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デスティニーパレードinニルヴァーナ!

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デスティニーパレードinニルヴァーナ!
デスティニーパレードinニルヴァーナ! デスティニーパレードinニルヴァーナ!

リアクション

「ひい、ふう、みい――」
 入り口に程近いモール。
 綺麗に陳列されたぬいぐるみを前に、曖浜 瑠樹(あいはま・りゅうき)は入念にチェックを繰り返していた。
「とお、っと。ちゃんと揃ってるねぇ。たいむちゃん、こっちは大丈夫だよー」
「瑠樹さん、ありがとう」
 笑顔と共に奥から現れた空京 たいむちゃん(くうきょう・たいむちゃん)の手には、次に並べるお菓子のダンボール。
「ああ、力仕事はオレがやるよー」
 サッと荷物を持ち上げる。
「ありがとうございます」
「そんなに何度もお礼言わなくてもいいよー? オレがやりたいからやってるだけだしねぇ」
「そーです。私たちはお手伝いに来たんですから」
 陳列に加わっていたマティエ・エニュール(まてぃえ・えにゅーる)も同じ思いだった。
「お礼を言う相手は、和んでくれたお客様にしましょう。それだけで私たちも嬉しいですから」
「マティエさん……」
 マティエの言葉に感銘を受けたたいむちゃん。
「でも、お礼の気持ちは大切だわ。だから、最後にはお礼を言わせてね?」
「もちろんです」
 笑顔で頷くと、マティエは思い出しように話し始める。
「そーだ、これを用意したんです」
 取り出したのは魔女の三角帽と短めの黒マント。
「一緒に仮装しましょー」
 と言うと、マティエは帽子を被り、ヒラリッとマントを羽織った。
「これで皆お揃いです」
「そういえば、二人とも服装が私と似ている気が……」
「そーです。同じ場所で売り子をするなら、制服みたいでいーでしょ?」
 花柄を基調にし、胸元に付いた時計のアプリコット。それに付け加え、短めのピンと立ったウサギ耳。
「わざわざ合わせてくれたのね。ありが――」
 慌てて口に手をやり言葉を止め、
「これは最後まで取っておくのだったわ」
 くすっと笑うたいむちゃん。
「それじゃ、私も仮装するわ」
「はい。もう一組はりゅーきに……」
 言葉尻をすぼめるマティエが視線を向け見たもの。
「和むねぇ……質も良いし。オレが客だったなら、ぜひとも買いたいって思うなぁ」
 それはぬいぐるみを前にして和んでいる相棒だった。
「……りゅーき……真面目に陳列してくださいーっ!」
「あー、マティエ。つい、ねぇ」
「そりゃ私だって可愛いと思いますし、欲しいと思います! わかります、わかりますけど! でも今はお手伝い中です。それに棚の上の方はりゅーきしか届かないですからお願いしますよ」
「ごめんごめん」
「はあ……」
 呆れ交じりの嘆息に対して、
「まあまあ。私の用意したものがこんなにも喜んでくれるなんて嬉しい。今から期待で胸が一杯だわ」
 たいむちゃんは相好を崩してそう言った。
「よし、それじゃ、続きやるよー」
「私も手の届く範囲で精一杯頑張ります!」
 その言葉は二人の意欲を更に向上させ、空気さえも和やかにした。
 この分だと開園後は買い物だけではなく、和みに来るお客さんも多いことだろう。

――――

 辺りに重工音が響いていた。
「オーライ! オーライ! ……ストップ!」
 一際大きな音。
「ふう、これで観覧車も完了だ」
 資材を運んでいたシャドウ・ウルフのコックピットで夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)は息を吐いた。
 ある程度完成したものを運ぶだけとはいえ、誤差無く設置するには微調整など気を使う。
「おい! 出来栄えはどうだ?」
 下で誘導していた草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)へと声を掛ける。
「うむ、問題ないのじゃ」
 元々あったものよりも一回り以上大きな観覧車。
「やっぱりこれくらい大きくなけりゃ話にならんな」
「そうね、メインの乗り物がショボクては物足りんからのぅ」
 観覧車の隣にはジェットコースター。それも甚五郎たちが設置したものだ。
「残りの作業は何だ?」
「まだ置いただけじゃし、接合とその後の試運転じゃな」
「そうか、よし! ブリジット!」
「はい、何でしょう?」
 呼ばれて来たブリジット・コイル(ぶりじっと・こいる)に用件を与える。
「設置した機材の溶接を頼むぜ」
「わかりました」
 一礼すると、ブリジットは単身で接合部へと向かった。
「これが終わればいよいよだな」
 甚五郎は満足げに頷くと、設計者阿部 勇(あべ・いさむ)に声を掛ける。
「強度、安全性は大丈夫なんだろうな?」
「僕の計算によりますと、強度や安全性に問題はありません。ただし、確認のために何度か試乗はしてもらうことになりますが」
「わかった」
「それと、夜のパレードに備えてライトアップ用イルミネーションの設置も行いたいと思います。それに際し、シャドウ・ウルフに頭から布を被せ、上にカボチャの飾りをつけてジャック・オ・ランタン風に仕上げてみようと思います」
「それはいいな。おぬしに任せる」
「ありがとうございます」
 勇も一礼し、新たな設計へと没頭し始める。
「それで、だ」
「ん、どうした?」
 自身たちの設置したアトラクションを感慨深げに見ていた甚五郎へ、羽純は少しもじもじしながら聞き出す。
「その、試運転とかするのじゃろう? わらわも乗ってもいいかのぅ?」
 どうやらワクワクが治まらなかったらしい。
「ほれ、そうすれば感想とか意見を触れ込みに利用できると思うのじゃ。で……どうかのぅ?」
 それは年相応の反応だろう。故に甚五郎も反対する理由などない。
「構わんぞ」
「あ、ありがとうなのじゃ!」
 パッと花が咲く。
「ブリジットよ! さっさと接合を終わらせるのじゃ!」
 無邪気さと、好奇心と、楽しみで満たされた声。それを受けたブリジットは、
「何と言うか、この、巨大施設を目の当たりしているとその……自爆の許可を貰いたくなるのですが……」
「な、なんじゃと!?」
 プログラムの所為で自爆衝動に駆られていた。
「よすのじゃ! それだけは許さんのじゃ! 甚五郎、そなたも何か言ってやるのじゃ!」
「ブリジットよ! その行為は施設だけでなく夢までは買い好く行為だ! おぬしが自爆することはわしが許さぬ!」
「……まあ、そうですよね。わかってましたけど……」
 元々自爆用に作られた機晶姫。その役割を否定され、存在意義に悩みを抱えてしまうブリジット。
「きっちり仕事をこなします……」
 見るからに落胆が隠せていない。
 そこに勇がある提案を持ちかけた。
「でしたら、僕に良い案があります」
「それは何だ?」
「そうですね……」一度溜めると、「パレードの時のお楽しみといことで。それよりも、試運転の準備をしましょう」
 含みを持たせ、話を逸らす。
「まあ、おぬしを信じるぜ」
「ありがとうございます。では羽純、乗車場に向かってください」
「心得た!」

 何度か試運転を重ねた後。
「面白かったのじゃ! これなら文句なしに楽しめるはずなのだ!」
 羽純の興奮と共に、オープンゲートが開かれた。