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【2021クリスマス】大切な時間を

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第13章 求めたアドバイス

 レン・オズワルド(れん・おずわるど)は、ラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)に、個人契約を誓っており、様々な報告の為に、定期的にヴァイシャリー家を訪れている。
 イブの今晩と、明日のクリスマスにはヴァイシャリー家でもパーティが行われるだろうと思い、早い時間に約束を取り付け、邪魔にならぬよう手短な報告で帰る予定だった。
「ミケーレ・ヴァイシャリーには、失礼な対応をとってしまった。すまない」
 空京に浮遊要塞が迫った事件で、レンはヴァイシャリー家現当主の息子だという青年、ミケーレ・ヴァイシャリーと顔を合わせた。
 ミケーレがどれだけ感じ取っていたかは不明だが、内通者の存在を危惧していたレンは、ミケーレにも疑いの目を向けていた。しかし、結果的に彼には怪しい所はなかった……全て、ではないが。
 シャンバラを思う気持ちと、ヴァイシャリー家の一族としての覚悟はラズィーヤ同様持っているようであった。
「今回の事件について、ラズィーヤはどう思う? 率直な意見が聞きたい」
 資料を提出し、レンはラズィーヤに問いかけた。
「この件に関しましては、わたくしは口を挟まないことにしていますの。単純な感想としては、ミケーレさんはまだまだですわね☆」
 ラズィーヤは悪戯気な笑みを浮かべながら、紅茶を飲んだ。
「ラズィーヤには何か見える部分があるとでも?」
「いえ、わたくしが得れる範囲の情報は、主に東シャンバラ側からの情報ですから。……今回の件に関しましては、お兄様と親交のある、ミケーレさんの方がよくご存じでしょうし、わたくしより的確な判断が出来るでしょう」
 東シャンバラの要人として、百合園女学院の実質の支配者として、ラズィーヤは多くの負担を抱えている。そのため、今回の事件に関してはミケーレに全部任せている、ということらしい。
「お飲みになって? 温まりますわよ」
 ラズィーヤが紅茶をレンに勧める。
 レンは砂糖を入れず、ミルクだけ入れていただくことにした。
 程よい温かさで、口の中、喉、そして身体がゆっくりと温まっていく。
「……今日はラズィーヤも贈り物をするんだろうが」
 カタンとカップを置くと、レンは声のトーンを和らげて話し出す。
「俺も、とある貴族の女性に贈り物を送りたいと思ってる。ただ、何を贈れば良いか中々に決めかねている。同じ貴族の者として、何かアドバイスを貰えたら助かる」
「どういった方に贈りますの?」
「彼女は……」
 ラズィーヤの問いに、レンはとある女性の姿を思い浮かべる。
 そして、ヴァルキリーであること、活発な女性であること、割と天然で、馬が好きであることを、話していく。
「特に衣服関係は難しい。女性目線での回答を御願い出来ないだろうか?」
「ふふ……」
 ラズィーヤは女性について語るレンを楽しげに眺めていた。
「求めているのは、俺の観察ではなく、助言なんだが」
 レンが苦笑しながら言う。
「申し訳ありません。貴方にも、可愛らしいところがありますのね」
 微笑した後、ラズィーヤはちょっと考えてこう続ける。
「活発な女性であれば、指輪やブレスレッド、アンクレットなど、身に付けて動きを束縛しないアクセサリー関係が良いのでは? 髪留めやコサージュもいいかも知れませんわ」
「……なるほど、参考にさせていただく」
「喜んでいただけるといいですわね」
 ラズィーヤの言葉に「ああ」と答えて、レンは立ち上がる。
「これ以上、邪魔しても悪いだろうから」
「良いクリスマスを。そして、良い年末年始をお過ごしくださいませ」
 ラズィーヤは立ち上がって、レンに続いてドアの方へと歩く。
「ラズィーヤも」
 レンは手を上げて見送りはここまででいいと言い。
 部屋の外に待機していたヴァイシャリー家の使用人と共に、外へと向かう。
 街へ出て、贈り物を選び、配送して。
 それから、温かな部屋に。仲間とパートナー達のところに、帰るのだろう。