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水を掘りに行こうよ! ミミズと俺らのメモリィ

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砂漠でドリル講習会

 トラックで走ること十時間。無論、砂漠の中を十時間休みなく走り続けることなどできはしない。一時間に一回のペースで小休止が入り、水や簡単な食事が配られる。
 アシャンテ・グルームエッジ(あしゃんて・ぐるーむえっじ)は、持ち前の超感覚を生かして警戒している。しかし、彼女に感じ取れる範囲には敵の存在はないようだ。
「それではドリル訓練を開始するモグ!」
 長めの休憩をとる度にモグ三によるドリル講習会が行われる。今回使用するドリルは、ヒラニプラにほど近い遺跡から発掘されたドリルを解析し、機晶姫に内蔵された機晶石からのエネルギーを使用して動作するというものだ。それぞれの機晶姫の出力特性に合わせて微調整が必要で、そのあたりも実戦での使用に耐えないと判断された理由の一つだ。
 朝野 未沙(あさの・みさ)は、機晶姫たちを順番にチェックしてドリルの調整を施していく。
「……これで、よしと」
 ドリルの調整は非常に繊細なものだ。最初から高速回転しすぎて機晶姫の関節部に過負荷が掛るとは未沙の想像の範囲外の事態だった。それぞれの機晶姫にあわせて、ドリルを慎重に調整していく。
「今回からはいよいよドリルの心をみんなに伝えるモグ。一挙一頭足、モグの動きを真似するモグ」
「わかりましたモグ!」
 機晶姫たちは大まじめに答えるが、モグ三は思わずドリルを取り落とす。
「口調まで真似しなくていいモグ……あと、みんなは大事なドリルを落としたりしちゃダメモグよ……」
 モグ三の持っているドリルは遺跡で発掘されたドリルの一つだ。機晶石が内蔵されていてかなり大きい。
「いいモグか? ドリルの心は不動心モグ。どんなに固く分厚い壁を目の前にしても動揺してはいけないモグ。一点を見据えて、突く!」
 モグ三の突きが宙を突く。ドリルが高速で回転しているにもかかわらず、一直線の軌道を描き、伸びきった点で静止している。
「不動心……不動心……」
 ルケト・ツーレ(るけと・つーれ)はモグ三の言葉をぶつぶつと呟きながら宙に向かってドリルを突き出す。しかし、ドリルの回転によって生み出される複雑な力と砂漠の不安定な足場が、ドリルを前に突き出すというそれだけのことを困難にしている。
「お、良いじゃねーか、似合ってるぞルケト〜。『カッコイイ!』ってその手の男にモテそうだな!」
 デゼル・レイナード(でぜる・れいなーど)は前のめりに体勢を崩したルケトを冷やかす。デゼルの手には水筒が握られている。ルケトはパートナーに氷点下の視線を返すと、無言で基本の型を繰り返した。
 栂羽 りを(つがはね・りお)はパートナーのジェラルド・ツァラトゥストゥラ(じぇらるど・つぁらとぅすとぅら)の動きを見ては、大げさなくらいに喜んでいる。ジェラルドは恥ずかしそうにしているが、相性がよいとでもいうのか、安定した動きだ。
「ジェドすごい!」
「や、あはは……」
 ジェラルドは赤面してうつむいた。