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四季の彩り・FINAL~ここから始まる物語~

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四季の彩り・FINAL~ここから始まる物語~

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 第10章

 2030年、年末。御神楽 陽太(みかぐら・ようた)御神楽 環菜(みかぐら・かんな)御神楽 陽菜の家で忘年会が開かれた。近所の一軒家に住んでいるエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)御神楽 舞花(みかぐら・まいか)もこの日は一つ屋根の下に集まる。
 その会に、ファーシーとイディア、フィアレフトは招待された。彼女達と陽太達は、家族ぐるみの付き合いを続けていた。御神楽邸の広い部屋に9人が揃い、陽太が飲み物のコップを持って挨拶をする。
「皆さん、今年もありがとうございました。俺は愛する環菜と2人で、大切な娘、暖かな家族、親しい友人と共に過ごす人生を本当に幸せだと思っています。来年もよろしくお願いします」
「うん、よろしくね! 今日は招待してくれてありがとう」
「ありがとうございます、陽太さん」
「ありがとー!」
 ファーシーとフィアレフト、イディアがお礼を言い、彼女達に笑顔を向けた陽太は「乾杯」と言った。
 グラスが当たる涼やかな音が室内に響き、忘年会は始まった。

「そういえば、ファーシーさんのお仕事は順調ですか?」
「うん、毎日楽しいわよ。常連のお客様とかもついてくれるようになったし……陽太さんは?」
「うちの鉄道事業も鋭意展開中です。忙しくてもノーンにお願いして、出張先からでも瞬時に帰宅できるんですよ。だから、夕食は家族揃って食べられますし」
 陽太とファーシーは仕事の話に花を咲かせる。その横では、イディアが箸を持ってやるき満々な声を上げていた。
「陽菜ちゃん、何食べたい? 私が取ってあげるよ!」
 テーブルの上には、陽太とノーン、舞花で準備し、味付けしたすき焼きがぐつぐつ煮えていた。イディアに聞かれた陽菜は、生卵を溶いた皿を自分の前に置いたまま、椅子の上から背伸びをするように鍋を覗く。それから、迷わずに「お肉!」と答えた。
「あと、ねぎと、しいたけがほしいな」
「陽菜ちゃん、ねぎ食べられるんだ! すごいねー、私はちょっと苦手なんだ」
 小学校3年生になるイディアは、1年生の陽菜に手慣れた仕草で食材を取り分けていく。母の料理が下手、という家庭的事情から、8歳にして調理用具には親しみがある。……それと、食べ物の好き嫌いは別だけれど。
「ママが、栄養が偏るからちゃんと食べなさいって」
「好き嫌いしないように言ったら、真面目に食べてくれるようになったのよ」
「最初は陽菜も、野菜苦手だったんですよね」
 はふはふしながらねぎを食べる陽菜の答えに、環菜と陽太がそう付け加える。イディアは自分の皿とフィアレフトの皿を見比べた。成長したイディアは、もう未来の自分と背丈も見た目も殆ど変わらない。区別する為に自分は髪を下ろしているけれど、一緒にいると、双子ちゃん? とよく言われる。そんなフィアレフトの皿に取られた食材は自分のと同じラインナップで、なんだかちょっとがっかりする。
「フィーちゃん……まだねぎ食べられないの? オトナなんだよね?」
「たっ……食べられるよ! ただ、ちょっとほら、あの真ん中のところが」
「言わなくてもわかるよ。私なんだから。オトナになっても、私……」
 フィアレフトは慌てて、鍋からねぎを取って食べ始めた。慌てすぎて、舌をやけどしそうな勢いだ。
「ちゃ、ちゃんと食べられるようになるからね! ねぎも、オクラも、マヨネーズも!」
 余談ではあるが、イディアは同一人物であるフィアレフトには少々生意気だ。赤子の頃には近付かれると泣いていたが、それが無意識のうちに別の形で出ているのだろう。
「陽菜ちゃん、イディアちゃん、学校は楽しい?」
 フィアレフトはまだ、少しテンパりつつ弁解している。そこで、ノーンが子供達2人に話しかけた。エリュシオン留学も終了し、ノーンは現在も蒼空学園に所属している。受ける授業は少なくなってきていたが、陽菜も通っている学園には頻繁に顔を出していた。
「うん、楽しいよ!」
「楽しい!」
 2人は即答して、学校でのあれこれをノーンに話し始めた。ファーシーや陽太達は、それを微笑ましい気分で見守っている。体育の時間にどんな遊びをしたかとか、学校全体の大掃除の時に男子達がふざけて大変だった、とか。
「勉強も楽しいよ! イディアちゃんにもよく教えてもらうの」
「うん、陽菜ちゃんはとっても成績がいいんだよ! 私は、算数と理科は得意なんだけど他はちょっと苦手なんだ」
 イディアは二学期の通知表の数字を思い出す。すると、ノーンが明るく彼女に言った。
「わたし、歌と演奏なら得意だから教えてあげるね!」
「うん、ノーンちゃん!」
「わたしもわたしも!」
「陽菜が蒼空学園に通うようになったのは非常に感慨深いですね」
 わいわいと学校の話に花を咲かせている子供達を見て、陽太はしみじみと言う。自分が学生として通っていた学校に子供達も通う。自然なことではあるが、少し不思議な気分にもなる。
「ええ。私達が思い出を沢山作った学校だものね。校長を辞めた頃は、もう学園に関わることはないものと思ったものだけど……今度はこうして、陽菜の親として関わるなんてね」
 環菜はふと、陽菜の授業参観に行った時の事を思い出す。緑茶を手に子供達を微笑ましく眺めながら、エリシアは言う。
「あの頃、パラミタに来るようせっついて正解でしたわ。陽太もそう思いますでしょ?」
「はい。パラミタに来て良かったです。そして蒼空学園を選んで……あの時、環菜と出会えて良かったと思います」
 だからこそ、今こうして家族に囲まれているのだから。
「この間、地球に行った時に祥一と栞に会いましたわよ。2人とも陽菜にもっと会いたくて仕方ないみたいですしお正月にこちらに来るそうですわ」
「エリシア、俺の実家に行ったんですか? 初耳ですよ……」
「ふと思いついて、立ち寄ってみただけですから。予定にはなかったのですわ」
「……後で、父さん達に電話しておきます」
 今のエリシアは気ままな生活を送っている。学生として依頼を受けたり、祓魔師の任務に赴いたり、ノーンや舞花の取り組みに助力したり。
 友人の多いノーンは、色んな所に毎日遊びに行っている。外国や地球でも、長距離テレポートを使って一瞬で到達できるのだ。
 舞花は――
「私は、環菜様と陽太様の鉄道事業を手伝っているんです」
 舞花は、フィアレフトにそう話をしていた。彼女は今や、事業のメイン戦力だ。その見た目は、何等かの未来世界の理由により14歳の容姿を保っている。
「未来には帰らないんですか?」
「未来へ無事に帰る方法がまだ分からないので、残っているんです」
「…………。私達が送りましょうか? ブリュケ君に未来まで行ってもらって、私が舞花さんの時間軸を探せば、もしかして……。100年以上後に跳んだことはありませんけど、多分大丈夫だと思いますよ」
 ブリュケに確認しないと分からないが、多分。
「そうですね……」
 舞花は、少し考える素振りを見せた。それから、小さく首を振る。
「いえ、まだまだ修行途上でやりたいことがたくさんあるので、まだここにいます。今となってはこの時代に、とても愛着ができてしまいましたし。フィアレフトさんも、未来に定住しないでここにいるということは……」
「……うん、私も、この時代が好きになっちゃいました」
 フィアレフトは、肉を美味しそうに食べているイディアを見遣る。
「最初は、すぐいなくなるつもりだったのに……私の近くに私がいることは、良いことじゃないと思ったので。実際、今もこうして関わるのが正解かどうか分からないし、やっぱり一緒には住めないんですけど。でも……」
 彼女はこの時代で出会い、再会した友人達の顔を思い浮かべる。
「ここで大切なものが出来てしまったから、仕方ないですよね」
「……治療薬の配布は、今はどうなっているんですか? 未来の病気は……」
「私達が最初に確認した80の時間軸には、全て薬を渡しました。量産体制も整って、国民に薬は広がっています。今は……ちょっと様子を見に行ったりとか、他の時間軸でも同じ事が起こっていないか、確認したりしてるところです。随分落ち着いたので、他の日は大体満月ちゃん達と一緒にお仕事してるんですけど」
「6年前は、大変でしたよね」
「……うん、色々、大変でした」
 舞花が労うと、フィアレフトは首を竦めて小さく笑った。

「おにーちゃんと環菜おねーちゃん、それと陽菜ちゃんが幸せそうでとっても嬉しいよ!」
 すっかり皆お腹いっぱいになって、お開きの時間。
 ノーンは嬉しそうに言って、エリシア、舞花と一緒に帰っていく。ファーシーも、イディアとフィアレフトと3人で外に出て挨拶した。
「じゃあね、今日はありがとう! 今度は、私が新年会に招待するわね!」
「はい、楽しみにしています」
「じゃあねー、陽菜ちゃん」
「じゃあねー!」

 皆が帰宅して、陽菜も歯磨きをして眠りについた。そんな夜更け、2人きりになった部屋で陽太は環菜に寄り添い、キスをした。
「環菜に会えた幸せに、心の底から感謝しています。……愛してます、環菜」
「……私もよ、陽太」
 陽太はそっと、ソファに身を預けた環菜に身体を重ねる。6年経っても2人は新婚時と何も変わらず――きっと、これからもずっと愛し愛されていくのだろう。
 何十年経っても、それは増えることはあっても減ることはない。

担当マスターより

▼担当マスター

沢樹一海

▼マスターコメント

リアクションの公開が大変遅れてしまい、申し訳ありませんでした。
今年ぎりぎりの提出ということで……! あああもうすみません。皆様、どんな年末を過ごされているでしょうか。

これにて、私の全てのシナリオは終了しました。
5年という長い期間お世話になった『蒼空のフロンティア』というゲームに、
5年間振り回したNPC達に(笑)、
何度も遅刻をしてしまってご迷惑をかけ続けてしまった運営様に、

そして、ご参加いただいたプレイヤーの皆様にお礼を申し上げます。

本当に、ありがとうございました。

個別コメントの方は、白紙の方および称号のご連絡のみの方は「魂の研究者〜2」の個別コメントにてまとめてお返事感想書かせていただきます。

また、このリアクションを執筆するにあたって、猫宮マスターにNPC登場許可を頂いています。
猫宮マスター、ご協力、どうもありがとうございました!
※1/7 それに伴い、一部、内容を修正いたしました(私の連絡が間に合わず、改めて監修頂いた部分です)