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地球に帰らせていただきますっ! ~4~

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地球に帰らせていただきますっ! ~4~

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 ■ 両親とパートナーと ■
 
 
 
 パラミタでは色々とありすぎて、これまで時間を作ることが出来なかった。
 けれどようやく長い休みが取れたので、佐野 和輝(さの・かずき)はパートナーの皆を連れて帰郷することにした。
 自分が生まれた場所には良い思い出など殆どないけれど、両親の墓参りはしたかったから。
「和輝、生まれ故郷に帰るの?」
 帰郷の話を聞いたアニス・パラス(あにす・ぱらす)は複雑な表情だ。
 そこはアニスが和輝と出会った記念の場所でもあるけれど、嫌な思い出も沢山ある。
「嬉しいけど怖い……う〜、上手く表現できないよ〜」
「アニス、気が乗らないなら留守番しておくか?」
 和輝に言われ、アニスはしばらくうーうーと唸っていたけれど、それでも一緒に帰ることを選んだ。
 
 
 勘当されていた両親の墓はお参りをする人も無く、予想通り荒れ放題になっていた。墓の周りには雑草が茶色く立ち枯れ、墓石には落ち葉と汚れがへばりついている。
 教師だった総一郎は教え子だった彩音と在学中に結婚するなど無茶をしたために、各々の両親から勘当処分を受けた。
 だから両親の死後、和輝は遺産や周囲の目などで親戚中をたらい回しにされることとなり、その際受けた冷遇も和輝が心を閉ざす原因になったのだった。
 誰にも省みられていない墓は寂しげに見え、和輝は今まで来なかった無沙汰を詫びながら早速掃除を始めた。パートナーたちも自然に和輝の掃除を手伝ってくれる。
「ごしごしごしごし、キレイになーれー♪」
「あまり力を出し過ぎるなよ」
 サイコキネシスを使い、たわしで墓石をこするアニスに和輝は注意した。
「気をつけてるよー」
 手を使うと水が冷たいからと、アニスは笑った。
 冬の水は冷たいを通り越して痛いけれど、和輝は長年放置してしまっていた申し訳なさと、ちゃんと自分の手で掃除をしたいから、その切れるような痛みに耐えて、黙々と墓石を磨いた。
 墓石の掃除は和輝とアニスに任せ、スノー・クライム(すのー・くらいむ)は周囲を掃き清めたり草むしりをしたりする。この地は和輝とアニスが出会った場所……そう思うと2人だけの思い出にちょっと妬けたりもするけれど。
(2人が出会わなければ、私が和輝と会うことも無かったのよね)
 だからアニスには感謝しなければと、スノーは思うのだった。
 
 掃除が終わると、和輝はアニスとスノーに水やゴミの始末を頼んだ。
 2人が行ってしまい墓の前で1人になると、和輝は墓に眠る両親に向かって独り言のように言葉を掛けた。
「長い間、来れなくて……ごめん。凄く心配させたかもしれないけど、俺は元気でやってるよ」
 まあ、今よりもっと子供だった頃を知ってる2人からすれば、嘘のように聞こえるかも知れないけどね、と和輝は苦笑する。
 優しい両親に愛され育まれていた頃の和輝は、年齢よりもっと子供だっただろうから。
「俺が今こうしていられるのは、さっきまでいた皆のお陰なんだ……今はまだ恥ずかしくてお礼を伝えられてないけど、凄く感謝してる。戻ってきたら紹介するよ」
 父母の面影を浮かべながら和輝は墓に手を合わせた。
 
「ただいまー。あれ、和輝1人?」
 戻ってきたアニスがきょろきょろと辺りを見回した。
「当たり前だろう」
 ここには自分たちしかいないのだからと言う和輝に、アニスはまだ納得しかねる様子で首を傾げた。
「戻ってくる時に和輝の傍に誰かいたような気がするんだけど……気のせいかな?」
 和輝の背を包み込むようにしていた人影が見えたと思ったのだけれど……、
「まあ、いっか♪」
 細かいことは気にしない、とアニスは片づけた。
「これがアニス。俺が大陸に渡るきっかけになった最初のパートナーだ。こっちがスノー。魔鎧……といって分かるかな」
 和輝はパートナーを両親に紹介すると、改めて皆で墓に手を合わせた。
「ニホンでは静かに手を合わせて、心で語るのよね?」
 スノーは和輝を真似て手を合わせ、頭を垂れる。
(危なっかしいところがある彼は、私が――いいえ、私たちが必ず護っていきます……)
 お参りする2人を見て、アニスも手を合わせる。
「えとえと、心で和輝の両親に挨拶すればいいんだよね♪」
 声に出さないように、とアニスは墓に語りかける。
(皆で一緒に和輝と幸せになるので、見ててくださいね♪)
 これで完璧、と思ったけれど、すぐに和輝の呆れた声がする。
「アニス、声に出さないように語りかけるのは良いけど……精神感応を使ったら俺に丸聞こえだぞ」
「って……あーっ!」
 慌てるアニスを眺めつつ、和輝は苦笑を漏らす。
「――まったく――」
 その後に続く想いは、口に出さぬまま。