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地球に帰らせていただきますっ! ~5~

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地球に帰らせていただきますっ! ~5~

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 ■ 隠れ家から大島観光へ ■



 ティナ・ファインタック(てぃな・ふぁいんたっく)の隠れ家が伊豆大島にあると聞き、及川 翠(おいかわ・みどり)は目を輝かせた。
「隠れ家ってことは……秘密基地なの?」
「確かに実験とかはしてたけど、普通の隠れ家よ?」
 ティナはそう答えたけれど、翠の頭はすっかり謎の秘密基地への興味でいっぱいになっている。
「魔女さんの秘密基地だし、色んな仕掛けとかあるのかな?」
「し、仕掛け? いえ、そんなもの期待されても困るんだけど……」
 どうも翠の考えているのは、ティナの持つ隠れ家とはかなりイメージが隔たっているらしい。かといって、どんなところ、と口で説明するのも難しい。
「そこはまだ残ってるの?」
「えぇ、まだあると思うけど……」
「だったら行ってみたいの!」
 大乗り気の翠に、ティナはまあいいかと頷いた。実際に行ってみれば、どんなところなのかは一目瞭然だろうから。
「う〜ん、それじゃあみんなで行ってみようか。ちょうど夏休み中だしね」
「やった〜! 楽しみなの」
 秘密基地に行けると聞いて、翠は大喜びだ。
 スノゥ・ホワイトノート(すのぅ・ほわいとのーと)は隠れ家を知っているから、懐かしそうな顔になる。
「隠れ家ですかぁ〜。昔に跳んだ時以来ですねぇ〜。そのころのまんまなんでしょうかぁ〜?」
「そのままになってるはずよ」
 ティナの答えに嫌な予感がして、ミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)は聞いてみる。
「それって……もしかしなくても最初に掃除しないとまずいんじゃ……?」
「間違いなくそうですねぇ〜。結構広いから大変ですぅ〜」
 隠れ家に入っての第一歩は埃を払うところから始まりそうですねと、スノゥは微笑んだ。


 その話が出てからほどなく、4人は地球へと旅立った。
「お姉ちゃん、伊豆大島って……どこ?」
 今更ながらに質問する翠に、ミリアは確か、と記憶を探る。
「伊豆半島の南海上、よね?」
「東京の竹芝桟橋からなら、高速船で2時間弱ってところね。遊びに行くには良い距離よ」
 隠れ家の家主であるティナは、皆を先導して大島に渡った。

 大島に到着後、まずは真っ直ぐに隠れ家に向かう。
「あれがそうよ」
 港からしばらく行ったところでティナが指さしたのは、茅葺き屋根の古民家だった。
 外からは大きく見えないけれど、入ってみると中は広い。
「1階は4部屋。ダイングキッチンや客間、お風呂やトイレとかの生活に必要な部屋があるわ。地下1階は魔道書とかが詰まっている書庫と、寝室。地下2階は実験室になってるの」
「2階がある! 上がってもいい?」
 言いながらもう階段を上がっている翠の興奮ぶりに笑いながら、ティナはどうぞと答える。
「といっても、今は何もいないんだけど。昔はここで犬や猫、うさぎを飼っていたのよ」
「わぁ、広いのー!」
 2階はワンフロアになっている所為で、余計に広々として感じられる。
「今は犬も猫もいないのね」
 翠の後について2階を覗き込んだミリアが、幾分残念そうに言った。
 世話をする人がいない隠れ家だから仕方がない、と思いつつも、やはりもふもふが恋しい。観光のときには是非にも島の犬猫と触れ合おうと、ミリアは心に誓った。

 荷物を置いて、隠れ家を軽く掃除した後、ティナは皆を大島観光へと連れ出した。
 まず向かったのは、三原山だ。
 大島の中心に位置するこの山には、火口の展望台までハイキングルートが整備されている。
 直径400mの火口の周りをぐるりとお鉢巡りした後、三原神社へ。
 活火山だけあって溶岩の跡も生々しい。その先に見えてくる三原神社は、大噴火の際にも焼け残った厄よけの神社なのだと、看板に書かれていた。何でも、溶岩はこの神社の直前で方向を変え、両側に避けるように流れていったのだという。
 山を下りると、今度は大島の外周にそって観光してゆく。
 ……と言うと、スムーズな観光のようだけれど、実際は翠が興味の赴くままに突進し、島の犬猫を見るたびミリアとティナが犬猫に誘われるようにそっちに行ってしまい、でかなり脱線しまくりだ。
「椿の時季だと、椿トンネルとか、椿花ガーデンとか見られて良かったんだけどね」
 あの風景を見せてあげたかったと、ティナは残念がった。
「そういえば、大島椿って聞いたことあるわ。今は何も見られないの?」
「ちょうど花の無い時季だから。あ、でもリス村はこの時季でもやってるはずよ」
「リス村?」
 ミリアの脳裏に、リスのもふもふ尻尾がぱっと浮かぶ。
「放し飼い広場で、ヒマワリの種をリスにあげたりできるし、あとうさぎの森があって、行くとうさぎやアヒルが寄って……」
「すぐに行きましょう」
「ミリア、そっちじゃないわよ。まずタクシーを拾って……あら、翠はどこ?」
 ティナは見回したけれど、その目がのんびりと寝そべっている猫に留まり、意識はすぐにそちらに逸れてしまう。
「いつになったら到着できるんでしょうねぇ〜」
 この中では一番落ち着いているスノゥは、くすっと笑う。急ぎの観光ではないから良いのだけれど、このままだと島を一巡りするのにどれくらいかかるのやら。とりあえずは翠を呼んで来ようと、スノゥはさっき翠がふらふらと入っていったのを見た土産物屋へと向かったのだった。