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2023年ジューンブライド

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 想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)は、携帯から雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)に電話を掛けた。夢悠は、雅羅を模擬結婚式に誘うつもりだった。
「--もしもし?」
 夢悠は、受話口の向こうから聞こえてきた雅羅の声を聞いて、ふと思い出すことがあった。
 それは、夢悠が雅羅に再度告白した時、「将来と言うんじゃなくて、デートとかを続けられる間で良いんだ」と雅羅に言ったこと。
「えっと……最近どう?」
「いつも通りよ。まあ、いつも通りじゃなくて、災難に遭わなくなればいいんだけど」
 雅羅とたわいもない言葉を二言三言交わしながら、夢悠は、模擬とはいえ結婚式へ雅羅を誘おうとしていることに対して口の中が苦くなっていた。
 このままじゃ、本題を切り出せない。そう思って、夢悠はひと呼吸置いた。
「雅羅さん、あのさ--」
 もう一回深呼吸し、夢悠は口を開く。
「オレ、雅羅さんへの告白の返事が聞きたいんだ。……突然ごめんね。でも、オレ、どうしても今の雅羅さんの気持ちが、知りたくて……」
 夢悠の身を、不安が包んでいく。--そして。

「……ちょっと頼りないけど。わたしを守る、どんな時でも駆けつけてくれる騎兵隊になりなさいよね」

「--えっ?」
 夢悠は、雅羅からの予想外の言葉に戸惑った。
「それって……」
「その言葉のまま、受け取ってちょうだい」
 夢悠は、雅羅の言葉の意味を咀嚼しようとする。けれど、頭の中がこんがらがったように、上手くまとまらない。
「雅羅さん、また今度、どこか楽しいところに遊びに行こう。じゃあ、また」
 そのまま夢悠は模擬結婚式の話題を切り出せず、通話を切ってしまった。
『わたしを守る、どんな時でも駆けつけてくれる騎兵隊になりなさい』。それって--。

 夢悠たちの関係に変化が出る日は、そう遠くないようだった。