき)もまた、姫星とともに駆け出していた。
「う、うわああああ!! 助けてくれええ!!」
国頭は、究極的な宇宙のひずみからの使者を前にして、いまや発狂寸前になっていた。
修羅場というより、臨死体験に近い感覚さえ覚え、なりふり構わず絶叫する状態になっていたのである。
「まだか? まだパンツの謎は明かされないのか?」
南は、達観した境地で終焉の恐怖と向き合っている。
「困りましたね。どうしましょう? とりあえず今度こそパンツァーを呼ばないと!!」
つかさはおろおろしている。
「いきますよ、幻槍モノケロス!!」
姫星が邪神に飛びかかって、槍を突き出した。
その身体が、もろくも吹っ飛ぶ。
「うわあああ!!」
正体不明の力に翻弄されて、姫星は戸惑った。
全身が冷気にまといつかれていて、心臓がいまにも止まりそうだ。
弱った姫星に、獣人が次々に襲いかかってきた。
「うがー! 食えー!!」
「ち、近寄らないで下さい!!」
姫星は必死に応戦する。
「どけ、どけ!! 姫星には指一本触れさせないよ!!」
真姫が姫星をかばうように身を投げ出し、襲いくる獣人たちを全身で受け止めて押し返している。
儀式の間に、怒号が飛びかった。
「あーっはっはっは! みて、みて、もうこの世の終わりみたい!! 最後の最後に、いっぱい飲んで歌おうね!! 最後の最後じゃなくても飲んでるけどね。ふんふふーん」
儀式の間の隅っこにビニールシートを広げて飲めや歌えやの大騒ぎをしていた綾原さゆみ(あやはら・さゆみ)は、ポンと手を打って大笑いすると、隣のアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)の肩をガシガシ叩いた。
「さ、さゆみ。何でこの状況で。あくまで宴に徹するの?」
アデリーヌは、呆れたような口調でいった。
「当たり前でしょ。これも人生。さあ、あなたも脱いで!!」
そういって、さゆみは、アデリーヌに抵抗する隙を与えず、瞬時にその服を剥ぎ取って、全裸にしてしまった。
「きゃ、きゃああああああああ!」
驚きと恥ずかしさから、アデリーヌは悲鳴をあげた。
「さー、いくわよ。歯をくいしばって。闇に堕ちましょう。うーん、ちゅうううう」
さゆみは笑いながら、アデリーヌにいきなりハードなディープキスを決めた。
「あ、ああああー」
アデリーヌは、戸惑いながらも、甘いキスの快感の中で、闇に溺れるように気を失っていった。
「く、来た!! 食われる!! こんな死に方をするとは!! もう、本当にダメなのか?」
国頭は、直近にまで迫った邪神が身を覆い尽くそうとする、その狂気の淵のただ中にいながら、救いを求めるようにして、つかさが地面に置いた古代のパンツに目をやった。
気のせいか、パンツが光ったように感じた。
「パンツ? そうか、オレはパンツ四天王だった。パンツァーよ、助けてくれー!!!」
国頭が絶叫したとき。
「チューン。ここにいたか。うわー、やめろー!!」
儀式の間に乱入したイタチ獣人が、絶叫しながら国頭に駆け寄って、邪神の魔の手から救おうとした。
その瞬間。
邪神の影がちょっと戸惑ったような様子をみせたかに思えたが、すぐにイタチ獣人を闇に包み込んで、凍えつくような冷気の中で転倒させた。
「チューン。くっ!! 何て、何て、冷たいんだ!! 冷える、死ぬー!!」
イタチ獣人は、すっかり弱って、呼吸が止まりそうになった。
「うん? シボラの獣人なのか、これは? このようなものは、大いなる主が生み出した存在の中にはいなかったが?」
司祭クマーは、イタチ獣人の姿をみて首をかしげたが、目の前でのたうちまわっているのは明らかに獣人である。
「ウガー!! イタチ!! しっかりしろ!!」
イタチ獣人に続いて、儀式の間に乱入してきた風森巽(かぜもり・たつみ)は、危篤状態のイタチを慌てて助け起こした。
「チューン!! 俺は、もうダメだ。最後に教えてやろう。お前の、そのゲゲの腕輪と、ググの腕輪が、合わさった……とき……うっ、がくっ」
最後の言葉を言い終わる前に、イタチ獣人は息絶えた。
「イ、イタチー!! ウ、ウワアアアアアアア、シィィィィィィッ、ボォォォォォォ、ラァァァァァァ!!」
いつの間にか変身が解けてしまっていた風森だが、イタチ獣人の亡骸を抱えて号泣しているうちに、怒りの大絶叫とともに、再び仮面ツァンダーシボラに変身していた!!
(ウン? 貴様は? その腕輪。まさか!!)
邪神は、風森の異形の姿と、その腕にはまったゲゲの腕輪を目にして、何かを感じ取ったのか、動揺した様子をみせた。
「ええい、曲者が。大いなる主には近づけんぞ。かかれ、かかれ!!」
司祭クマーは他の獣人に命じて風森を襲わせ、自身もまた、風森に打ちかかっていった。
そのとき。
「うん?」
クマーは、一瞬、確かにみたのだ。
怒りの雄叫びをあげる風森の背後で、倒れ伏したイタチ獣人の身体が、不思議な光を発しながら消えていったのを。
あれは?
やはりあれは、ただの獣人ではなかったのか?
では、何だったのだ?
国頭の叫びにこたえるようにイタチ獣人が現れた、その不思議な呼応に思いを馳せながら、クマーは、風森に向かっていった。
そんなクマーの身体に、みるみるうちに邪悪のオーラがわきあがり、筋肉を盛りあがらせ、狂気に近いまでに攻撃本能を高め、力を強化させていく。
復活した邪神の力が、クマーを進化させたのだ。
いまや、クマーは、超獣人とでもいうべき存在、クマ大帝と化して、風森を八つ裂きにせんと暴れ狂っていた。
「ユルサナイ!! イタチノ、カタキ!!」
風森は、怒りに駆られるままにクマ大帝にパンチやキックを繰り出すが、強化されている相手には、さしてダメージを与えることができない。
「グオオオオオオオ!! 原初の昔、まだサルだったころを思い出すのだ!! お前たちは、しょせん、この宇宙の中ではちっぽけな存在に過ぎない!! 地球に封印されている旧支配者たちが目覚めたとき、お前たちは、絶望と恐怖の中で死に絶えるほかないのだ!! ガアアアアアア、死ね、狂え、散れ、流せ!!!」
クマ大帝は、狂気の吠え声をあげながら、風森を圧倒していく。
「つかさ。もう、何をやってるのかしら。首を跳ねたり、血を流させたりして、そんなのじゃパンツァー様をお呼びすることはできないわ。あのとき、あの神殿で、あなたはパンツァーの心意気を感じたはずよ」
やっと儀式の間にたどり着いた宇都宮祥子(うつのみや・さちこ)が、つかさを睨んで、怒ったような口調でいった。
「はあ。祥子様。かくなるうえは、一緒に祈りましょう」
邪神を復活させてしまったショックから立ち直ったつかさは、前向きな心境でいった。
「そう。私たちには、祈ることしかできないわ。さあ、いくわよ。あなたのその強い波動を、今度こそパンツァーに向けるのよ」
そういって、祥子は自らのスカートの中に手を差し入れ、パンツを脱ぎ取った。
「ちょ、ちょっと、何するつもり!?」
魔威破魔三二一が、目を丸くしていった。
「パンツァーを呼ぶには、パンツが必要だわ。さあ、三二一も脱いで」
「えっ!? や、やめてよ」
驚いて抵抗する三二一の身体を抑えつけて、そのパンツを強引に脱がせると、祥子は、自分のパンツと三二一のパンツとを、地面に置いた。
「さあ、祈るのよ」
ひざまずいて、一心に祈りを捧げる祥子。
「ああ、パンツァー様。私の過ちをお許し下さい。そして、何とぞ救いの手を。ああ!!」
つかさもまた祈り始め、今度もまた興奮して喘ぎ声をあげ始めた。
「パンツァー様☆ 詩穂もお祈りするもん☆」
騎沙良詩穂(きさら・しほ)もまた、祥子、つかさに並んでひざまずき、祈りを捧げる。
そして。
「いまこそ、通りすがりの、パンツァーの巫女、心を合わせて祈ろう!!」
何とか間に合った夜薙綾香(やなぎ・あやか)もまた、ひざまずいて祈り始めた。
さらに。
「ハッハー。こいつはいいや!! オレを、パンツァー・イタチューンを呼ぶための生贄として使ってくれ!!」
天空寺鬼羅(てんくうじ・きら)が、全裸で現れ、腕を組んで仁王立ちすると、豪快な叫びをあげた。
「生贄? そんなものは、パンツァーは望まないわ。でも、そうね、敢えていうなら、あなたの喜びを全身で表現してあげて」
祥子が、祈りながらいった。
「喜びを? どうやってだ? うーん、難しいことはわからないけど!!」
一瞬考え込んだ鬼羅だが、もう本能のままに動くしかないと決心して、自分が一番力を感じる物体に近づいていった。
力を感じる物体。
それは、パンツだった!!
「特に、この、三二一のパンツがいいぜ!!」
鬼羅は、地面に置いてあった三二一のパンツを取り上げた。
「い、いや!! 何するの、返して!!」
三二一が顔を真っ赤にして鬼羅に詰め寄る。
だが、鬼羅は、豪快な笑い声をあげながらパンツを高く掲げて、走り始めていた。
走る。
走る。
どこまでも。
「ぴっちぴっち、ちゃっぷちゃっぷ、らんらんらんー!!」
どこからともなく、藤原優梨子(ふじわら・ゆりこ)が現れて、ステップを踏みながら、鬼羅とともに走り始めていた。
「さあ、いにしえの干し首はどこにあるんでしょう? 湿った首しかありませんね。でも、何だかゾクゾクするところですね。それじゃ、いっそのこと、獣人の首をみんな狩りとってしまいましょう!! あははは」
優梨子は邪悪な笑いを浮かべると、燃え上がる情熱の赴くまま、隣を走る鬼羅の喉に噛みついた。
がぶっ
その瞬間。
鬼羅の目が、ぐるっと裏返った。
優梨子にちゅうちゅうと力を吸われながらも、えもいわれる高揚感が全身を包む。
手に握るパンツが、不思議な光を放っていた。
「くああああああ!! たまらねえぜ!! 暗黒だ、暗黒!! 力を、吸うなら、吸え!! オレの身体からは!! 吸っても、吸っても!!! いくらでも!!!! 力がわいてくるぜえええええ!!!! そう、燃え上がる太陽のように!!!!!」
パンツァーの巫女たちの祈りの声がこだまする中、錯乱状態と化した鬼羅は、どこかからの神聖なる導きのまま、手にしたパンツを、頭にすっぽりとかぶってみせた!!
ベリッ
鬼羅の頭の角が、パンツの生地を破って、切っ先をかすかに宙に出す。
「かー!!! たまらねえ!!! 目がみえない、熱い、感じるぜえええええええ!!!」
鬼羅が絶叫したとき。
しゅわああああああ
鬼羅の頭部を覆うパンツが、すさまじい光を放ち始めた!!!
光は、儀式の間全体を照らしだすほどまばゆく光り輝き、さらに力を増していく。
「この感じ。ついに、きたのですね!!」
ひたすら祈りを続けていた祥子は、そこで、顔をあげ、賛嘆の声をあげた。
「確かに。これは、素晴らしいですね。さっきの冷気にあふれる存在とはまったく違いますね。負の属性を持つ私にさえ、あたたかな光がしみわたってきます」
つかさもまた、あふれる光の出現に目を恍惚とさせた。
(こ、これは……これは!!! おのれ、また、邪魔をするか!!!!)
邪神の叫びが、地下にこだまする。
「か、解放された!! うおお、力がみなぎるぜ!!」
光の洪水の中で、国頭が、雄叫びをあげていた。
「ヒャッハー!! わかったぜ、古代パンツの謎の正体が!! そう、それは……」
南もまた、歓喜の中で何事か叫んでいるが、よく聞き取れない。
「な、何だこの光は!! くっ」
クマ大帝もまた、光に戸惑ったが、それでも風森にだけはトドメを刺そうと歩み寄る。
だが、風森にもまた、変化が起きていた!!
「ウ、ウガア、ヒカリ!! ヒカリダ!! チカラガ、チカラガ!! ゲゲノウデワ!! ワオー!!」
風森の腕にあるゲゲの腕輪が、まばゆい光を浴びた瞬間に、自らもまた強く光り輝き始め、風森の全身にすさまじい古代の超パワーをみなぎらせていた。
「マケナイ!!! セイギハ、ケッシテ!! ミテロヨ、イタチ!!」
風森は叫ぶと、クマ大帝に猛然と打ちかかっていた。
「ごふっ!! こ、これがシボラに文明をもたらした、超古代の力!? 旧神につながる、あの存在が、忌々しきパンツァーが味方しているというのか!! くそ、これでは、1万年前と同じではないか!! くそっ!!」
風森のパンチを受けたクマ大帝は、さっきまでとは比較にならない強い衝撃をくらって、口から血を吐きながら呻いていた。
「仮面ツァンダーシボラ!! こいつ、しぶといよ。いま、ガス抜きをしちゃうから!!」
光に包まれて視界が真っ白になっている中、どこかから小鳥遊美羽(たかなし・みわ)の声が響いた。
「いくよ、トアー!!」
美羽は、戦闘本能のおもむくまま、よろめくクマ大帝の背後を直感でとると、そのお尻に思いきりマシンガンキックを叩き込んだ。
「ぎゃ、ぎゃひいいい」
クマ大帝は呻いた。
「くらえ!! 疾風突き!!!」
美羽は、第二世代パイルバンカーを、クマ大帝のお尻の芯に思いきり強く突っ込んだ。
「お、おひょ!? ク、クマアッー!!」
クマ大帝は、理性を喪失して絶叫した。
激痛とともに、深いエクスタシーが地獄の淵からわきあがっていた。
血が、お尻からしたたる。
「ま、まだ、だ。まだ、まだ。我は、邪神のため、この身を捨てても、お前たちを、倒す……」
クマ大帝の身体が歪んだかと思うと、巨大なドラゴンのような、不気味な姿がわき出てきた。
だが。
「ケー!!!! ケ、ケ、ケ、ケ、ケ、ケ!!!!」
風森は、絶叫とともに跳躍すると、古代の超パワーにみなぎる全身を光らせながら、クマ大帝が変貌した異形の存在の首と思われる部分に向かって、右腕を力強く振り上げていた。
「キョー!!! スーパーダイチョンパー!!!!」
「ぎゃ、ぎゃあああああああ!!!」
風森の手刀が、クマ大帝であったものの生首をはね飛ばしていた。
「あーっ!! あっ、あっ!! それです、それ!! その首、欲しいです!!! ダメです、渡しなさい!!!」
優梨子が、目もくらむほどの光の中で絶叫する。
「もう、ヤケクソよ!! どうせ光がまぶしくてみえないんだし、全裸になってやる!!!」
三二一の声がして、服を脱ぎ捨てる音が聞こえてくる。
(オ、オノレ、パンツァー!!!)
邪神の叫びに、悔しさが滲んでいた。
「邪神がくるわ。気をつけて!!!」
祥子が叫んだ。
「あははははははは。もうオシマイですね。気持ちいいし、エロいし、ゆうことなし!! 素晴らしい人生でした」
つかさが、狂って笑い転げている。
「オー、オ、オ!! イッちゃう、イッちゃうぜ!? イッていいのかよ、イッて、イッて、イキ倒れだぜぇぇぇ!!!」
すさまじい光を放つパンツを被ったまま、鬼羅はくるくるまわりながらメチャクチャに走り、鼻血を吹きながら、邪神と思われる存在へとぶつかっていった。
(パ、パンツァー!? そこにいるのか!!!)
その、邪神の声が全員に聞こえたのが、最後だった。
次の瞬間、光の爆発が遺跡の地下を焼き尽くすような衝撃がはしり、その場にいた生徒たちは全員、気を失ってしまったのである。