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■ 起こりうる未来 ■
燃え尽きたわ……真っ白にね……
「うん、まだ締め切りまで一週間あるから何とかなるわね!」
祥子・リーブラ(さちこ・りーぶら)は、残り原稿枚数を確認してフフフと笑う。
本当は激ヤバなのだけど、締め切り一週間前の腐女子は皆そう言う。
それよりも、次のイベント合わせで思いついてしまったことがあるのだ。
次の新刊は変熊本……。だってイベントにはインパクトも大事じゃない?
「等身大パネル作ったら、ファンは大喜びだと思うのよ!」
勿論、既に手は作業している。ああ、どうして原稿を描く時より手がスムーズに動くのかしら!
まだ原稿は18ページも残っているけれど。
「とはいえ……肌部分が多すぎだわ……原稿、原寸より少し縮小するくらいがやっぱいいし……
くっ、しかし私は妥協しないわ! 彼は肌(と股間)で魅せてナンボよ!」
まだ原稿が14ページも残ってるけど……極悪入稿で……何とか……。
ここから一日5ページ仕上げて行けば……何とか……って、締め切り前の腐女子は皆同じ夢見る。
「やったわ仕上がったわ! もしもしパネル屋さん!? 等身大1枚お願いしたいんですけど!
えっ、納期一日!? やったー!」
やっ……た……?
やり遂げた祥子は、膝から崩れ落ちた。
やってない。だって原稿まだ12ページも残ってる。
極道入稿日は、既に昨日。
「う……うん、まだ……イベント当日には間に合うから……コピー本で……ペン入れてる時間はないから……鉛筆で……。
でも何描こう……」
うん、締め切りに間に合わなかった腐女子は、皆そう言う。
何かもう、頭の中が真っ白で、ネタも出てこないし。
かくしてイベント当日。
インパクトだけで新刊の無いブースでは、売り子の必要も無くただ抜け殻の祥子に、買い子さん達も声を掛けるのを躊躇っていた。
が、猛者が一人。
「あ、あの……元気出してください〜。
そんな時もありますし、私も今回はヤバかったもん」
メインジャンルとは違うけれど、変熊新刊をチェックしに来た遠藤 寿子(えんどう・ひさこ)から、これ、ウチの新刊です、と差し出された薄い本は輝いて見えた。
えへ、と微笑むその目の下には隈。ぶわっと祥子は涙した。
「ううっ、落としてごめん、新刊ありがとう〜」
「次、楽しみにしてますね〜! あ、このパネル素敵ですねっ」
そうそれは、イベント会場の何処かで毎回必ず繰り広げられている光景……。
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