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海に潜むは亡国の艦 ~大界征くは幻の艦~(第1回/全3回)

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海に潜むは亡国の艦 ~大界征くは幻の艦~(第1回/全3回)
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刃金、出るよ!」
 クリスチーナ・アーヴィンが、土佐のカタパルトに載った刃金をさして叫んだ。
「進路、クリア。シグナル、グリーンに!」
 インカムを手で押さえて、長谷川真琴が官制室に指示を出した。
「刃金、出るぜ」
 リニアカタパルトで加速された刃金が、勢いよく土佐から飛び出す。
「偵察隊の護衛に回る」
 水平飛行に移って、柊恭也が、柊唯依に告げた。
「遅れてる。急げよ」
 まったくと、柊唯依が発破をかけた。
 
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「発進ですー!」
 コルセア・レキシントンが、伊勢の飛行甲板で思い切り叫んだ。
 その声を拾ったジェファルコン特務仕様が、エナジーウイングを展開して飛びあがった。
「こちらは、このまま上空で警戒任務につきます」
 伊勢に通信を入れると、笠置生駒はジェファルコン特務仕様を艦隊上空に位置させた。
 
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 偵察機を発進させ、微速前進を続けるフリングホルニの艦隊に、遅れ気味に駆けつけた残る艦船とイコンが集結していった。
「なんか、レーダーに反応があるよ? ヒンデンブルク号?」
 アニス・パラスが、佐野和輝に告げた。
「のようだな。リンクを結べ」
「はーい」
 艦隊のはるか上空に、飛行船ともヘリともつかないシルエットのヒンデンブルク号が浮かぶ。
「おっけー、佐野和輝さんから、艦隊の進路のデータが来ましたわ。後は、敵艦の位置が分かったらアタックですわ」
 ヒンデンブルク号を艦隊に先行させながら、カミーユ・ゴールド(かみーゆ・ごーるど)が言った。格納庫の中には、鬼頭 翔(きとう・かける)オリバー・ナイツ(おりばー・ないつ)が搭乗した、パールヴァティーの修羅モードが搭載されている。こちらは、降下要員を掩護する予定だ。
 その降下要員としては、メフォスト・フィレス(めふぉすと・ふぃれす)の操縦するイコプラ【ポータラカUFO】の中には、魔鎧のドール・ゴールド(どーる・ごーるど)を身に纏った鳴神 裁(なるかみ・さい)物部 九十九(もののべ・つくも))が、宝貝・補陀落如意羽衣を装着して待機していた。
 
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「のーせーてー」
 大地の上を、てけりり、てけりりとNight−gauntsで走りながら、秋月 葵(あきづき・あおい)が叫んだ。
 飛ぶことのできないセンチネルタイプのNight−gauntsは、駆けつけたがいいが艦に乗ることができない。
「止まってー!」
 コックピットの中で叫んでも、それでイコンが空を飛べるわけでも、フリングホルニが地上に下りてくれるわけでもなかった。
「ええっと、下でセンチネルが乗せてくれと……」
 哨戒していた笠置生駒からの報告を受けて、リカイン・フェルマータがエステル・シャンフロウの方を振り返った。
「自分で乗り込めと伝えなさい。これ以上、遅れると、敵の方が先にアトラスの傷跡に到着してしまいます」
 エステル・シャンフロウの指示を仰ぐまでもないと、グレン・ドミトリーがリカイン・フェルマータに告げた。
「えっ、自分でなんとかしろって言ってるんだもん!?」
 返信を受けた秋月葵が、泣きそうな声で言った。
「仕方ない、なんとかしてやろうではないか。むじーんぱーんちーと叫んで手を突き出すのだ」
 こんなこともあろうかと、フォン・ユンツト著 『無銘祭祀書』(ゆんつとちょ・むめいさいししょ)がサブパイロット席のボタンをポチッと押した。
 秋月葵がえいっと手を突き出すと、頭の腕に突きあげられたNight−gauntsの腕が、カショポコとのびていく、のびていく、のびていく、のびていく……、届いた。
「よーし、登るのじゃ」
 フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』が、再びボタンを押した。フリングホルニの舷側にあるシールドの縁を掴んだNight−gauntsの腕が、今度はカコポコと縮んでいく。その勢いで、Night−gauntsの機体が引き上げられていった。
「うんしょ、うんしょ、ちゃっかーん!」
 なんとかフリングホルニによじ登って、秋月葵が舷側近くにNight−gauntsを立たせて叫んだ。このまま、ここで砲台になる予定であった。
 
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「ようし、合流報告。旗艦の上方に位置すると伝えろー」
「回線開け。本艦の進路を通知。許可をとれ」
 大型飛空艇ツインウィングのブリッジで、ややけだるそうに指示をする閃崎 静麻(せんざき・しずま)の言葉を、レイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)が的確な指示に翻訳して乗組員に告る。タシガン空賊出身の乗組員が、慣れた様子で復唱した。