空京

校長室

終焉の絆 第二回

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終焉の絆 第二回
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【2】獅子の牙 2

 鋼鉄の獅子達がイコンに乗って猛威を振るう中、
 ラグナロク内で敵の解析に尽力している者もいた。
 金元 シャウラ(かねもと・しゃうら)ユーシス・サダルスウド(ゆーしす・さだるすうど)である。
「さぁて、俺達はあのグラヒトリの謎をなんとかしていきたいところだが……」
「あれは電気か磁石等の力を用いて、残骸を無理やり繋いでる、と推測されていましたね。
 ……その可能性は極めて高いことでしょう」
 自分達が持てる全ての能力を余すことなく総動員し、
 グラヒトリの能力を解明しようとした。
「スポーンとか類ではないし、ナノマシンに魔法的なものでもない……」
「結論としては、グラヒトリがよく使用する電気が正体でしょう。
 さすがにこれを今すぐに無力化するのは、難しいでしょうね」
 様々な観点から情報を精査し、シェザーレの推測が極めて合っている可能性が高いという結論を出した二人は、すぐに司令部へ連絡した。
「力はグラヒトリ本体から出ている。……現状じゃ、残骸を押し退けて本体を倒すしかないな」
「ですがこれでやることは一つになりました。少しでも迷いを減らせたことでしょう」
「そうだな。……うし、じゃ次はお手伝いでもするか!」
 二人はラグナロクで今なお敵機動要塞の分析に励むダリルの手伝いに加わる。
 二人が得たデータは司令部に連絡され、すぐに全イコン部隊へと転送されることとなった。

 敵イコンがH部隊、ラグナロクに群がってくる。
 敵機動要塞へダメージが通っている証拠、こちらを必死になって落とさなければならないところまで追い詰められているのだろう。
「艦隊を守る……それが団長と少佐の決定なら、私はそれに従うのみよっ!」
「迫り来る敵は俺達が排除する」
 董 蓮華(ただす・れんげ)スティンガー・ホーク(すてぃんがー・ほーく)紅龍に乗って空を飛ぶ。龍が空を駆けているようだ。
 機晶ブレード搭載型ライフルを射撃に格闘に使い分け、群がる敵をなぎ払っていく。
 その横では桜花 舞(おうか・まい)屠龍がフォローをしていた。
「例え要塞内に入れなくとも、ダリルの役に立てることはいくらでもあるわ!」
 イコンの原動力とせんばかりにダリルへの思いを叫ぶ舞。
 そんな舞を見たパートナーの赤城 静(あかぎ・しずか)がへまをしないように釘を刺す。
「あんまり熱くならないの。それこそ、ダリルの冷静さを見習いなさい」
「言われなくてもっ――」
 舞の眼光がラグナロクを狙う敵イコンを見つける。
「やってみせるっ!」
 マシンガンで敵の動きを牽制してから近寄ると、ビームアサルトライフルの銃剣で動力部を串刺しにする屠龍。
 と、その外側を別のセラフィム機が通り抜ける。
「ラグナロクを抜けた……?」
「……狙いは司令部よ! すぐに迎撃して!」
 静の言葉にタイムラグなしで反応した舞が攻撃するも、一瞬遅くセラフィム機は直進。

 ――よりも、紅龍が速く。
「周囲に敵反応なしっあいつだけよ!」
「なら遠慮なく狙いをつけて撃ち貫けるな」
 蓮華の言葉はスティンガーの照準を確定づけ、ビームライフルがセラフィム機を後方から貫く。
 後頭部に一発、背中部に一発。
 計二発の狙い済まされた射撃はセラフィム機の自由を奪う。
 それを確認した後すぐに屠龍も援護に入る。
 いい的になったセラフィム機はハチの巣の様になった後、爆散した。
「私が、団長を守る!!」
「私が、ダリルを守る!!」
 蓮華と舞が同時に叫んだ。
 二機の龍がラグラロクを守り、司令部を守るのだ。これほど心強いことはないだろう。

「うわ、すごいね。僕達も負けていられないよ」
「そうだな。こちらフォトンフォルセティ聞こえるか?」
『はい、問題ありません』
「上空のラインは二機に任せ、低空ラインはこちらで対処しよう」
『了解です』
 クローラ・テレスコピウム(くろーら・てれすこぴうむ)エールヴァント・フォルケン(えーるう゛ぁんと・ふぉるけん)のやりとりの最中、セリオス・ヒューレー(せりおす・ひゅーれー)が敵イコン部隊の機影を確認する。
「イコン部隊が来たよ」
「いくつだ」
「二部隊だね。一つは直進、一つは迂回して側面から来てる」
 クローラは口に手をやり少し考える仕草を取り、エールヴァントに連絡する。
「直進部隊はこちらで叩く」
『では、迂回してくる部隊は僕たちの方で対処します。では、御武運を』
「ああ、そうだな」
 通信を切ったと同時にフォトンとフォルセティがそれぞれの僚機を従えて敵部隊と相対する。
「僚機イコンへ! 二機は俺と共にセラフィム機の撃墜、残り二機は周りのイコンを遠距離攻撃で阻む。作戦は以上、行くぞ!」
 クローラの指示に従い、二機は遠距離、もう二機はフォトンに追従してセラフィム機へとあたる。
 フォトンのミサイルポッドにセラフィム機以外は進行を停止。
 この瞬間、遠距離攻撃担当の僚機イコンが敵イコンに銃弾の雨を見舞う。
 性能のゴリ押しでミサイルを突破したセラフィム機はもう二機の僚機イコンの銃撃をその身に浴びながらなおも直進する。
 だが、それを読んでいたクローラ操るフォトンが頭上からレーザーを撃ち、右肩部から左脚部の関節まで豪快に撃ち貫く。
 数の利と、指揮官のリーダーシップの差により、短時間で敵イコンは瓦解した。

 フォルセティも負けてはいない。
 僚機イコンと連携し、距離のあるうちにライフルを使い次々と敵を撃ち落す。
 セラフィム機はおらず、これだけで迂回してくる敵イコン部隊は苦戦を強いられていた。
「ルカルカちゃんのラグナロクはこの俺が護る!」
 そう叫ぶのはアルフ・シュライア(あるふ・しゅらいあ)、エールヴァントのパートナーだ。
 やる気全開の彼、エールヴァントはどうして彼がここまでやる気なのか、
 大体の察しをつけていた。が、あえて何も言わないで仕事に当たらせていた。
「これだけの作戦の後だ……きっと打ち上げがあって、女の子もわんさかで……」
 エールヴァントが言わなくとも欲望はただ漏れだった。
「にしても、俺たち、敵にモッテモテだな! これが女の子だったら最高だったのにな!!」
「……そうですね。何にせよ、迎撃が出来ることに越したことはないですね」
 まったくブレないパートナーに、エールヴァントは少しだけため息漏らしながらも、
 迫り寄ってくる敵を距離を持ってして制していった。

 各イコンに守られているラグナロク。
 当然、守られているだけではない。
「発射口の守りは?」
「各艦・イコンとの連携のおかげで手薄もいいところだ。
 無論こちらの攻撃準備も出来ている」
「なら、放り込んじゃって!」
 ルカルカの指示に無言で頷き、ラグナロクの主砲から練りこまれたエネルギーが射出される。
 標的は機動要塞の発射口。
 見事に命中し、発射口を機能不全に陥らせた。
「本当ならばもう少し手厚く歓迎する予定だったがな」
「これで少しはテメレーアの憂さも晴れたかしらね」
 獅子の牙が機動要塞に喰らい付いた後も、二人に油断はなかった。