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リアクション
第5章 見えざる相手
イルミンスール校舎3階。
珍しく迷子にならずにソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)と、パートナーの雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)は順調にゴールへ向かっていた。
行動を共にしてくれる生徒たちが沢山集まってくれたからだった。
「こっちじゃなさそうですねぇ」
分かれ道のように入り組んだ通路をキョロキョロと見回しながら、ソアは2階に下りる階段を探す。
「暗すぎて向こう側が見づらいな」
ベアは腕を組んで考え込むように言う。
「といっても、ばらばらに探したらはぐれちゃいそうですよね」
トラップがないか両サイドの壁を注意深く見ながら歩く日奈森 優菜(ひなもり・ゆうな)が言う。
「あら、これは何でしょうか」
「それに触っちゃだめです!」
壁に貼られた札を剥がそうとするソアを優菜が止める。
「剥がしたとたんにドカンと爆発しそうだな」
「そっそんな不吉なこと言わないでくださいよー」
さらりと言い放つベアに、ソアは頬に冷や汗を浮かべる。
「何だコレは。電気のスイッチ入れる時の紐みたいだな」
ベアが不用意に引いてしまったその紐で、トラップが発動してしまう。
「いけない、2人とも伏せるんだ!」
優菜のパートナーの柊 カナン(ひいらぎ・かなん)が警戒の声を上げたのと同時に、頭上から噴出した炎がソアとベアに襲いかかる。
カナンのとっさの呼びかけと、ソアの身をベアが守ったおかげでなんとか傷を負わずに済んだ。
仕掛け人が突然後方から襲ってこないか、左右の壁にあるトラップと優菜が担当している。
カナンが足元と頭上にある仕掛けを対処していた。
さきほどの騒動で緊張感を失ったカナンに、時枝 みこと(ときえだ・みこと)が何やら耳打ちをする。
「ゴールには美女、ゴールには沢山の美女がキミを待っている」
「しかたないなぁー。お兄さん美女たちのために頑張らないと」
元気がでる呪文のように言うみことに、カナンは気力を取り戻す。
「まったくもう、兄さんたら…」
片手を頭に当てて、優菜は疲れたようなため息をつく。
「いやぁ、バイトの帰りに飛空挺が故障した時にはどうしようかと思ったけど。森でキミたちに出会ったおかげで面白いことに遭遇できたよ」
「そうですよねぇ。暗い森の中で修理するのも困難でしたし、朝方までだいぶ時間がありましたからね」
ヘラッと笑って言うみことの傍らで、同じく飛び入り参加したみことのパートナーのフレア・ミラア(ふれあ・みらあ)が楽しそうに話す。
「こっちには人じゃない存在はいないようだね」
ライト代わりにフレアの光条兵器を使い、みことが通路の奥を照らして何か潜んでいないか確認する。
「ということは誰か…人いるということでしょうか」
「人以外って…?」
「いい忘れてましたけど、みことさんは霊感があるので人以外が潜んでいたら気配でわかるんですよ」
「そんなのがわかっちゃうんですかー」
フレアの説明にソアが関心したような声を上げた。
「こっちは下へ降りる階段ないみたいですよー」
20m先から竜ヶ崎 かぐら(りゅうがさき・かぐら)が、声を大きくして行動を共にしている1番近くにいる盛園 林檎(もりその・りんご)に伝える。
「そっかー…。うーん、夜の学校ってこんな感じなのかなー」
「あぁっ、竜ヶ崎 かぐら!足元にロープが…!」
「えっ?きゃああ!?」
かぐらは仕掛けられたロープに引っかかって床に転んでしまった拍子に、壁の札を剥がしてしまいトラップが発動した。
頭上から落ちてきた無数の矢の雨と、前面からもかぐら目掛けて飛んでくる。
駄目もとで頭を抱えて床に塞ぎ込む。
「ここの校長はどんだけ危険な罠仕掛けてるんだよ」
間一髪かぐらを守った林檎は、ふぅと息をつく。
元は幽霊退治用に根性注入槍を持ってきたのだが、思わぬところで活躍した。
「姐さんに渡したお守りの効果が他の者にも効くようじゃのう」
トラップ撃破に協力した林檎のパートナーの赤城 名月(あかぎ・めいげつ)が腕組をして得意そうに言う。
「あたしの腕があってこそだと思わない?」
根性注入槍を握り締めている林檎の鋭い眼差しに、名月はごもっともと頷く。
「(よぉおし、今度は私が林檎さんたちを守る番です!このこんやくで仕掛け人たちを…あっ)」
かぐらは道具箱の中に隠し持っていたこんにゃくを取り出したとたん、手から滑って自分の服の中に入ってしまう。
服の中から取り出そうと悪戦苦闘していると、背後からやってきたアラン・ブラック(あらん・ぶらっく)が、かぐらの服の中へコネコを入れた。
くすぐったさのあまり、かぐらはパニック状態に陥ってしまう。
「あははっ必死ですねぇー♪」
「女子をあんまりいじめちゃ可哀想だよ」
「今回は肝試しなんだから許されるのです」
「そうかなー…」
のっぺらぼうの仮面を被りながら、アランのパートナーのセス・ヘルムズ(せす・へるむず)は腑に落ちない様子で眉間に皺を寄せる。
今だパニック状態のかぐらは、セスを見てお化けが出たと笑いながら指差す。
もはや緊張感ゼロの台無しな雰囲気だった。
「もう少し怖い仮面なかったんですか?」
「えぇっチョイスミスのせいじゃないよー。ボクが先に脅かした方がよかったと思うんだけど」
「そういう時もありますよ」
「じゃあ、別のターゲット探しにいこう」
しれっと言い放つアランの態度を気に病むことなく、驚かす相手を探しに行こうとセスが提案する。
かぐらの傍にいる林檎たちに気づかれないように、2人はその場からこっそりと移動した。
笑い転げているかぐらを、ルーシー・トランブル(るーしー・とらんぶる)が心配そうに見つめる。
「一体どうしたの…!?」
「あははっ背中が冷たくってくすぐったい…ひゃっ!あっははは!」
もはや笑い袋と化しているかぐらの背を見てみると、服の中にコネコとこんにゃくが入っていた。
「…何でこんなの入れているのー?」
ルーシーが笑いの原因を取り除いてやる。
「ふぅ、助かりました。怪しい人がいたので、こんにゃくを使って驚かそうとしたら自分の服の中に…」
「じゃぁこのコネコちゃんは?」
コネコの首根っこを掴んでルーシーが持ち上げて見せる。
「どうやら誰かが仕掛けたようですね」
疑問符を浮かべて首を傾げるかぐらに、ルーシーは眉を潜めて言う。
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