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戦乱の絆 第二部 第三回

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戦乱の絆 第二部 第三回
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■空中要塞との戦い1

シャンバラ教導団【新星】リーダーの
クレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)は、
島津 ヴァルナ(しまづ・う゛ぁるな)とともに、
LAHに搭乗し、
ギュンター・ビュッヘル(ぎゅんたー・びゅっへる)
サミュエル・ユンク(さみゅえる・ゆんく)
ニーベルンゲンと編隊を組んだ。
【新星】の部隊は、孤立しないために、必ずイコン2機1組として小隊編成を行っていた。

今回の【新星】の、対空中要塞における作戦は、
大量の爆薬を積んだイコンをわざと要塞のワイヤーに捕まらせ、
パイロット脱出後に爆発させるというものである。
クレーメックは【新星】全体のリーダーであるだけでなく、
対空中要塞戦の指揮官でもあった。
地上での機械化モンスターとの戦闘は、
香取 翔子(かとり・しょうこ)が指揮を行った。

待機していたクレーメックは、
イコンを爆破させるメンバーからの通信がないことを訝しく思い始めていた。
その時、LAHに連絡が入り、
ヴァルナが取り次いだ。
「クレーメック様」
ヴァルナの困惑した表情に、クレーメックは何かトラブルがあったことを察した。
通信兵による連絡によれば、
イコンの爆破は、破壊工作を使えないメンバーには困難であり、
出撃時に止められたということだ。

「しかたない。ならば、目的を同じくする者達の支援のため、
遠距離からの攻撃に集中することにしよう」
クレーメックは、冷静に作戦の変更を行った。
「了解だ。私の役目にそう変わりはない」
ギュンターは、
自爆攻撃で破壊しきれなかった部分の射撃を
コームラントのニーベルンゲンで担当するはずだった。
だから、実質、地道に破壊しなければならないものが増えただけともいえる。
クレーメックは、【新星】メンバーに作戦の変更を手早く伝え、体勢を立て直した。



一方、空中要塞に取りついて、調査や破壊を行おうとする、
【八岐大蛇】メンバーを支援するため、
竜螺 ハイコド(たつら・はいこど)
ソラン・ジーバルス(そらん・じーばるす)の、
クタリスは、
機械化モンスターをスナイパーライフルで狙撃していた。

「これで、皆が要塞に近づけるはず……」
ハイコドが、汗ばむ手で操縦を行うのを、横にいるソランが見つめた。
「大丈夫だよ、私もついてる。それに、皆も大丈夫!
だから、安心しな。
私達は必ず生きて帰るんだ」
初陣に緊張するハイコドを見て、ソランは言った。
「うん。
皆と一緒に帰るために……」
ハイコドは、スナイパーライフルの弾数を確認した。
緊急時のために、全弾使い切らずに、1発だけでも残しておくつもりだった。

ところどころ機械のパーツが埋め込まれた、翼をもつ獣が、
羽ばたいて、上空の【八岐大蛇】メンバーに接近しようとした。
「当たって!」
ハイコドは、クタリスのスナイパーライフルの照準を冷静に合わせて、引き金を引いた。
イコンからの攻撃で、モンスターはひとたまりもなく落下した。
「そうそう。やればできるじゃないか」
ソランが、わざといつもと変わらない調子で言った。
ハイコドは、味方が無事に要塞の方に飛んで行ったのを確認しながら言った。
「正直、女王様とか校長の方々と話したことなんてない。
だから『誰々様のため!』とかそういう覚悟で戦えない、正直ものすごく怖い」
「ああ、わかるよ」
ソランが優しくうなずいた。
「でも皆で騒いで楽しんで、
そしてソランと過ごすため……僕のために! 僕は戦う!」
ハイコドは、再び、スナイパーライフルの照準を合わせると、引き金を引く。
今度は、さっきよりも迷わなかった。