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消えゆく花のように

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消えゆく花のように
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●Epilogue

 デルタの敗北によってすべての構造が消えた。
 鍾乳洞のひとつと思われていた場所は、入り江にしかすぎなかった。
 空が見えた。
 いつの間にか、空は明るく晴れ渡っている。
 朝霧垂はまぶしそうな顔をして空を見上げていた。
 小鳥遊美羽、パティ・ブラウアヒメル、七刀切がひとまとまりになって駆けてくる。
 クローラ・テレスコピウムとユマ・ユウヅキは、リュシュトマの戒めを解いているところだ。
 グラキエス・エンドロアにとってこの天候は厳しい。彼は状況を見つつ、日陰を探してそこで足を止めた。アウレウス・アルゲンテウスは沈黙を守っているが、魔鎧状態のまま、できるだけ日光や熱がグラキエスに届かないよう気を配っている。アウレウスの使命……主を守る……に終わりはないのだ。
 イオリ・ウルズアイは最初、ダリル・ガイザックに抱えられたデルタを見て警戒するような顔つきになったが、やがてほっとしたように溜息をついて、
「帰ろう。リーラが待ってる」
 と柊真司を見上げて言った。
 七枷陣はデルタを目にして呟いた。こうして改めてみると、ひどくちっぽけな少女だ。
「そいつが、『モノマネ劇団ぼっち』か」
 頭にくるところはある。一言いいたいところもある。だが……生きていてくれてよかったと思う気持ちも、ある。
「ははっ、言い得て妙だな」
 陣の言葉を聞いてシリウス・バイナリスタが笑った。カーネリアン・パークスは陣とシリウスの顔を交互に見比べて、
「そうか……ここは笑うところなのか」
 と、にこりともせず言った。
 セレンフィリティ・シャーレットは水着の上に、国軍制服をかけている。袖はまだ通していなかった。
 その眼前に、黙って立つ姿があった。
「あなたは……」
「クランジΜと申します」
 ミューはフレンディス・ティラに付き添われ、両手首を合わせて差し出している。
「拘束してくださいまし。その上で、裁きを受けますわ」
 このとき戦部小次郎は籠手型HCを起動させ、マップ機能をはじめとするほとんどが復調していることを確認していた。 
 ジェイコブ・バウアーはいち早く、フィリシア・バウアーに連絡を入れていた。
「済まなかった。もう用件は終わった。今日中には戻れると思う」
「お疲れ様」
 言いながらフィリシアは、お腹の我が子に呼びかけるのである。
 ――ほら、聞こえる? あなたのパパの声……とても強くて優しい人よ……。

 少し離れたところでは柚木桂輔とローラ・ブラウアヒメルが並んで立っているのだが、両者の間には微妙な距離があった。
「えーと……」
「うん」
「あのときは、無我夢中で口走ったように聞こえたと思うけど……」
 桂輔は実に言いにくそうに、それでも、ごまかさずに言ったのである。
「あの言葉……プロポーズ……本気だから」
「今日は色々大変だったから……」
 返事は今度でいい? と小声でローラは言った。さて、どうなることやら。

 アルクラント・ジェニアスはデルタが使っていたモニターを調べて、そこに記録された映像を見ていた。
 Υc、Τc、Οc、Ξc、ΟΞc……。
 ΠcとΡc。
 Ηc、それにΙc、Κc。
 そして、Φc……。
 ――デルタ、それに、ゼータか……君たちが創り出したものは、命だ。


 『消えゆく花のように』 了

 

担当マスターより

▼担当マスター

桂木京介

▼マスターコメント

 マスターの桂木京介です。

 ご参加ありがとうございました! こんなに余裕のないペースでありながら、高揚感や躍動感に満ちたアクション、練り込まれた戦略に驚くようなアクション、そして胸が熱くなるようなアクション……そんな素晴らしいアクションの数々をくださり、感謝しております。

 短いシナリオなのでサクッと終わらせるつもりが、意外と時間がかかったことをお詫びします。

 それでは、ご参加中の方とは次作『faraway / so close』でお目にかかりましょう!
 桂木京介でした。


―履歴―
 2014年10月3日:初稿
 2014年10月6日:個別コメント追加&誤字訂正など 第二稿