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第四師団 コンロン出兵篇(第2回)

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第四師団 コンロン出兵篇(第2回)

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第十章 エリュシオン軍港攻撃

 
 
出撃までの時間
 
 内海を東へ、と進める艦隊。
 艦の周囲をエリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァ(えりしゅかるつぃあ・にーなはしぇこう゛ぁ)がアリスうぃんぐで飛行し、警戒を行っている。今のところ異常はない。
 教導団の海軍である。
 海軍の指揮官ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)少尉は、海軍の仲間となった霧島 玖朔(きりしま・くざく)にこう言ったのであった。
「ときに玖朔? 私の艦とあなたの小型飛空艇でエリュシオン軍港を殺れたら、なかなか痛快だと思わない?」と。
「ローザマリア。本当にこれでよかったのか?」海面を見つめる霧島。しかし、実践はばっちり上手くいっている。自信はあった。
 内海を見つめ、思う霧島。――どうやらこの海軍はエリュシオンと本気で戦う気らしい。中々面白い事をやってくれるじゃないの。ローザマリアは俺と同格かそれ以上の野心家らしい。既に頭角出しまくってる【獅子】や【ノイエ】に匹敵するなら此れ位のことをしなきゃ駄目なのもあるか。今の状況は文字通り『乗り掛かった船』って奴だ、派手にやっちまおう。
「霧島……なんだ海なんか見つめて船酔いか」
 伊吹 九十九(いぶき・つくも)がその背中を見つつ出撃するヘリファルテの整備を行っている。まったく、霧島の気まぐれで戦いが近づいてきてるわけだけど……霧島のやつまさか不安でも感じてるんじゃないだろうな。
 ハヅキ・イェルネフェルト(はづき・いぇるねふぇると)の方は黙々とヘリファルテの調整に改良を重ねている。ハヅキは自機に迷彩塗装・強化装甲を施す。先日の幽霊船との戦闘が上々だったので、六連ミサイルポッドも搭載。「決戦は近い。操縦に関しても問題なし。気にかかるのは、強国エリュシオンに致命傷を与えられるか否か……!」
 
 
 艦内では、ローザマリアが偵察に出てきたルクレツィア・テレサ・マキャヴェリ(るくれつぃあてれさ・まきゃう゛ぇり)よりもたらされた情報を分析中。これを元に事細かな航路を設定する。「強いて言えばもっと付近の詳細な地図があればいいのだけど……」
 副官のジェンナーロ・ヴェルデ(じぇんなーろ・う゛ぇるで)が今、彼女の傍にいてその手伝いをしている。
「なるほどな。軍港ともなれば必然的にそこには敵艦隊がいるというわけだ。ローザ、おまえさんの狙いは端から軍港よりも敵艦隊へ向けられていたってわけだな? 確かに、敵艦隊に後詰めとしてミカヅキジマへ出撃でもされたら、幾ら何でも支えきることはできないだろうよ……予防という意味では賢明だと思うぞ?」
「ええ」ローザマリアも、そこに間違いはなかったと思う。
 敵艦隊の攻撃方法についても、補佐役のウィルフレッド・マスターズ(うぃるふれっど・ますたーず)を交えすでに協議を行ってある。ジェンナーロは協議の結果、夜間の艦艇を動かす人員が最小限となる時間帯を狙って攻撃を仕掛けることと、敵艦隊の作りが木造船なら艦首・あるいは横合いからの攻撃を行い、敵が鋼鉄船の場合は艦尾から攻撃し舵やスクリューを叩く戦術を提案し、それを全機に徹底させるよう述べた。的確な提案であるとローザマリアは判断した。
 あとは……
「ローザ? 何か、不安でも」
「いいえ。不安なんかじゃないわ」
 作戦にも、情報の分析にも、手抜かりはない。
「何か少しでも気になることがあれば言っておいた方がいいと思うが」
「ううん。何でもない。ジェンナーロ、あんたの作戦は完璧よ」
「そうか。むっ」
 キュイキュイ キュイキュイ。
「ルクレツィアだ。ちょっと待ってくれ。
 ルクレツィア……むう。わかった。ローザ、敵艦隊の位置など詳細な情報が入ってきたぞ。いよいよだ」
「ええ。……」