空京

校長室

選択の絆 第三回

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選択の絆 第三回
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リアクション


突入、撤退 2

「金獅子さんが後退してきましたね……運んでもらったご恩に報いなければなりません」
「近づいてくるのはあの巨人だけじゃない、か。これは大変そうですね」
 最前線にてスナイパーライフルを構えるカムパネルラ
 その搭乗者であるミリオン・アインカノック(みりおん・あいんかのっく)は常に回りに気を配り、オルフェリア・アリス(おるふぇりあ・ありす)はそれを信頼し、ただ眼前だけに意識を集中させている。
「金獅子さんの方はまだ大丈夫そうですね。なら、オルフェたちは巨人さんの足を止めましょう」
「ああ、狙い打ってやるといい」
 カムパネルラが構えたスナイパーライフルの銃口が鈍く光る、と同時に一発の弾丸がエピメテウスノ足へと直進し、直撃。弾はエピメテウスの足の指に着弾。
『ん?』
 予期していなかった突然の攻撃に、エピメテウスの動きが一瞬止まる。しかしすぐに前進を再開、イーダフェルトへと進行を始めた。
「引く気はありませんか。でしたら、何度でも撃ちこみます」
「周りは任せろ。何かあれば即座に伝えるからな」
「はい。お願いします」
 そう言ってエピメテウスの足に攻撃を絞り、ライフルの弾丸を撃ち込みつつけていくオルフェリアだった。
「オレは、この戦いが終わったらケッコンするんだー!」
「ちょ! カオル!! いきなりそのセリフは危険すぎるよー!」
 {ICN0003059#DGS−WING}に乗り空を縦横無尽に駆けながら、撃墜されそうなセリフを口走るのは橘 カオル(たちばな・かおる)、もう一つの座席にはマリーア・プフィルズィヒ(まりーあ・ぷふぃるずぃひ)の姿もある。
「久々に帰ってきたのに、いきなりパラミタや地球がなくなるなんて冗談じゃない! そんなのは許されないんだ!」
「だからって撃墜とかされないでよ!? カオルがいなくなったら誰があたしにおやつ買ってくれるのよ!」
「オレの価値はそれだけなのかよ!? ……とまあ冗談はこれくらいにして、やることやりますか!」
 気を取り直して、向かい来る敵イコンと激しい空中戦を繰り広げる。
「ったく、相手は第二世代相当らしいがこっちだって伊達にパイロットしてないっての! それに今回は攻めじゃなくて守りだ、下手に攻撃したら負けってな!」
 そういいながら回避に徹するカオル。その様子をルース・マキャフリー(るーす・まきゃふりー)が遠くから眺め、機を窺っていた。
「なかなか早いですね。これは骨が折れそうだ」
「イコンの運転、メンドクサイ……」
「まあまあ、そう言わずに。この後は家でごろごろしてていいですから」
 ソフィア・クロケット(そふぃあ・くろけっと)の呟きに、戦場に眼を向けたまま返事を返すルース。
「……止まりましたね。射抜きます」
 ルースが搭乗しているイコンサイファーのライフルが火を噴き、カオルを追い回していた敵イコンの頭部に直撃する。
「おっ! 味方の援護とはありがたいね! いただきぃ!」
 その隙を見たカオルは、ドラゴンを切り裂くために作られた斬龍刀を振るい動力部があると思われる箇所へ突き立て、行動を停止させることに成功。
「お見事」
「……ねえ、あっちも追われてるよ」
「……! あれは、ナナの機体……!」
 ソフィアが指差した方向では、ナナ・マキャフリー(なな・まきゃふりー)音羽 逢(おとわ・あい)が搭乗するNachtigallが敵イコンに追われていた。
「やはり、早いですか」
「なんのこれしき! 振り切ってみせるで御座るよ!」
 Nachtigallの後方にピタリと張り付いた敵イコン。このままでは攻撃を行うことができない。
「ならば、こんなのはどうで御座ろう! ナナ殿、捕まっているで御座る!」
 逢がそう言ってブーストを逆噴射、機体がガクンと揺れた後、後方へと移動を開始。
 それを見た敵イコンは好機と見たのか、片手に持ったブレードを構えて斬り払う。
「そんな攻撃、当たらないで御座る!」
 今度は上昇して、敵の攻撃をかわす逢。若干つま先が敵の攻撃に当たったものの、損害はその程度だ。
「ナナに触れるとは、許さん……!」
 愛する妻を狙った敵イコンに怒りを露わにして、ライフルのトリガーを連続で引くルース。
 その攻撃は、左右の腕と足に当たり、最後には胴体に直撃。攻撃を受けた敵イコンはただただ落ちていくのみだった。
「さすがですね。……心強い援護もありますし、他の方のフォローに参りましょうか」
「了解で御座る!」
 各イコン機、戦艦内部の乗組員たち全員が力を合わせて敵を退ける。金獅子の撤退は順調。
 だがエピメテウスの方はというと、その進行を止められないでいた。
『ぐぅ! ちょこざいな!』
「……ゾディアックを前にしても強行するとは、まるで何かに執着しているようだな」
『どけっ!』
 エピメテウスがゾディアック目掛けて腕を払う。しかし、単調な動きではゾディアックを止めることはできない。
 だが追撃は止まらない。エピメテウスだけでなく、敵イコンもゾディアックを破壊するため行動を起こす。
「そうはさせないんだから!」
「ゾディアックには指一本触れさせないわ」
 ゾディアックの左右にはセレス・クロフォード(せれす・くろふぉーど)シェザーレ・ブラウン(しぇざーれ・ぶらうん)が操縦するフォーチュン桜花 舞(おうか・まい)赤城 静(あかぎ・しずか)が操縦する屠龍が控えていた。
『二人ともすまない。ゾディアックはエピメテウスにかかりきりになる。イコンへの対処は任せたい。俺の方で出来る限りのフォローはする』
「もちろんですよ! そのために、私たちはいるんですから!」
「ポムクルちゃんたちのためにも、防衛の任務を全うします」
 やる気十分な舞とセレスの前に敵イコン機が急襲してくる。
「こんのー!」
 舞が敵目掛けてマシンガンを乱射するが、その機動性の前に弾の一つもかすりはしない。
「うー、機体性能差が少しだけうらめしい」
「落ち着いて舞。私たちは一人じゃないわ。セレスたちやダリルさんと連携していきましょう」
「……うん! そうだね!」
 敵イコンはゾディアックの周りを軽快に飛び回り、攻撃を絞らせないようにしている。その動きに、ダリルが何もしないわけではない。
「ゾディアックの性能、甘く見ないでもらおう」
 そう言うとゾディアックが前進、その巨体から想像も出来ないスピード、当然それに伴う衝撃も大きい。敵イコンはあっけなく吹き飛ばされる。
「今ね。近づいて、全弾当てるっ!」
「ええ、私たちのイコンは幸運を運ぶ。この戦にも、勝利を運ぶわ。……相手にとっては、不幸なのかもしれないけど」
 フォーチュンが敵イコンへ近づいて、その懐でマシンガンをマガジンが空になるまで撃ち続ける。
「やってやるのだー」
「イーダフェルトは絶対守るのだー」
「ええ! ポムクルちゃんたちの言う通りよ!」
 マガジンを撃ち切ったフォーチュンは敵イコンを掴み、屠龍の方へと投げ飛ばす。
『直前で復帰し攻撃をしかけてくる、気をつけろ!』
「わかりました!」
 ダリルの指示通り、敵イコンは屠龍の眼前で機体制御を取り戻し、振り向きざまに舞を沈めんと持っていた武器を乱射する。しかし、既に屠龍はそこにはいない。
「これで、終わりだよっ!」
 敵の攻撃をかわした後、ビームアサルトライフルを撃ちつつ、最後には銃剣で胴体部を突き刺す屠龍。
 ダメージが蓄積された装甲を貫通し、深々と突き刺さり、遂には背中から銃剣の切っ先が顔をのぞかせる。
「よし! 次は戦艦だね!」
 そう言って動きの鈍い戦艦へ肉薄し、マシンガンとアサルトライフルでありったけ銃弾を撃ちこみ離脱。
 その隙に金獅子からの支援砲撃が敵戦艦に命中し、轟沈させる。
 マルティナ・エイスハンマー(まるてぃな・えいすはんまー)近衛 美園(このえ・みその)が乗るRevolutionも攻撃に参加し、その防衛網は更に厚くなる。
 こうして各員の活躍により金獅子は無事後退に成功。
 だがエピメテウスは止まることなく、イーダフェルトへの接近を止めない。