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お月見の祭り

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お月見の祭り
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 漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)玉藻 前(たまもの・まえ)封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)は、それぞれ月を見上げながら物思いにふけっていた。
 ……パートナーである樹月 刀真(きづき・とうま)に、恋人ができた。半年という期間限定であっても、そのことによって、刀真と月夜たちとの関わり方は、確かに変わったのだ。
(玉ちゃんや白花がいて、刀真もいたらきっと私は嬉しい。でも刀真は居ない。……恋人に遠慮して、今日、私たちと一緒には来なかった。何となくそうなるかなって思っていたから寂しくはないの。……寂しくないモン)
 辛そうな表情でお餅をモグモグと食べ続ける月夜を、同じように浮かない表情で白花はじっと見つめていた。
(月夜さん寂しそうです、それに悩んでいます……私も同じですけれど)
 白花は月夜から視線を逸らして、地面を見つめた。
(今までとは違う刀真さんとの関係を考える、そんな事思いもしませんでした。でも、刀真さんが変わろうと思っているのなら、私たちも変わらないといけませんね。そうして考えて、頑張って……私たちの心も成長する必要がありますよね)
 一方の月夜も、自分自身の心と向き合う。
(刀真達は互いの成長の為にって半年の期間限定で付き合う事になったけれど、その間私達は何も変わらないままで良いのかな? 刀真が成長しようとしているんだし私も成長しないと駄目だと思う。……でも、どうすれば良いんだろう?)
 月夜は、ふと、刀真の彼女が月夜たちに言った言葉を思い出した。

『漆髪さんのことも、玉藻さんのことも、白花さんのもとも……そして、多分私のことも彼は好きって思ってくれていて、欲しいって思ってる。でも、それって対等じゃない。本当にそれでいいの?』
『私も彼の側にいたいって心から思う。皆と一緒に愛してもらえたら……とも思ってしまう。だけど、私は一人の人間として自立したい。好きな人と、対等に付き合っていきたい!』

 月夜は餅を食べる手を止めて、顔を上げた。
(刀真と対等になる、自立する、先ずはそれを目指そう。その為にどうすれば良いのかを考えよう)
 よし、と拳を握りしめた月夜の背後から、ぬっと手が伸びた。
「ってにゃーーー!? 玉ちゃんいきなり何するの!」
 前に後ろから胸を揉まれた月夜は、思わず叫んだ。
「叫ぶことはないであろう。……だが、何かしら結論は出たようだな」 
「……うん、多分」
「我は月夜のように刀真と対等であることを意識はしていない、我は我が独りにならなければ良いのだからな」
 前は少し表情の晴れた月夜を見て、うんうんと一人頷いた。
「そして、刀真は我がどのような事をしても我を独りにしない。だから、我は刀真の周りにいる者達で気に入ったのが居ればちょっかいを出して楽しむ。それだけなのだよ」
 刀真に恋人ができても別に構わない、むしろちょっかいを出す相手が増えて楽しい、と考えている前にとっては、今元気のない月夜にちょっかいを出すのが最善の方法だった。

「刀真さんは私たちを大切に想ってくれます。ただそれは私たちが契約をしている、という事も関係していますね。刀真さんそれを強く意識していますから。だから、それも含め私達はお互いの関係を見つめ直し、これからを考えないといけません」
 白花は月夜と前を交互に見つめた。
「……もう一度、あの方とお話をしてみましょう。私達だけでは気づけない事に気づけるかもしれませんから」
 白花の言葉に、月夜は頷いた。
 これから何をすべきか、一筋の道が見えたような気がしたのは、月が優しく三人を照らしていたからだろうか。