空京

校長室

創世の絆第二部 最終回

リアクション公開中!

創世の絆第二部 最終回
創世の絆第二部 最終回 創世の絆第二部 最終回 創世の絆第二部 最終回 創世の絆第二部 最終回

リアクション


槍持ちノーマルなビショップ

 インテグラル・ビショップを倒せばナイトも止まる、といった単純な事ではないのだろう。しかし前線で指揮を執るものが居なくなればナイトの志気は間違いなく下がる。
「それに、ビショップと因縁のある人たちもここにはたくさん居ますからね」
 高嶋 梓(たかしま・あずさ)が柔らかい声で言った。彼女は今回も土佐のオペレーター席で通信管制と索敵を担当している。
 ラクシュミが乗る機動要塞とそれを護衛する土佐が進撃を開始したことで、ナイトたちが続々と集まり来ている。索敵システムもレーダーも大賑わいだというのに一切に笑顔が崩れないあたり、さすがはと言ったところか。
「荷電粒子砲用意! 味方の進撃ルートをこじ開ける!」
「了解しましたわ」
 土佐の艦長である湊川 亮一(みなとがわ・りょういち)の指示で乗組員たちは『艦載用大型荷電粒子砲』の準備を始めた。は索敵システムのチェックと平行して、味方機の戦況も目視で確認してゆく。
 土佐の対面、機動要塞の後方に位置していた閃電が今は艦体前方に出てきていた。
「させるかよっ!!」
 群れの中から飛び出してきたナイトの前に体を入れて『新式ビームサーベル』で斬りつけた。
 巨斧でこれを受けるナイト閃電は『20ミリレーザーバルカン』を放った。
 至近距離からのレーザー砲。厚装をもつナイトだが、衝撃までは抑えきれずに、小さく吹き飛んだ。
「「小さく」ってのは余計だろう!!」
「目くじら立てないの」
 パイロットである岡島 伸宏(おかじま・のぶひろ)が、そして山口 順子(やまぐち・じゅんこ)は一つだけ笑みを浮かべてから次撃へと繋げてゆく。
「邪魔はさせねぇよ。主艦も土佐も忙しいんでな」
 飛行ユニットを背に装備したことで閃電の機動性ははるかに向上している。ナイトの先手を取るように、また攪乱するように飛ぶ事でナイトが接近するのを防いでいった。
「荷電粒子砲、発射!!」
 亮一の宣令で『艦載用大型荷電粒子砲』が放たれた。
 直撃を受けたナイトは吹き飛び、発生した轟風が取り巻きのナイトたちを後退させる。
 戦場の最前線、集まったナイトたちが成した群壁を、高出力のエネルギー砲が一気に裂いてこじ開けた。



「見ぃつけたっ!!」
 ナイトの群壁を抜けた先にインテグラル・ビショップの姿を見つけて、
「イっけー!!」
 ヒポグリフが放つ『大形ビームキャノン』。桐生 理知(きりゅう・りち)は景気付けの一発をビショップにくれてやった。
「よーし直撃ぃ!」
「してないわよ」
「えぇっ!!」
 北月 智緒(きげつ・ちお)の言った通りだった。ビショップは発生させた炎の壁でそれを受けて防いでいた。
「当然無傷ね」
「でもでも見て! あれ、手に持ってるの「焔の剣」だよね!」
 遠くからでは確認できなかったが今ならば叶う。間違いない、ビショップは「焔の剣」を持っている。つまり奴がこの軍の指揮を執るリーダーということだ。
理知! 一気に行くぞ!!」
 辻永 翔(つじなが・しょう)からの通信が入った。理知が「えぇっ! もうっ?!!」と驚いている間に智緒ヒポグリフの『覚醒』を済ませていた。
 成功はしなかったが先制はした。稼働時間は限られていても、ここで仕掛けることは決して悪くない。
 ヒポグリフをブラインドにストークビショップに迫る。
 近接。打ち合いが繰り広げられる中、理知らは敵の背後を、それも頭上をとった。
 『覚醒』によってスピードは増している。頭頂部から串刺しにする画理知の頭にはっきり浮かんだ、というのに―――
「何っ?!!」
 突然、右側面から衝撃を感じた。別機ビショップの槍がヒポグリフの腹に刺さっていた。
「まーた邪魔する気っ!!」
「……そんなことより刺さってる刺さってる」
 前回同様に槍持ちのビショップが2体。まったく今までどこに隠れていたのやら、今日もリーダーの護衛につくようだ。
「なんにせよ、こうしてようやくのお出ましなのだから」
 実に丁寧な口調で、それでいて少しばかり嬉しそうにエルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)が言う。また彼は愛機シュヴァルツ・zweiにもささやく様な口調で、
「存分に力を見せつけるとしよう。覚醒を使ってまで戦う機会はそうあるものではないからな」
「ほぉ、珍しく好戦的だな」パートナーのグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)が茶化すように言った。確かに普段の彼ならば己が力を誇示したり無碍に見せつけようとはしない―――
「そうですね……私もグラキエス様に感化されましたかね」
「言ってくれる」
 グラキエスが戦闘狂というわけではない、しかしこの戦いにおいては敵は全て滅するべきだと、そう考えているのは……見抜かれているようだ。
 吉井 ゲルバッキー(よしい・げるばっきー)の支配下にあろうが、リーダー格のビショップに従っているだけであろうが、我らの前に立ち塞がる者は全て排除する。
「まずはビショップ」
 シュヴァルツ・zweiを『覚醒』、槍持ちのビショップに斬りかかる。もう一体の槍持ちには「あれは我らの獲物だ。手出し無用!」とドクター・ハデス(どくたー・はです)が宣言していた。あれほど自信満々に言っているのだ、あちらは任せて良いのだろう。
 シュヴァルツ・zweiの『ノイズ・グレネード』が槍持ちの腕部に直撃。対イコン用の手榴弾が弾けて爆煙が舞った瞬間だった―――
 鉄 九頭切丸(くろがね・くずきりまる)が目を見開く。ビショップの背後に巌島三鬼を駆らせると、肩口の装甲の隙間に『ビームシールド』を刺して引っかけた。
 狙い通り。メインパイロットである水無月 睡蓮(みなづき・すいれん)は口元だけで笑んでから、
「ごめんなさいね」
 機体を『覚醒』、そして『エナジーバースト』を発動した。
 防御盾を成すビームがビショップの肩に、そしてその内側に一気に噴き出した。
 すぐにビショップの肩口から「黒い瘴気」が噴き出してきたが睡蓮は一歩も引かない。ビームが肩甲をもいだ所で『新式ビームサーベル』で一閃―――
 見事、ビショップの左肩部を斬り落とした。
 奇声にも似た音を発しながらにビショップは槍を振ってきたが、苦し紛れの攻撃など怖くはない。九頭切丸は余裕でこれらを避けて機体を後退させた。
 肩を落とされた怒りもあるだろう。ビショップの注意は完全に巌島三鬼に向いていた。
「世界は滅びない」
 そして好機は逃さない。グラキエスは『20ミリレーザーバルカン』をビショップの落ちた肩口に接地させると、
「滅びるのはお前達だ!!」
 一気に噴射、『覚醒』によって出力の増したレーザーがビショップの体内を焼いてゆく。ビショップは肉体を再生する事ができる、だからこそここで、決着をつける。
 巌島三鬼も再び『ビームシールド』の応用でこれに加勢。
 焼ききるのが先か肢体を裂いたのが先か。遂に槍持ちビショップは奇声も発せなくなった後に、ゆっくりと地に崩れて落ちた。



 一方こちらはもう一体の槍持ちビショップを前にして―――
「一度戦いが中座したならそれは因縁と呼んでよいものか」
 奮える拳を抑えてコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)が言う。
 これに応えるは盟友ドクター・ハデス(どくたー・はです)
「無論だ、友よ。しかもその戦いが世界の行く末を左右するとなれば……フフフフフ……フハハハハ! 何という規模だ、正に因縁と呼ぶに相応しい!!」
 敵前だというのにハデスは堂々たる高笑いを披露した。そして、
「というわけでカリバーンよ! ハーティオンとの神剣武装を許可する!」
「おぉ!!」
 指名を受けた聖剣勇者 カリバーン(せいけんゆうしゃ・かりばーん)も「どんなわけだ?」とはツッコム事なく、むしろ一目散に神剣勇者エクス・カリバーンに乗り込むと、人型形態から剣形態へと変形させた。
「ハーティオンよ! 俺を使えっ!! 神剣武装エクス・カリバーンッ!」
 効果音はジャキーンだろうか。これを受け取るハーティオンも当然生身ではない。グレート・ドラゴハーティオンのパイロット席にはハーティオンが、そして巨体を誇る龍心機 ドラゴランダー(りゅうじんき・どらごらんだー)は胸部から顔を出す形で乗り込んでいる。
「おおおッ! 神剣武装! エクス・カリバーンッ!!」
 イコンがイコンを鷲掴みにした。そしてそのまま殴りにかかる。
 ビショップも槍柄でこれを受けたが―――なんと! 一撃で、一刀でビショップの槍柄を両断した!
 肢体の装甲は強固でも武器の強度は脆かったという事か? はたまた、高笑いやら変形合体やらを目の当たりにした事で油断したのだろうか?
 いや違う。種は簡単だ、一刀を振る直前にハーティオンハデスの両名は『※ヴィサルガ・イヴァ』と『※ヴィサルガ・プラナヴァハ』を起動させていたのだ。普段から叫んだり騒いだりしている者が普通に事を成すと「こっそり」済ませたように見えるのは自業自得か特権か。
 まぁ何にせよ―――
「さあ、行け! 敵を滅するのだ!」
 時間は限られている。ならば、ひと思いにキメてみせよう。
「おおおおおおおッ! 神剣両断!! カリバァンストラアァァッシュ!!!」
 両方の腕と拳で応戦してくるビショップに対し、渾身の一撃『ファイナルイコンソード』を放ちゆく!
「おおおおおおおおおお!!!!」
 二機の合体必殺剣がビショップの装甲を斬り裂いてゆく。右脇の下から切り上げてゆき、最後は太首をハネて落とした。
「悪く思うな。貴公らに世界をくれてやる訳にはいかんのでな」
 世界征服を企む輩が身勝手な事を……しかし格好良くキメていた。
 短期決戦、完全勝利。槍持ちビショップは傷口から大量の「黒い瘴気」を噴き出して、そして木っ端微塵に爆ぜ消えたのだった。