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嘆きの邂逅(最終回/全6回)

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嘆きの邂逅(最終回/全6回)
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〇     〇     〇


 宝物庫の調査を行っていた魔法隊のメンバーは、宝物庫に残っていたカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)を迎え入れた後、宮殿の地下に存在している研究室のような部屋を探っていく。
「なんて……感想言ったらいいのか、迷うね」
 考古学者であるグレイス・マラリィンは、古代の装置に興味はあるものの、使い方までは分からないとのこのことだ。
「どうする? 何か持ち帰る? 俺はこんなおっかねぇ技術の資料、いらねぇと思うんだけどな」
 班長のウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)が班員達に尋ねる。
「急いで調査しましょう。どのように、なんの目的を持って作られたのかに、私は興味があります」
 フィル・アルジェント(ふぃる・あるじぇんと)が合成された生き物を見ながら話していく。
「ただそれは、今この場で知る必要のあることではありませんので、資料などがあるようなら持ち帰りたいと思います」
「お嬢さん達、ホント、読めそうなモンだけでいーから手早く頼むぜ!」
 ウィルネストはそう言い、梯子の近くで皆を見守る。
 そうしている間にも、携帯電話からヨヤ・エレイソン(よや・えれいそん)の怒声が響いてくる。
『遅い! 今の戦況が分かっているんだろうな!?』
「分かってる」
『とっとと戻って来い!』
「そうは言っても、グレイス先生を初めとし、調査目的で離宮を訪れた奴らもいるからな」
『だが、お前自身は戦えるだろ!?』
 響いてくる声に、ウィルネストは唸り声を上げる。
 部屋の中には大きな水槽が十数か所に置かれている。
 その水槽の約半数に、異形の生き物が入っている。獣同士を掛け合わせたような姿だ。
「これって……」
 興味本位で水槽に近づいたカレンは中の生物の姿に絶句した。
 獣と、獣を掛け合わせたような姿の生物。
 近くには、機械と獣を掛け合わせたような生物。
 植物と、動物を掛け合わせたような生き物の姿も、あった。
 合成獣――キメラとは何度か戦ったことがある。
 だけれど、作る装置を見たのは初めて、で。
「う……っ」
 カレンの体が小刻みに震えだす。
「手伝います。こちらの書類などは持ち帰った方がいいでしょうか」
 アリア・フォンブラウン(ありあ・ふぉんぶらうん)はコンピューターの側に置かれていた書類をグレイスに見せる。
「あ、うん。図を見る限り、研究ノートか何かだね。何が書かれているのかは分からないけど……時間をかければ、多少は翻訳できると思う」
「あからさまに怪しい部屋じゃん」
 イーディ・エタニティ(いーでぃ・えたにてぃ)も急いで部屋の中を回ってみる。
 鍵のかかっている引き出しをピッキングで開錠し、中に入っている書類を確かめる。理解は出来ないが、数ばかり書かれているようだった。
「全部は持って帰れないじゃん。怪しい書類があったら、写真だけでも撮っておくじゃん」
 イーディは部屋の様子から、資料の目次のようなページ、図や写真が載っているページなどを選んで、写真を撮っておく。
「っと、やっぱりかなりヤバイ状態だぜ。加勢に出ようぜ?」
 ウィルネストが通信機に飛び交う連絡を聞き、皆にそう言った直後、ウィルネストへ本陣から指示が届く。
『調査を切り上げて、攻略隊のサポートと宮殿の光条兵器使いの対処に動いてほしい。マラリィン氏の護衛も必要だから、全員で動く必要はない』
 その連絡を受けて、ウィルネストはメンバー達にこう声をかける。
「ほんと、完全に後ろドン詰まりなんだぜ? お宝拾ったって、貴重な情報得たって持って帰れなきゃ意味ねーだろが、ほれ行くぞ!」
「ええ、調査はお任せし、私達は兵器破壊に全力を尽くします」
 そう言ったのはステラ・宗像(すてら・むなかた)だ。
 パートナーのイルマ・ヴィンジ(いるま・う゛ぃんじ)陳 到(ちん・とう)景戒 日本現報善悪霊異記(けいかい・にほんこくげんほうぜんあくりょういき)も頷く。
「他は?」
「では、私はマラリィン先生の護衛と調査を継続します」
 フィルがそう答え、アリアとイーディも調査の手伝いを希望した。
 カレンは何も言わず、書類や水槽に見入っている。
「それじゃ、こっちは頼んだぜ! いいか絶対に早く切り上げろよ」
 ウィルネストはフィルの頷きを確認後、ステラ達と共に、壁を通り抜け天井の扉から宮殿の中へと向う。

「暗いな」
 少し迷ったが、ウィルネストはライトをつけて周囲を照らす。
 研究室の上はやはり宮殿の中であった。
「ホールの方に向うぞ」
 ウィルネストが遠くに見えるエントランスの方に向おうとした途端、曲がり角から光条兵器使いが姿を現す。
 部屋の中や階段の方からも。
「現れたようですね。皆、孤立しないよう注意を」
 廊下の左右から光条兵器使いが迫ってくる。
 イルマがエントランスの方へ、陳到が反対側へと走り出て、ディフェンスシフトで皆を守る。
「行くのじゃ。出鼻をくじくように叩き込むと効果があがるじゃろう!」
 景戒がそう声をあげ、まずイルマから敵に斬り込んでいく。
 彼女の後に続き、皆、エントランスの方へと走る。
「通るためではない、全て倒させてもらう」
 数を減らす。倒されたりしないことを重視し、1撃で倒せるよう、敵の急所にバスタードソードを振り下ろす。
 首を斬られた光条兵器使いは、武器を振るう間もなく、絶命して廊下に倒れる。
「行動の前には、皆声をあげよ。混乱誤認、伝達齟齬を抑え、同士討ちなどを避けるためにもな」
「おうよ! 行くぜ、闇術」
 ウィルネストが後方に向って、闇術を放つ。
 追って来る敵の動きが鈍る。
「まずはエントランスへ。後方の敵は足止めします」
 ステラは後方の敵にアシッドミスドを放つ。一撃で倒すことは出来ないが、敵の動きが鈍る。
「右の敵、狙うのだわ!」
「了解」
 その間に、景戒が前方の敵に雷術を放つ。イルマがその敵に斬りこみ、胸を斬り裂いた。
「ウィルこっちだ!」
 エントランスフォールに駆け込んできた男――ヨヤが大声を上げる。
「わかってるって!」
 ウィルネストは闇術で前方の敵に攻撃。ヨヤがその敵を遠当てで打ち倒す。
 魔法隊のメンバーは廊下を走りぬけ、エントランスに飛び込んだヨヤ、アレクスと合流をする。
「ジュリオの状況は通信機からの連絡でわかっているな? まずは彼を運び出すための援護だ」
 ヨヤが簡単にウィルネストに説明をする。
「了解、その後は宮殿内のこいつら……人造兵器を破壊するってことでOK?」
「ああ、基本方針は全ての兵器の破壊だ。別邸の場所にも気付かれ、時々攻撃を受けている。出来るだけ外には出さず、仕留める」
 ヨヤは言いながら、現れた光条兵器使いの懐に飛び込んで、その腹に拳を叩き込んだ。
 倒れた光条兵器使いに、イルマが剣を突き立てる。
「地下に向うにゃう。援護お願いにゃうっ」
 アレクスはゴロゴロキャタピラを回して階段まで急ぎ、ふわりと飛んで下りていく。
「よし、急ごう」
「ウィル援護だ」
 ヴァルキリーのイルマと守護天使のヨヤが翼を広げてアレクスを追い、前に出る。
「さっさと決着つけちまおうぜ? そろそろお天道さんが恋しいからな!」
 ウィルネストも後に続き、魔法で援護していく。
「退路の確保が必要です。私達はここから援護します」
 ステラがそう言い、陳到、景戒と共に、階段と1階エントランス付近の敵の対処に当たる。