薔薇の学舎へ

波羅蜜多実業高等学校

校長室

葦原明倫館へ

フューチャー・ファインダーズ(第3回/全3回)

リアクション公開中!

フューチャー・ファインダーズ(第3回/全3回)

リアクション


【13】


 グランガクインのパイロットは9名。
 姫宮 和希(ひめみや・かずき)ミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)十七夜 リオ(かなき・りお)フェルクレールト・フリューゲル(ふぇるくれーると・ふりゅーげる)レン・オズワルド(れん・おずわるど)ブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)アルマ・ライラック(あるま・らいらっく)桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)の9名だ。
 司令部のメインモニターには、炎の海に立つナンバーゼロが映っていた。竜は熱線を吐いては町を焼き、大地を喰らい、身体から毒を撒き散らしていた。
「……これ以上好きにはさせねぇ。行くぜ、姫やん!」
「おう! 俺達の人間の魂の力見せてやろうぜ!」
 ミュウと和希はコクピットに座った。
「いくぜぇ! グラァァァンガクィィィンッ!!」
 グランガクインの目がカッと光を放った。
 初めにパイロットとなったのはミュウだ。
「まさか姫やんと一緒にイコンに乗り込む日が来るとはな、しかもこんな巨大なヤツを。全長200メートル、くぅ……超燃える! 今なら宇宙怪獣だってなぎ払えるぜ!」
 彼女の闘志を魂の力を、タマムスビドライブがグランガクインにフィードバック。
「……機体性能上昇、10%、20%。30%……!」
 オペレーターの雅香が数値を読み上げる。
「ゴーゴー♪ グランガクイン♪ てーきーをー吹っ飛ばせー♪ ガークイーン・キャノーン♪」
 ミュウは適当に歌いながら、コンソールパネルをバン! と叩いた。
 グランガクインの肩部装甲がシャッターのように開き、百連装のショルダーキャノンが露になった。
火力は正義! ガクインキャノン・フルパワーーー!!
 怒濤のキャノンがナンバーゼロに降り注ぐ。数えきれない爆発が、敵を包み込んだ。
「うおおおおおおおっ! いくぜいくぜどんいくぜ!」
 グランガクインは駆け出した。大地を激しく揺らして、敵との距離を縮めていく。
「……姫やん、頼んだ!」
「任せろ、ミュウ!」
 メインパイロットが和希に代わった。
 システムまわりのオペレーターを担当するダリルは、素早く調整して和希のコクピットにシステム接続を行う。
 人の手によるものとは思えない早業、脅威の処理速度だ。オペレーターと言うより、もはや”OS(オペレーティング・システム)”だ。
 その上、ダリルはシステムに気を払いつつもグランガクインの姿勢制御、エネルギーの分配効率に注視して常に安定するよう取りはからっているのだ。
(……記憶はないが、どうやら俺は機械の専門家だったようだな)
 ダリルは得心した。
「うおおおおおおおおおーーっ!!」
 和希は雄叫びとともにゼロに突っ込んだ。
イナズマ・ガクインッ、パァーンチ!!
 別名ただのパンチ……だが、気合いとともに放つパンチには必殺の力が宿るもの!
 これまで続くロボットアニメがその証拠であるし、なによりそのシステムを実用化したのが大文字博士の長年の夢”タマムスビドライブ”なのだ!
「ゴウワァァッ!!」
 強烈及び痛烈なパンチに、ゼロは悲鳴にも似た叫びを上げた。
「おらおらおらおらーっ!!」
 パンチパンチパンチ、パンチの連打。
 全長200メートルの巨体から繰り出されるとは思えないフットワークで三つの頭に文字通りの鉄拳を叩き込む。
 タマムスビドライブの効果によって、和希がこれまで学んだ万勇拳やカポエイラ、シラット……各種武術の動作がグランガクインにもフィードバックされていた。
「ガクインアンカーーーッ!!」
 アンカーを崩れかけた大神殿に射出。アンカーの巻き取る力を利用して、グランガクインは急上昇した。
「そしてぇ!!」
 今度はゼロにアンカーを打った。
ガクインッ、流・星・脚ッッ!
 再び巻き取るパワーで急降下、ゼロの背中に猛烈及び激烈なキックを叩き込んだ。
「グワァァァァッ!!」
「む……!?」
 ゼロの口元が灼熱するのが見えた。
 スウェーバックで熱線を回避。続けて二つの首が吐く熱線も間合いをとって避けた。
「……う!」
 その時、くらりと目眩が襲った。
「姫やん!」
「ちょっと飛ばし過ぎたみたいだ……」
 タマムスビドライブによる精神消耗だ。

「フェル、よく見てな。熱い心の燃やし方ってのを見せてあげる!」
 続いて、メインパイロットとなったリオは相棒にそう言った。
「行くよ、グランガクイン! この時代の過去を! ボク達の現在(いま)を! そして、皆の未来を護る為に!!」
 タマムスビドライブが彼女に呼応して唸った。
 機体性能上昇10%、20%、30%……40%!!
 正面に目標を捉え、PTAフィールドを展開。真っ向からメギドファイアを受ける。
「気をつけて! フィールド限界まであと30秒よ!」
 雅香が叫んだ。
「どんなに辛くたって、苦しくたって……胸の奥に輝く夢(たから)があるから頑張れるんだ! 未来へ踏み出す元気になるんだっ!」
 リオはコンソールパネルを叩く。
「時空断裂砲チャージ開始!」
「フィールド限界まであと10秒!」
「奇跡だって起こせるくらい、爆発するくらい……燃えろ! ボクの魂っ!」
「限界まで5、4、3……」
時空断裂砲! ファイナルッ! ファイッヤァァァァァッッ!!
 黒い閃光がメギドファイアと激突。二つの強大な破壊の力はミレニアム上空で炸裂する。
「これが心の……力だぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
 空に無数の亀裂が走り、空間ごと都市とゼロを切り刻んだ。
「グゴォォァァ!!」
 ゼロの身から紫の煙が噴き上がった。
「リオ!」
 リオは席に突っ伏した。
「………後は任せたよ……フェル……」
「……!」
 リオからフェルに、メインパイロットが切り替わった。
「……ワタシはリオみたいに感情を出すのは得意じゃない……でも」
 サイコメトリでコクピットに触れ、グランガクインに込められた想いを読み取る。
 大文字博士の、特務隊の、レジスタンスの……仲間達の想いがフェルの心を震わせた。
「表に出なくても、皆の気持ちはここにある……!」
 タマムスビドライブが唸りを上げる。
「アナタみたいな壊すだけの怪物とは違う……護りたいって想いに……取り戻すって決意に……心が触れる度に熱くなる!」
 グランガクインは胸に輝く”テンガクハート”に手を当てた。
「グランブレェェェッドッ!!」
 変幻自在の流体金属兵器スパイラルブレイヴァーが”大剣”となって現れた。
ガクインッ! ファイナルッ! フィニーッシュッ!!
 上段に構えた剣を振り下ろして、一刀両断。頭から尾まで真っ二つに。
 ところが、しかし戦いはまだ終わってなかった。
「!?」
 両断されたゼロは瞬く間に元の姿に戻った。
 先ほど時空断裂砲で付けた傷も、ミュウや和希の与えた傷も奇麗に消えてなくなってしまった。
「そんな……!」
「ゴグアアアアアァァァァッッ!!」
 次の瞬間、熱線がグランガクインに浴びせられた。
「きゃあ!!」
 幾重にも施した超装甲もあっという間に融解、爆発が起こった。

「直撃箇所の消化を急げ! ドックの整備班に連絡して応急処置だ!」
 警報のなる司令部に、それよりもけたたましい大文字博士の声が轟いた。
 カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)夏侯 淵(かこう・えん)は、学院の体育館や保健室から持ってきたマットや毛布を、空いたスペースに敷いて、燃え尽きたパイロット達を休ませていた。
「ちゃんと寝とけ、何かあったら起こしてやるからよ」
 そう言って、カルキは毛布をかけて回った。
「皆、大分消耗しているな」
「そんだけタマムスビナンタラのパワーがすげぇんだろ。けどあれだな、この分じゃもうちっとマットがいるかもな」
「取ってくるか、熱線で体育館がなくならんうちに」

「……で、これを俺にやれと?」
 エヴァ・ヴォルテール(えう゛ぁ・う゛ぉるてーる)の作ったマニュアル本『だれでもわかるぐらんがいんそうじゅうまにゅある』を読まされて、煉は微妙なB級グルメを食べた時のような味のある顔になっていた。
 1:とにかく武器名を気合いれて叫べ!
 2:熱血パワーMAX!
 3:必殺技はマイクを2本以上ぶち壊すような叫びで!(目指せ帝王!)

「な、簡単だろ?」
 エヴァはにやにやしながら言った。
「これさえ押えときゃガクインの操作は完璧だよ、完璧」
「俺よりもグランガクインに詳しいな……お前が乗ったほうがいいんじゃないか?」
「バカ、そりゃお前、自分でやるより人が面白いから……あ、ゲフンゲフン」
 胸を押さえた。
「実は全長200メートル以上のイコンに乗ると目眩と吐き気の止まらないたちで……」
すんごい嘘発見
 ため息を吐き、もう一度マニュアルに目を通した。
「海京を守るためには仕方ないのか……」

『敵はどうやら強力な再生能力を持っているようだ』
 司令部のメインモニターに映ったグレアムは自らの分析を述べた。
『先ほどの様子から見るに通常の攻撃ではダメージを与えることは出来ない』
「そのようだねぇ。真っ二つにされてピンピンしてるんじゃなぁ……」
 太公望は言った。
『しかし生物である以上、どこかに”急所”はあるハズだ』
 ナンバーゼロの写真が表示された。
『ここを見てくれ』
「?」
 ゼロの頭部がクローズアップされた。頭部が白い光を帯びている。
『ゼロが肉体を再生させた際、頭部の発光確認された。おそらくここに奴の”核”がある』
「するってぇと、こいつを潰しゃあもう再生は出来ないと?」
『僕の分析では83%の以上の確率でそうなる』
『……つっても奴の頭は3つある』
 乱世が映った。
『さっきひとつ潰したけど、他の頭が残ってたからすぐに再生されちまった、せっかく潰した頭も一緒にな』
『全ての核を同時に破壊しないと、奴を完全停止させることは出来ないようだ』
「……なるほど。勝負の鍵は”チームワーク”ってぇことか」