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ホワイトバレンタイン

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ホワイトバレンタイン
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 真口 悠希(まぐち・ゆき)はタキシード姿で出てきた桜井 静香(さくらい・しずか)を見て、くらっとするほどの刺激を受けた。
「あっ、静香さまカッコ良いですっ……!」
 ウェディングドレスを着た悠希の顔が興奮で真っ赤になる。
 あまりの感激に純白のウェディングドレスに赤い鼻血が落ちそうな勢いだ。
「ほ、本当? なんだかこういうの慣れなくって……」
 ラズィーヤにドレスはさんざん着させられてる静香だが、男装?の経験は少ない。
「スカートじゃないと……なんだか落ち着かないよ」
 しかし、その照れて恥ずかしそうに頬を染める様子が、また悠希を刺激して、悠希は本気で鼻血が出ないように上を向いた。

 悠希は静香を誘って一緒にバレンタインに彩られた街を歩いていたのだが、途中で教会で学生結婚を行っている人たちが目に入った。
 その結婚式はバレンタインのイベントだという話で「女の子同士でも構いませんよ」という観光協会の人の冗談めかした言葉に、悠希はものすごく乗り気になり、おろおろする静香を連れて教会に駆け込んだのだ。
「パラミタでは同性でも結婚って出来るのでしょうか?」
 ウェディングドレスを着付けてもらいながら、悠希が独り言のようにそう言うと、着付けてくれていた介添え人の人がそれを聞いて、答えてくれた。
 「同性でも結婚できますよ」
「え?」
「同性では結婚を出来ないという決まりも、結婚式を出来ないということもありません。今回の式にもお二方のように女の子同士の方も、男の子同士の方もいろいろいらっしゃいましたよ」
 悠希はその言葉に喜び、未来に光が差した思いで、控え室から教会に出た。
 そして、そこで静香のタキシード姿を見て、眩暈がするほどに感激したのである。

「ボクは、どうでしょうか……?」
 悠希がウェディングドレスの端をちょっと持って尋ねると、静香はニコッと微笑んだ。
「うん、とっても可愛いよ」
「……うれしいです!」
 悠希は頬を染め、用意しておいた指輪型チョコの入った箱を取り出した。
 面白い形だなと思って買ったチョコだったけれど、こんな形で役に立つとは思わなかった。
 悠希はそれを静香の細い指につけてあげ……誓いの言葉を言った。
「静香さま……貧しい時も……同性でも……どんな困難があっても……お優しい静香さまをボク、永遠に守り……」
 そこでちょっとだけ悠希の声が小さくなった。
「愛し……護り続けることを誓います!」
 愛しと言う言葉は小さかったが、二度繰り返した守ると言う言葉は悠希は力強く言った。
「ありがとう」
 愛し、と言う言葉がほぼ聞こえなかった静香は、守るというその言葉に対してお礼を述べた。
 だが、誓いを口にした悠希は感極まり、ぎゅっと静香に抱きついた。
「……………………しず、か…………」
 本当に小さな声でその名を呼び、悠希は静香の頬にキスした。
「わっ……」
 静香が真っ赤な顔をして、そのキスを受ける。
 悠希はそのまま静香を抱きしめ、その耳元で言った。
「結婚式は模擬ですけど、でも……誓いの言葉は本物ですから」