薔薇の学舎へ

波羅蜜多実業高等学校

校長室

葦原明倫館へ

海に潜むは亡国の艦 ~大界征くは幻の艦~(第1回/全3回)

リアクション公開中!

海に潜むは亡国の艦 ~大界征くは幻の艦~(第1回/全3回)
海に潜むは亡国の艦 ~大界征くは幻の艦~(第1回/全3回) 海に潜むは亡国の艦 ~大界征くは幻の艦~(第1回/全3回)

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「俺たちは偵察隊だ、先行して発進するから準備をしておけよ」
 刃金のコックピットで、柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)柊 唯依(ひいらぎ・ゆい)に言った。
「予定通りだろ。それより、そちらこそ、つまらないミスはするなよ」
 柊唯依が、柊恭也に突っ込んだ。
 ジェファルコンベースの刃金は金色の重装甲で防御力を増し、エネルギーウイングをスタビライザー型のバインダースラスターに換装している。
 こちらは、他のイコンに先だって、すでに土佐のカタパルトにセットされていた。
 
    ★    ★    ★
 
『――準備、整いました』
 ウィスタリアのイコン格納庫でゼノガイストを整備していたヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)が、柊 真司(ひいらぎ・しんじ)にテレパシーで報告した。
「御苦労様。作戦開始までは待機だ。少し休んでくれ」
 柊真司が、ヴェルリア・アルカトルをねぎらった。
 重装甲を施したジェファルコンベースのゼノガイストは、まだ静かに出番を待っている。
 
    ★    ★    ★
 
「艦載機の状況はどうかな」
 柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)が、ウィスタリアのブリッジ中央に位置したアルマ・ライラック(あるま・らいらっく)に訊ねた。
 ブリッジ中央にはリングテーブル状の機晶制御ユニットがあり、接続用のプロテクターを纏ったアルマ・ライラックがシートに深く身を沈めるようにして座っていた。
 ウィスタリアの船体色と同じ藤色のプロテクターは、アルマ・ライラックとしてはちょっと恥ずかしい。露出の多いまるで魔法少女か美少女戦士と言ったデザインなのだ。もちろん、柚木桂輔の趣味丸出しである。
「現在、ハンガーで待機中です。指示があれば、49で射出可能。ウィスタリアは移動継続中。300後に、予定相対位置に固定します」
「分かった。艦の方は任せたぞ。俺は、ゼノガイストをカタパルトに移動させてくる」
 そう言うと、柚木桂輔がブリッジを出ていった。
 
    ★    ★    ★
 
「それにしても、なんだか簡単すぎるでありますね」
 伊勢のブリッジで、艦長の葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)がつぶやいた。
「心配なのかな?」
 鋼鉄 二十二号(くろがね・にじゅうにごう)が、葛城吹雪に訊ねた。
「伏兵は、疑うべきでありましょう」
「まあ、そんな物は、見つけ次第、我が轟沈させるわけではあるが……」
「あれだったら、旗艦に連絡しておいたら?」
 ゆるぎない鋼鉄二十二号の言葉に、コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)がつけ加えた。
「そうしておくであります」
「じゃあ、ワタシは甲板に行って、イコンを見てくるわね。笠置さんにも、警戒、頼んどくよ」
「どれ、我も、砲の方で待機するとしよう」
 葛城吹雪に言うと、コルセア・レキシントンと鋼鉄二十二号はブリッジを出ていった。
 
    ★    ★    ★
 
ジェファルコン特務仕様、着艦する」
 無線で伊勢のブリッジに告げると、笠置 生駒(かさぎ・いこま)が後部飛行看板にイコンを着艦させた。モスグリーンのジェファルコンは、エナジーウイングも同色に輝き、強化した装甲と頭部のウサ耳状のセンサーが特徴的だ。
「着艦確認じゃ」
 ジェファルコンが甲板上で安定したのを確認して、ジョージ・ピテクス(じょーじ・ぴてくす)が告げた。
 そこへ、ブリッジからやってきたコルセア・レキシントンが声をかける。
「伏兵の警戒かい?」
「ええ。単純すぎるのは怪しいって、吹雪が」
 聞き返す笠置生駒に、コルセア・レキシントンがうなずいた。
「任せておいてよね。上空で待機するから。何か見つけたら、連絡するよ」
 笠置生駒は、そうコルセア・レキシントンに請け負った。
 
    ★    ★    ★
 
「みんな移動したのか。ハーポ・マルクスは補給艦だから、最後尾かなあ」
 HMS・テメレーアたちが移動を始めたのを見て、カル・カルカー(かる・かるかー)が大型飛空艇ハーポ・マルクスを移動させた。伊勢の後ろにつく位置に移動させていく。フリングホルニの左右やや前方には、オクスペタルム号と格闘式飛空艇アガートラームがいた。
「出番はまだかよ、うずうずするぜ」
 ハーポ・マルクスの甲板で、ウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)うろうろと歩き回りながら言った
「少しは落ち着きなさい。出撃の連絡が来るまでは、念入りに点検を続けないと。実戦じゃ、何が起きるか分からないんだからね」
 高崎 朋美(たかさき・ともみ)が、甲板の上に直接載せられたジェファルコンのウィンダムを点検する手を休めて、ウルスラーディ・シマックを諫めた。
「少しは、トメさんを見習わなきゃ。ねえ」
 高崎朋美が、夏侯 惇(かこう・とん)とのんびり話し合って笑っている高崎 トメ(たかさき・とめ)の方を指して言った。
「いやあ、格好いいお兄さんと一緒だと、照れるわあ」
 笑いながら、高崎トメが夏侯惇の背中をバンバンと叩いている。
「げほっ、はは、参ったぜ」
 どうすりゃいいんだと、夏侯惇がちょっと咳き込みながら照れて見せた。