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第1章 パラミタ内海に謎の建造物が誕生?!


 みなさん、こんにちは。パラミタ放送お昼のニュースの時間です。
 本日、パラミタ内海に何やら巨大な建造物が作られているという噂を聞きつけ、調査にやってまいりました。
 白い砂浜には掘られた深い濠の周りには、ぐるりと高い柵が設けられています。さらには眩い太陽の光を拒絶するが如く豪奢な天蓋が張られている姿はまさに異様。一体誰が何の目的で、こんな建造物を作ったのでしょうか。
 おや、燦々と陽差しが照りつける中、襟元も乱さず涼しげに作業を続けている薔薇の学舎の生徒がいらっしゃいます。早速、お話をうかがってみましょう。
 すみませーん、お話をよろしいでしょうか?
「はい、どうぞ」
 振り向いた少年の笑顔は、真夏に長袖の学ランをビシリと着ているとは思えないほどに、とっても爽やか。
 アナタは薔薇の学舎の生徒さんですよね。
明智 珠輝(あけち・たまき)と申します。隣にいるのは僕のパートナーのリア・ヴェリー(りあ・べりー)
 これはご丁寧にどうも…。あの、今作られているものって?
「あぁ、これは闘技場ですよ」
 と…闘技場、ですか?!
 この夏、パラミタ内海で開催されるイベントはすべてチェックしていたはずですが。格闘イベントの予定はなかった…はず?
「あぁ、すみません。言い間違えました。美男子オーディションの会場ですよ」
 あぁ…それならば確か予定に…
「僕は出場しないけどねー。お手伝い」
 眩いばかりの笑顔を振りまいてくれたのは、明智くんのパートナーであるリア・ヴェリーくん。
 いやいや、出場しないなんて勿体ないっ。ピンクに染められた髪も、爽やかな笑顔も、まさに絵に描いたような王子様そのもの!
 それにしても何故ジェイダス校長は、こんなに大げさな闘技場を作ったのでしょうか。コンテストならば普通にステージを作るだけで良いような気がするのですが。
「それについては私がお答えしましょう」
 そう言って近づいてきたのは、美しい金糸を惜しげもなく刈り上げた上品な顔立ちの青年。ジャケットにベスト、アスコットタイもしっかりとしめているのにもかかわらず、こちらの青年も汗すらかいていません。
 え…と、皆さん涼しげな表情をされていますが、今は本当に真夏なんですよね?
「初めまして、エドワードです。まずは名刺をどうぞ」
 あーこれまたご丁寧に。
 英大衆紙「Weekly Express」パラミタ担当記者エドワード・ショウ(えどわーど・しょう)さんですか。
「実は私、ジェイダス校長に単独インタビューを申込みまして」
 おぉ、それはまさか独占スクープ?!
「…イエニチェリによって追い払われてしまいましたが…」
 あぁ、まぁ長い記者人生、そんなこともありますねー。そうそうスクープなんて落ちてないから、特ダネって言うんだけどね。
「でも、ジェイダス校長が何故、こんな大きな闘技場を作ったかは調べてきましたから!」
 おぉっ、それをぜひ!!
「日焼けは美肌の大敵だからだそうです」
 そりゃそうかもしれませんが………………………………聞かなきゃ良かった……。


 気を取り直して、他の方にもお話をうかがってみましょう。
 会場の周りには警備隊の詰め所や救護所と思われるテントが取り囲んでいます。
 おや、ちょうどテントの中から警備隊と思われる教導団の女性が出てきましたよ。女子禁制の薔薇学主催イベントで女性スタッフとは珍しい。
 すみませーん。ちょっとよろしいでしょうか。ただのコンテストとは思えない物々しい雰囲気が漂っていますが…。
「暴動は必ず起こるであります!」
 いや…そんなこと断言されても…。
 ビシリと背筋を伸ばし、敬礼をしながら答えてくれたのはシャンバラ教導団からやってきたボランティア比島 真紀(ひしま・まき)さん。その隣では、比島さんのパートナー、ドラゴニュートのサイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)さんが銃を構えて私を狙っていますぅっ?!
「俺の前には何人たりとも立ちはだかることはできないぜ」
 いや…そうやって煽るから、暴動って起きるんじゃないのかなぁ…。
 つか、もしかして私、めっちゃ不審者ですか?!
「そちらは取材の方だ。銃を下ろしてあげてください」
 おーっと、まさにグッドタイミング。救世主の登場です!
 颯爽と現れたのは、薔薇の学舎の制服をピシリとまとった黒髪の少年、北条 御影(ほうじょう・みかげ)くん。いやぁ、本当に助かりました。
「ケガはありませんか?」
 気遣う姿はまさに白馬の騎士さながら。これぞ薔薇学生のお手本です!
「開催が近づき皆ピリピリしてるんです。少しでも良い大会にしようとスタッフ一同頑張っている所ですので、ご容赦ください」
 そんなキラキラした瞳でお願いされたら、仕事を忘れて私情に走ってしまいそうです、北条くんっ!
 と、ここで記者の服を引っ張る存在が。
 何、うるさいなぁー。今、妄想大爆発で忙しいのっ!
 振り向けばそこには、白茶のパンダゆる族!
「お土産はいかがアルか?」
 パンダの手にはコンテスト参加者達の顔写真入りのうちわ、首には飲み物やお菓子などが入ったクーラーボックスがぶら下がっておりますが…。
「家ではか弱い子パンダが、お腹をすかして我の帰りを待ってるアルよー」
 そう言って悲しそうに視線を落とすパンダくん。
 思わず何か買ってあげたくなりますが…。
「何してるんだ、マルクス?!」
 血相を変えて駆け寄ってきたのは、先ほどの薔薇の騎士・北条くん。やっぱりカッコいいー!
 どうやらこのパンダくんは北条くんのパートナー、マルクス・ブルータス(まるくす・ぶるーたす)さんのようです。
「お告げによると、コンテストは絶好の稼ぎ時アルよ!」
「胡散臭いんだよ、お前っ。薔薇の学舎の品位を落とすような行為は控えろって、いつも言ってるだろ!」
 そう言うなり、北条くんはパンダくんの胸元を掴み激しく揺さぶります。
 あーもうっ、怒って素になっている北条くんもステキィィィー!!