リアクション
● ● ● ガッ! ググググ……――ザシュッ! 「おりゃああぁっ!」 相田 なぶら(あいだ・なぶら)の振るった光明剣クラウソナスが、グリフォンに乗っていた機晶兵を切り裂いた。 剣同士による押し合いの末の、気合いの一撃である。 ごぉんっ! 切り口から爆発と火花を起こした機晶兵は、グリフォンから落鳥して落下する。 それを見届ける暇もなく、なぶらは次なる敵部隊に向けて視線を動かした。 「おぉ、おぉ、次から次へと!」 迫りくる空中生物たちの姿を見て、なぶらは驚く。 その横で―― ズガァンッ! ドゴォッ! ハイパーガントレットを装着した拳で機晶兵を貫いた木之本 瑠璃(きのもと・るり)と、覇剣ランドグリーズで翼竜を切り裂いたフィアナ・コルト(ふぃあな・こると)が、なぶらのほうを向いた。 「数は明らかに向こうの方が勝ってますからね。これは総力戦になりそうですよ」 と、フィアナが言う。瑠璃はそれに対して嬉しそうに全身を震わせた。 「フフフッ! 戦いはこうでなくては始まらないのだ! 吾輩に任せるのだ!」 そう。困ったことに、瑠璃は戦いが大好きな守護天使だった。 誤解のないように言えば、ヒーローに憧れていると言えば良いか。 ともかく正義のために戦うことは瑠璃にとって素晴らしき目標なのである。 そのために日々鍛錬を積む彼女は、こうしてその成果を発揮出来ることに興奮を覚えていた。 なぶらがそのことに感心し、うんうんとうなずいた。 「あいかわらず瑠璃はノリノリだよなぁ。……よしっ! その気合い、無駄にはしない! 行けぇ! フィアナ! 瑠璃!」 「なに言ってるんですか、なぶら! あなたも行くんですよ!」 ちゃっかり二人に大役を押し付けようとしたなぶらに、フィアナが怒りを露わにする。 瑠璃が武者震いで目をキラキラさせるのと同じように、これもまた彼らのいつもの光景であった。 「わ、わかってるって。そんなに怒るなよぉ」 「どーだか。そのまま気づかなければ、私たちにやらせていたと思いますけど?」 「(ぎくぅ!?)」 すっかり図星を突かれているなぶらであった。 「ま、まさかぁ……そんなことないって。なはははははっ」 誤魔化すように笑うなぶら。 それを呆れたように見て、フィアナは迫ってきた空中生物に剣を構えた。 「まあ、それはともかくとしても……戦わないといけないのは事実ですからね。二人とも、いきますよ!」 「ちょ、ちょっと待つのだ! 準備が必要なのだ!」 「準備ぃ?」 突撃しようとしたフィアナに瑠璃がストップをかけ、なぶらが怪訝そうに声をこぼした。 「来るのだ! ソウクウオー!」 すると、突如として、 キラーンッ! 空の彼方から鳥が飛んできた。 いや、これは単なる鳥ではない! 超テクノロジーの金属で出来たその装甲は何者にも撃ち砕くことができない。 瑠璃が従える頼もしき相棒、超合金DXソウクウオー(という名の、ギフトを改造したもの)だった! 「蒼空合体!」 瑠璃のかけ声とともに、ソウクウオーは変形。続けて、翼状の乗り物となった。 瑠璃はその乗り物に乗り込むと、バババッと、妙に慣れたモーションでポーズを取った。 「空の彼方からやってきたこの蒼き空を守るもの! ストライカー瑠璃ウィズソウクウオー! 我等が魂に正義がある限り、この世に惡が飛ぶ空は無いと知るのだっ!」 ジャキーン!(効果音) どこぞから鳴った効果音と一緒に、瑠璃のポーズが止まる。 (ふっ……決まったのだ……) 本人はご満悦。だが、なぶらとフィアナはすでに戦闘モードへと移行していた。 「ほら、んなことやってないで、とっとといくぞ」 「うわわっ、待ってなのだぁ!」 ちょっぴり羨ましそうななぶらが突き放したように言ったのを見て、瑠璃は慌ててその後を追った。 「はあああぁぁぁっ!」 「うおおおぉぉぉっ!」 ズシャッ! ドゴォ! なぶらも、フィアナも、気合いの一閃で次々と敵を切り裂いていく。 ソウクウオーに乗る瑠璃も、拳が相手をふき飛ばしていった。 すると、ふいに瑠璃がフィアナに呼びかけた。 「そうだ! フィアナ殿、フィアナ殿、折角の機会だし、吾輩達の合体技「真・鳳凰落し」を試してみるのだっ!」 「…………ほう、あの技を試してみますか」 瑠璃の提案に、フィアナも満更ではない笑みを浮かべた。 「おいおい、なんだよそりゃ」 一人だけ話がわかっていないなぶらが問う。 フィアナが不敵な笑みを崩さずに答えた。 「実は以前、なぶらが瑠璃と一緒に合体技「鳳凰落し」をやったことがあったでしょう? その時から、私たち二人でもなにか新しい技が出来ないかと、考えていたのです」 「それが、「真・鳳凰落し」! なのだ!」 瑠璃が満面の笑みで言った。 「鳳凰落し」とは、なぶらが瑠璃を掴んで垂直に叩き落とし、質量爆弾として瑠璃自身を叩きつける自爆技である。言わば人間爆弾を投げつけると言えばすんなり理解されるか。闘気を自在に操る瑠璃だからこそ、出来る技だった。 なんと、「真・鳳凰落し」とは、それに更なる改良を加えた技だという! 迫ってくる高速機動部隊を見据えて、フィアナがさっそくその準備に取りかかった。 「いきますよ、瑠璃!」 「了解なのだ!」 準備といっても、実に単純なものである。 フィアナが横向きに構えた大剣、覇剣ランドグリーズの刃の腹に、瑠璃が飛び乗った。 ぐわんぐわんぐわんぐわん! それに、瑠璃を落とさないように回転を加える。 ぐるぐる回って遠心力が極限まで達したとき―― 「飛んでけええええぇぇぇ!!」 ドウッ! フィアナが剣を振り抜き、瑠璃をぶっ飛ばした。 シュゴオオオオオオォォォ! 凄まじい勢いで飛んでいった瑠璃は、そこに機晶アクセラレータによる加速を加える。 自在に操る闘気が瑠璃を包みこんだとき、その身はまるで炎のような赤いエネルギーに覆われた。 そして―― チュドオオオォォォン! チュドチュドチュドドドドォォォン! グリフォンに乗っている機晶兵たちが一直線に貫かれたとき、戦場にはいくつもの爆発が混ざり合った大爆発が起こった。 偶然にも一列になっていた機晶兵たちを、瑠璃がまるごと破壊したのである。 その爆発を見て、なぶらが一言。 「む、無茶苦茶だ…………」 まさにその台詞が的確であろう。意外と常識派だったのか、なぶら!?(ひどい) ただ、彼のつぶやきなど聞こえぬ場所で―― 「ブイなのだ!」 黒いすすだらけになった瑠璃は、Vサインを見せつけてるのだった。 |
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