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リアクション
ハイサム外務大臣を乗せた飛空挺の内部は物々しい空気に包まれていた。
飛空挺内部には細部に渡って禁猟区が張り巡らせてあったし、超感覚のスキルを発動させた生徒が交代で巡回していた。
すでに携帯の電波が通じる距離までやってきている。
タシガンまで後もう少しだ。
何としてもここで気を抜くわけにはいかなかった。
「今のところ異常なしだ」
巡回をしていたクナイ・アヤシ(くない・あやし)は、サロンにやってくるとパートナーである清泉 北都(いずみ・ほくと)は声をかける。
「こちらはクリストファーと連絡がとれたよ」
サロンに残っていた北都はクリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)に連絡をとっていた。
タシガンに残った学友に自分たちが置かれた状況を伝え当ておけば、空港からタシガン市街への移動の際の警備も万全になる。
タシガンにいる仲間と連絡を取っていたのは、北都だけではない。
藍澤 黎(あいざわ・れい)はフィルラント・アッシュワース(ふぃるらんと・あっしゅ)やエディラント・アッシュワース(えでぃらんと・あっしゅわーす)がハーリーからコピーしたデータを黒崎の元へ転送していた。
林田 樹(はやしだ・いつき)は同じく教導団員のルイス・マーティン(るいす・まーてぃん)からもらった情報をもとに、タシガン到着後の警備計画を練りはじめたところだ。
「うむ。さすがは熱血騎士だ。これはよく集めたな」
ルイスがサクラ・フォースター(さくら・ふぉーすたー)たちとともに集めた要注意人物リストに目を通しながら、林田は満足そうに頷いた。
それからパソコンに向かっていた黎に声をかける。
「銀騎士殿、そちらの放った斥候からの連絡はどうなっている?」
「とりあえずまだ見つかっていないようだ。だが、じゃわに持たせた携帯が未だ圏外のため、連絡は取れてもGPSによる位置確認はできないままだが」
「…そうか。どうせならば、うちのコタローも同行させれば良かったな。
何らかしかの助けになっただろう」
別に黎たちの不手際を責めているわけではない。
林田のパートナーの一人林田 コタロー(はやしだ・こたろう)は、バックパックにも入る大きさのカエルのゆる族である。ただ単に一人天魔衆の元に身を隠すあいじゃわの存在を心配しただけだったのだが。
黎は恐縮したように首を振った。
「いや、ハーリー殿を逃がしたのは、あくまでも独断だから」
淡々とした口調は崩さないものの、やはり黎の表情はどこか優れない。
黎と林田があいじゃわの安否を気遣う隣で、何やら騒いでいる輩がいた。
「樹様、タシガンに着いたら私の大活躍、楽しみにしていてくださいね! 張り切ってバスターソードを振り回しちゃいますからっ」
「要は闇雲に突入する以外に能がないってことだよね」
「何言ってるんですかっ、口ばっかりのあんころ餅になんか負けません!」
この場に及んでも林田の寵を争っているのは、彼女のパートナーであるジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)と緒方 章(おがた・あきら)だ。
緊張感の欠片もない。
「…いい加減にしろ」
否、ある意味別の緊張感が走る状態に頭を抱える林田の肩を黎は静かに叩いた。
「我はあれくらいで丁度良いと思うぞ。無駄に緊張ばかりしても本番でしくじる」
「そう言ってもらえると助かるよ」
黎の励ましに、林田は苦笑で答えた。
ハイサム外務大臣を出迎えるためにジェイダス・観世院(じぇいだす・かんぜいん)はタシガン空港にやってきていた。
ジェイダスの背後には、ディヤーブによって統率されたクリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)やクリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)といった薔薇学の生徒たちが控えている。
「間もなく、か」
感慨深い様子で空を見上げるジェイダスに声をかけてきた人物がいた。
「僭越ながら、ご報告させていただきたいことがあるのですが」
教導団のルイス・マーティン(るいす・まーてぃん)である。
彼が地道にタシガンへの出入島者を調べていたことについては、ディヤーブを通して報告が入っていた。
ジェイダスは小さく頷き、ルイスに話を促した。
「先ほど改めて空港内を巡回したのですが、不審人物が一人発見されました」
不審者の洗い出しが終わった後も、彼の仲間であるサクラ・フォースター(さくら・ふぉーすたー)、グレゴリア・フローレンス(ぐれごりあ・ふろーれんす)、ロボ・カランポー(ろぼ・からんぽー)は空港内の巡回を続けていた。
中でも役だったのは、ロボ・カランポー(ろぼ・からんぽー)が持っていた爆破工作スキルであった。
爆破工作スキルを逆用し、暗殺を狙う場合、どこに仕掛けるかを「自分が仕掛ける際の立場になって」調査した結果、空港内の一角に爆発物が発見されたのだ。
また空港から少し離れた場所に、タシガンの民が集まっているという。
今のところ武器を持っている気配は見えないが、百合園からの協力者である雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)やレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)が何食わぬ顔で近づき、様子を探ったところ、どうやら一人の少女が彼等を扇動しているらしい。
顎に手を当てながら話を聞いていたジェイダスは、しばし考え込む。
ディヤーブたちを急行させても良いが、これ以上、薔薇学とタシガンの民との交戦は避けたいところだ。
「私が行ってみよう。すまぬが、君も同行してくれないか?」
ジェイダスの思わぬ決断にルイスの目は輝いた。
他校生が出しゃばるのも悪いと思い、これまで裏方に徹してきたが、功を上げたいという気持ちはルイスにもあった。
それも薔薇学の校長であるジェイダスに同行できるのだ。
ルイスが張り切って頷いたのは言うまでもない。
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