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【マスター合同シナリオ】百合園女学院合同学園祭!

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【マスター合同シナリオ】百合園女学院合同学園祭!
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リアクション


『学園祭応援ダンス』

「はっ、来る……!」
 ダンスを終えたミルミ・ルリマーレン(みるみ・るりまーれん)は、気配を感じ取って空を見上げた。
「ミルミちゃーーーんっ!」
 両手を広げて舞い降り、ダイビングするかのようにミルミに飛びついたのは、牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)である。
「むぎゅー!」
 むぎゅぅっと抱きしめられ、ミルミは「んきゅっ」と声を上げた。
「かわいいちょぉかわいい」
「あううあうう」
「チアチアしててかわいい」
 いつものように、いや、久しぶりにアルコリアはぎゅーっとぎゅーっとミルミを抱きしめる。
 いろいろあって。主にミルミが表舞台に出てこなかったからだけど、アルコリアはしばらく『ミルミ』を補給することができずにいたのだ。
「ここが、涅槃……っ!」
「説明しよう。ステキないけまさんはミルミ分が不足すると死ぬのである。だから、いろいろ仕方ないのである」
 どこかから声が降ってきた。
「みーるみちゃんーみるみちゃん」
 うーん、うーん、ううーんと、アルコリアはミルミを体内に取り込むかのように、抱きしめつくす。
「アルちゃん、ミルミ潰れちゃうよぉ〜」
 そう言いながらも、ミルミも決して嫌そうではない。
 甘えるの大好き、抱きしめてもらうの大好きだから。苦しくても凄く嬉しい。
「ミルミちゃーん、かわいいかわいいミルミちゃーん」
 抱きしめて、すりすりして、手を掴んで指をはむはむしたり。
「み、み、みみみーみーるみちゃんー」
 アルコリアが唇でミルミのほっぺを噛んで、むにーむにーとすると、ミルミは「はうんっ」と小さな声を上げた。
「アルちゃん、アルちゃん、ミルミどうにかなっちゃいそうだよぉ」
「みるみちゃんのおみみ。おみみみみみにみみー」
 耳もはむはむ。
 はむはむはむはむはむはむ……。
 ………。
 ……。
 …。
「わたしは しょうきに もどった!」
 突如がばっとアルコリアは起き上がり、正気に戻った宣言をする。
 でも片腕でミルミを抱きしめたまま。
 無論、周囲の皆は唖然とアルコリアを見ており、誰も彼女の言葉は信じていない。
「あれ? ミルミちゃんいつの間に私の腕の中に……」
 アルコリアの腕の中で、ミルミはぐったりしていた。でも、顔は幸せそうだった。
「それに、ライナちゃんにみなさん……テレポート? 気配が全くなかったです……スゴイ」
 辺りは静まり返っている。
 真面目な顔をして言うアルコリアに、つっこみを入れるものは誰もいなかった。
 多少は冷静につっこんでくれるはずの、パートナーのシーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)は、死んでもチアチアするものかと、ここに来る前に全力で逃げ出してしまっている。
「あ、あのね……」
 小さな小さなチアガールの衣装をまとったライナ・クラッキル(らいな・くらっきる)が頑張って声をあげた。
「私達、おうえんダンスをしてるの。ちょっときゅうけいしたら、またやるんだよ」
「なるほど、チアチアな出し物してるんですね、手伝いましょう」
 そしてアルコリアは腕の中のミルミをひと撫でして問う。
「ミルミちゃん、予備の衣装あったら貸してー……むしろ、今来てるのでも構いませんが」
「ミルミのじゃ、サイズが合わないよ〜」
「問題ありません」
 ぽんっと、アルコリアはちぎのたくらみで『かわいいアルちゃん15歳モード(レア)』に変身する。
「おおーっ」
「わ〜っ。ミルミおねぇちゃんとおなじくらいのしんちょうになったね!」
 ライナが目を輝かせた。
「アルちゃん、かわいいっ。それじゃ、更衣室に着替えに行こう〜」
 復活したミルミがアルコリアの腕を掴み。
「おきがえするばしょ、こっちだよ」
 羽を羽ばたかせて、ライナはアルコリアを更衣室へ案内する。
 ……その後で。
「ええと、私達も休憩に行きましょう。彼女、落ち着いたみたいだから、もう大丈夫……なはずよ、多分」
 リーダーの風見瑠奈(かざみ るな)は手を叩いて、アルコリアの奇行に驚いているメンバー達を、休憩所へと誘った。

「……って鈴子さん!?」
 外の風に当たりに、野外特設ステージを訪れた雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)は、そこに桜谷 鈴子(さくらたに・すずこ)の姿を見て、目を丸くした。
 鈴子は瑠奈と共に、庭園の方へと歩いている。
 リナリエッタは急いで駆け寄り、だけど平常心を装い鈴子、そして瑠奈に声をかける。
「ごきげんよう瑠奈様、鈴子様。白百合団OG会、白ゆる会のお茶会セッティング班のリナリエッタですわ。おほほ」
「わざとらしい笑い方ですわ、リナさん」
 くすくす鈴子が笑みを浮かべる。
「そんなことはございませんことよ」
 そんなリナリエッタの喋り方に、瑠奈の顔にも笑みが浮かぶ。
「この後、学園祭の打ち上げを考えていらっしゃるのなら是非私にご相談を! 素敵な場所と男s…お友達と過ごせるよう場所を探してまいりますわ!」
「グループのメンバーだけじゃなくて、他校の方や、男子とも一緒に行えたら楽しそうね」
 瑠奈はリナリエッタの提案に前向きな返事を返した。
「そうでしょう、後半のダンスも頑張ってね〜」
 そう声をかけて瑠奈に手を振ると、リナリエッタは鈴子に近づいてひっぱった。
「聞いたんだけどさ、風見さんの願いって、男性受け入れって本当?」
 そしてこっそりと鈴子に話しかける。
「短大と専攻科のみで、ですわね」
「やっぱりそうなんだ。私としては大歓迎なんだけどねぇ、一体全体どういう風の吹き回しなのかしら」
「詳しい話は聞いていませんわ。ごく最近そう思うようになったのでしょうか。彼女はそんなこと、一度も私や生徒会メンバー、ラズィーヤ様にも言ったことがありませんし」
「……私とはこう、違う動機なのかしらね。男性の力を借りて白百合団の強化を計りたいとか硬い感じ?」
 決して重くはなく、軽い調子で2人は話しをしていく。
「多分、深くは考えていないのだと思います。だって、彼女達の出し物は応援ダンスですもの。学園祭に訪れている人々、出し物を行っている人々を応援するためのダンス。賞をとるつもりなんてないのだと思いますわ」
「なるほど……」
「願いは、素直な自分の気持ちなのかもしれませんけれどね」
「うーん、うふふ。女だけの生活に飽きたのかしらね」
 微笑み合いながら、ベンチに座ってジュースを販売している屋台の方に目を向ける。
 チアガールの衣装をまとった少女達が、飲み物を購入して、微笑み合いながら談笑をしていた。
「あ、そういえば……鈴子さん。チアリーディングのお手伝いなのに、衣装は着ていないのねぇ」
 リナリエッタが鈴子に目を向ける。
 彼女は清楚なワンピースを纏っていた。
「折角のお祭りなんだから、思い切って一緒に衣装借りてOGとして宣伝に行きましょうよぉ」
 そうリナリエッタが言うと、鈴子はうふふふと声を上げて笑う。
「私は遠慮いたしますわ。リナリエッタさんが着替えるというのでしたら、応援させていただきます」
「えー。鈴子さんと一緒なら考えるんだけどぉ」
「それじゃ、私に似合う衣装で、いつか一緒に踊りを披露しましょうか。……日本舞踊ですが」
「それは覚えるの大変そう……」
 青空の下で、賑やかな声が聞こえる中。
 後輩達を見守りながら、2人はのんびり談笑を続けるのだった。

 休憩の後、再び白百合団愛乙女組の応援ダンスが、ステージで披露される。
 ステージにはマイクも設置されており、時には応援歌を歌いながら、メンバー達は明るい笑顔を絶やさずに、元気に激しく踊っていく。
「次の曲では、よろしくお願いします」
 出し物『演劇団』のリーダーの樹月 刀真(きづき・とうま)が、パートナー達と共に白百合団愛乙女組と合流をする。
「ええ、よろしくお願いいたします。次はアップテンポな曲です。ついてきてくださいね!」
 瑠奈が、刀真達に笑顔を向けた。
「勿論」
 漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)がそう答えて頷いた。
「私は演奏で協力させていただきますね」
 リーブラの衣装を纏い、白虎を連れた封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)に皆の注目が集まる。
「触れたいのなら、どうぞ? 大人しいですし、可愛いですよ」
 そう言い、白花は白虎を撫でて、もふもふする。
 ダンスが始まるより前に、白虎を愛でる可愛らしい彼女の姿が、人々に癒しを与えていく。
「激しい曲だけではなくて、恋人達の為の雰囲気の良い演奏もできますから、カフェなどでも気軽にお声がけ下さい」
 微笑むと、白花は鯨ひげのヴァイオリンを構えた。
 始まった白百合団愛乙女組の演奏に合わせて、曲を弾きながら。
 後方の中央に立ち、指揮をとっている瑠奈に、大地の祝福を使った。
 彼女だけではなく、疲れの見える娘にも、観客にも、使っていく。
「私も、皆さんを応援させていただきます」
 皆が元気になれるように心を籠めて白花はヴァイオリンを奏でる。
 刀真と月夜は、演奏と白花のヴァイオリンに合せて、軽快なステップを踏み、剣の舞を披露した。
「楽しい音楽、元気溌剌にゃん。にゃーにゃにゃん♪」
 ミルミとお揃いの衣装をまとったアルコリアは、超感覚で黒猫耳と黒猫のしっぽを生やして、デストロイモードに突入――とはいえ、器物を破損したりはせず、にゃんにゃんぴこぴこふりふりにゃーにゃー踊って、人々を楽しませていく。
「うふふ、あはは、くすぐったいよ、アルちゃん」
 しっぽでくすぐられたミルミは笑い声をあげた。
「ふふふ、みんな、えがおになれなれ〜♪」
 ライナは羽根をつかって、時には飛びながら皆に笑顔を振りまいていた。
 集った人々も、通りかかった人々の顔にも、元気と微笑が溢れていく。

 ステージでの演奏や、ダンスが終わった後の事――。
 月夜は踊りを通じて打ち解けた白百合団員に軽い口調で聞いてみた。
「風見瑠奈って、どんな団長?」
「風見さんは、可愛いです」
「うん、今までの団長と違って、身近なカンジ」
 白百合団員からはそんな返事が返ってきた。
「神楽崎先輩とか、怖かったもんね」
「あ、神楽崎先輩のことは勿論凄く尊敬してるけど! 桜谷先輩も大好きだけれど、先生みたいで、ちょっと遠い感じがしたの」
「風見さん……というか、瑠奈ちゃんは、クラスの学級委員みたいな感じかなっ」
 彼女達は、寮でゴキブリが出た時、瑠奈が悲鳴を上げて抱きついてきたことや、虚勢を張って掃除の指揮をとるも、顔色は真っ青だったこととか。
 瑠奈の普段の姿を語ってくれた。
「そっか、うん、そういう関係もいいよね」
 月夜は心の中でほっとする。
 瑠奈は団員達に好かれてはいるようだ。

 刀真は瑠奈自身と、ウサギの着ぐるみを着たまま話をしていた。
「君の願いは君が抱える悩みや不安から出たのかな?」
「……え?」
 瑠奈の願いは、百合園の短大と専攻科で男子の受け入れも行って欲しいというものだった。
「その願いは……百合園の生徒の反感を買う可能性があるから」
「……!!」
 瑠奈ははっとしたように、目を見開いた。
「そう、ね……ごめんなさい。どうかしてたわ」
 瑠奈は視線を落として、謝罪をした。
「白百合団の団長になって、色々と知ったことがあって。普通に男子が通えたらいいのにって思うようになったの。それから……」
 刀真をちらりと見て、瑠奈はまた俯く。
「短大、専攻科では、男性もいた方が、女生徒にとっても良いと思ったから。
 私達は女性だけの社会で生きていくわけじゃない。寮生で、百合園から出ようとしない娘達は、学ばなければならないことを、学びきれずに、社会に出ることになるから。何も知らずに……恋も知らずに、お見合いして、嫁ぐなんて……引き継ぐべき風習じゃない。続けていきたい日本文化じゃない、と思うの。
 こういう機会に、皆からの投票という形で皆の考えも知ることが出来たらとも、思って」
 でも、自分の立場がわかってなかったと、瑠奈はもう一度刀真に謝罪した。
「こうして、誰かに教えてもらわないと……ダメなんだな、私」
 悲しそうに笑う瑠奈に、刀真は手を伸ばした。
「無理をせず、何かあれば俺を頼れ」
 そう言って、想いを込めて彼女の頭を撫でる。

 それから、刀真は彼女の為だけに剣の舞を披露した。
「満月のうさぎさん」
 瑠奈はそんな風に呟きながら、刀真を見ていた。
 悲しげな顔を微笑みに変えて。

 満月のうさぎさん。
 届かない場所にいるあなたは。
 淡い光で照らしてくれる。
 道に迷いそうな夜も。
 躓きそうな夜も。
 優しい光で、助けてくれる。