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横山ミツエの演義(最終回)

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横山ミツエの演義(最終回)

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 ミツエをからかって機嫌良く董卓城に戻ったメニエス・レインは、玉座の間に董卓がいないことに気づいた。代わりにそこにはパートナーのロザリアス・レミーナ(ろざりあす・れみーな)がちょこんと座っていて、退屈そうに空飛ぶ箒の手入れをしていた。
「ロザ、董卓はどこへ行ったの?」
「お帰り、おねーちゃん。デブの王様はご飯食べに行ったよ。ミストラルがついていってるよ」
「そう。噂以上の食欲ね。彼が食糧庫をいっぱいにしていった理由がよくわかるわ」
 彼、とは文化祭の時に行動を共にしていた鏖殺寺院の男のことである。
 しかしロザリアスは「違うよ」と訂正の声をあげた。
「食糧庫のご飯じゃなくて、蒼空学園の女が持ってきたご飯だよ」
 そこまで聞いてメニエスは納得できた。
 乙軍の進路をふさぐように戦車隊を展開している朝野 未沙(あさの・みさ)達の誰かだろう。
 メニエスは未沙の作戦のために二万ほどのモヒカンを提供していた。
 その話の時、未沙は誅殺槍に実現させたいことの内容を董卓とメニエスに聞かせていたのだ。
「ま、何の問題もないわね」
「おねーちゃん、暇だよー」
「もう少し我慢して」
 もう少しっていつまでだ、とロザリアスは唇を尖らせた。
 メニエスはそんな彼女の頭を一撫でして、董卓のいる場所へ向かった。


 底を知らない董卓の食べっぷりは、見る者に胸焼けを起こさせるものだが、朝野 未羅(あさの・みら)はニコニコしながら次々に綺麗にされていく皿を眺めていた。
 そこは、食事の間であった。
 無駄に広い大広間の中央に、これまた無駄に長い長テーブル。染み一つない白いテーブルクロスにほど良い間隔を置いて薔薇が品の良い花瓶に活けられている。
 上座に董卓が着き、適当な席にマルコ・ヴォランテ、サルヴァトーレ・リッジョ(さるう゛ぁとーれ・りっじょ)ヴィト・ブシェッタ(う゛ぃと・ぶしぇった)の三人組が座り、モヒカン達に運ばれてくる料理に舌鼓を打っていた。一人一皿を運ぶモヒカンの列は、食事の間を抜けて城の外へ伸び、前線の未沙のところまで続いている。
 未沙が得た力は、料理を一品作ると戦車一台分の材料が手に入るというものだった。借りたモヒカン達は作り上げた戦車へ燃料の補給をしたり、出来上がった料理を董卓のもとへ運んだりしている。
 その使いが未羅である。
「董卓さん、お姉ちゃんの料理、おいしい?」
「ああ、申し分ない味だ」
「ふふ。お姉ちゃんの味付けは最高なの!」
 まるで自分が褒められたかのように胸を張る未羅。
 ふと、董卓はサルヴァトーレに目を向けた。
「あのビデオを見たミツエらの反応、見たかったな。ククッ」
「確実に言えるのは、何も反応がないということはありえない、ということだな。あの情報が嘘だということは、行動すればすぐにわかる。が、その隙を突くことはできるだろう」
「お前の演技もなかなか良かった」
 ヴィトが続けた。
 威風堂々とあるように。話は短くわかりやすく。
 この二点をヴィトは董卓に要求し、董卓は彼がOKを出すような演技をしてみせた。
「けっこう焦ってたわよ」
 石の床にヒールの音を響かせてメニエスが食事の間にやって来た。
 成長期で董卓並の食欲を見せるマルコの後ろを通り過ぎ、董卓の横で足を止める。
「どうなるか、見ものね」
 小さく笑うメニエスに、董卓はニヤリとした笑みを返した。