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紙ペットとお年玉発掘大作戦

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紙ペットとお年玉発掘大作戦

リアクション

「チュウチュウー」
 岩場をちょろちょろとせわしなく、紙ハツカネズミが走る。
 それを追いかけ、黒髪を揺らして下を向いたまま走る姫神 司(ひめがみ・つかさ)
 その背後から、やや息を切らせながら走るグレッグ・マーセラス(ぐれっぐ・まーせらす)が追う。
「これは結構大変ですね。司、下ばかり見て走るのも危ないですよ。前方注意です」
 大きな岩が、進行方向にある。姫神司は顔を上げ、岩にぶつからぬよう動いた。
「それにしても……エリザベート校長が言っていたボロ布が何になるのか気になるな」
「そうですね……。運よく手に入ればいいのですが……」
 グレッグ・マーセラスがお守りを取り出した。姫神司にもらったもので、【禁猟区】を施した代物だ。
「ハツカネズミが曲がったようだな。見失わぬよう、急ぐか」
「わ、いきなり走らないでくださいっ!」
 姫神司とグレッグ・マーセラスは、ちょろちょろ動く紙ハツカネズミを追う。
「おっ、椎名くんだー」
「こんにちは!」
 東條カガチ達は、椎名真達の姿を見つけ、手を振った。椎名真達は応じて手を振る。
「そっちもきてたんだな」
「こんにちは、カガチさん、なぎこさん。紙ペット、蛇にしたんだね」
「なぎさんの蛇さんなのですよ」
「椎名くん達は犬かぁ」
「うん……あ、そうだ。折角だから、接触させよう」
「そうだねぇ」
 二組は紙ペットを持ち上げ、接触させようと近づける。
「紙ペットを接触させているようですね」
 グレッグ・マーセラスがその様子に気付き、姫神司が声を張り上げた。
「よければ、わたくし達も混ぜてもらえないか?」
「いいよ。ね、カガチ」
「大丈夫よ。ね、真くん」
 二つ返事で返す女性陣に、東條カガチと椎名真は思わず笑って頷いた。
「では、よろしく頼む」
 紙蛇、紙わんこ、紙ハツカネズミが集い、そっと触れあう。
 光が満ちて紙ペット達を包み、球状になった光は紙ペットの腹からその体内へ浸透していく。
「チュッチュウ!」
 その途端、紙ハツカネズミが走りだした。
「見つけたようですね」
「俺達が通ってきた方向だねぇ」
 見守るグレッグ・マーセラスと東條カガチを背に、姫神司が駆けだす。チュウチュウと喚く紙ハツカネズミが示す場所に、スコップを突き立てた。
「司、私がやりますよ」
 慌ててグレッグ・マーセラスが駆け寄り、スコップで土を掘り返す。鉄製の宝箱を取り出すのに、そう時間はかからなかった。
「開けてみてください、司」
 促され、姫神司が宝箱を開ける。
「あ、チョコ!」
 覗きこんだ柳尾なぎこが声を上げる。
 宝箱の中に入っていたのは、カカオ分の多い、チョコレートだった。

「いやぁ、宝探し日和やねぇ〜」
 伸びをしつつ、日下部 社(くさかべ・やしろ)が同じ【荒野で口笛】のメンバーを振りかえった。紙カバを肩に乗せている。
「本当ね。でも、校長にお土産を渡すだけで他校でも参加させてくれるなんて、結構気前がいいのね……」
「そうですよね……」
 紙猫を連れながら、首を傾げるのは白雪 魔姫(しらゆき・まき)エリスフィア・ホワイトスノウ(えりすふぃあ・ほわいとすのう)
「ウチの校長は気まぐれやからなぁ」
 日下部社は苦笑する。と、白雪魔姫にシリウス・サザーラント(しりうす・さざーらんと)が近寄る。
「宝探しなんかより、俺としては君を隅々まで冒険したいな…………ね、今夜君の部屋に行っていい……?」
「な、なんなの!?」
 耳元に口を寄せたシリウス・サザーラントを、白雪魔姫が押しのける。
 その魔姫を助けようと、エリスフィア・ホワイトスノウが立ちはだかる。
「あ、あの……魔姫様は……あの」
「君のことも、知りたいな……」
「え、あの……ええと……」
 言いよどむエリスフィア・ホワイトスノウ。シリウス・サザーラントは彼女の手をとり――。
「今日という今日は処刑してやる!」
 背後からの攻撃を受けそうになるのを、避けた。真空飛びひざ蹴りはあえなく空を切る。
「この変態吸血鬼……!」
 拳を何度も突き出すルーク・クレイン(るーく・くれいん)。その周囲を蒼い紙蝶が飛ぶ。しかし拳はことごとく避けられる。
「退屈なんだよね、こんなところで宝探しなんて」
「だったらついてくるなっ!」
「魔姫様―!」
「エリス、あれくらいでうろたえてはだめよ」
「……二人共、パートナーさんと仲良しなんやねぇ〜♪」
 二組の様子を見守りつつ、日下部社が呟いた。
「日下部さん……その眼はなんですか……?」
「変な笑い方ね……」
「そうか〜?」
 温かいというよりは生温かい目で見ていると、ルーク・クレインと白雪魔姫が怪訝そうに見た。
 二組のざわめきが収まったとみて、日下部社が紙カバを手に乗せた。
「とりあえず、紙ペットを接触させてみようやないか!」
「そうね」
「そうしましょう」
 紙猫、紙蒼蝶が紙カバの傍らへ。そのまま手を伸ばし、三匹を触れ合わせる。
 光が溢れ、紙ペットを包み込む。いくつもの光になって紙ペット達の体に浸透していく。
「よっしゃあ、探すで!」
 日下部社の声に応じるかのように、紙ペットが動き出す。
 それぞればらばらに、宝の位置を示す。
「ここでえぇんやな!」
「掘りますよ!」
「エリスフィア、頼んだわよ」
 それぞれスコップを手に、土を掘り返す。宝箱が姿を現した。
「よっしゃあ、ええやんこれ」
「これは……使えますね」
「ふぅん、意外といい物が入っているのね」
 宝箱を上げ、それぞれが宝を手にする。日下部社はカバのぬいぐるみを、ルーク・クレインは鉄靴を、白雪魔姫はティアラを手に入れた。
「じゃあ次や次! 頑張りや!」
 日下部社が紙ペット達に呼びかける。紙ペット達は頷くように動いた。

 荒野の枯草が、風に揺れる。
 その風に導かれるように、【イルミンお宝鑑定団】の面々がやってきた。
「荒野到着! 宝探し、頑張ろうぜ」
 にっと笑い、エル・ウィンド(える・うぃんど)がメンバーに声をかけた。その肩に、紙ペットの金色の鷹が乗っている。
「みんなで協力すれば、きっとうまくいきますよ」
 バスケットと水筒を持ったホワイト・カラー(ほわいと・からー)が、にこにこと笑う。
「なんとしても宝は手に入れねばな」
 真剣な眼差しで、ギルガメシュ・ウルク(ぎるがめしゅ・うるく)が周囲を見渡す。その手には、ケーキの入った箱が提げられている。
「どんな宝かな?」
「いい物が入っているといいですね」
 紙茶リスを連れたミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)が赤い瞳を輝かせる。
 その様子に弁当を持ったシェイド・クレイン(しぇいど・くれいん)が微笑んだ。
「……よろしく頼む」
 二人の背後で【光学迷彩】を使用していたデューイ・ホプキンス(でゅーい・ほぷきんす)が姿を現し、頭を下げた。
「ああ、よろしくな」
「よろしく。みんなで頑張ろう!」
 紙虎を頭に乗せたレン・オズワルド(れん・おずわるど)、紙ふたこぶらくだと歩くケイラ・ジェシータ(けいら・じぇしーた)も頭を下げる。
 挨拶をかわし、和気あいあいと話す面々に、近付く人影があった。
「おー、懐かしの紙ペット。いかん、紙を見ると燃やしたくなってウズウズする……」
「ウィル殿―! 燃やしちゃダメであります! おたからをゲットせねば任務失敗であります!」
「わかってるって」
 紙狐を見つめて名残惜しそうにしているのはウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)
 紙狐が燃やされないかと心配そうに見ているルナール・フラーム(るなーる・ふらーむ)の腰には、紐が括りつけられている。
 紐の先は、箒に繋がっていた。
「よしっ、探すぜ!」
 紙狐を解き放ち、【超感覚】と【禁猟区】を立て続けに発動して箒に乗り出発準備。待っていたかのように紙狐が走りだす。
「待つであります! ルナちゃんも行くであります!」
 ルナール・フラームが走りだすと箒も動き出した。
「おたからはどこだー! かぎわけろ、俺の紙犬!」
「それは犬じゃなく狐であります!」
 息も荒く走りながら、涙を拭う動作をするルナール・フラーム。
「どっちだっていいんだよ!」
「酷いでありますっ!」
 ルナール・フラームは、においを嗅ぎながら勢いよく駆けだした。
「うわっ!」
 まっすぐではなくジグザグに走る様子に、箒が暴れ馬のごとく揺れる。
「ちょ、うぁ!」
 ウィルネスト・アーカイヴスは箒から落下。なんとか箒の端を掴む……が。
「とーまーれー!」
 ルナール・フラームの勢いは止まらない。ずるずると引きずられた。
「コォオオン!」
 と、紙狐が鳴いた。ルナール・フラームは急ブレーキをかける。
「だあぁあ! なんだよ!」
「紙狐が、おたから見つけたみたいであります!」
 ウィルネスト・アーカイヴスはなんとか起き上がって紙狐を見る。紙狐は、大地を掘る仕草をしている。
「掘るであります!」
 シャベルを使う必要もなく、ルナール・フラームが土を掘り返した。銅製の宝箱が姿を現す。
「一つめ、ゲットだぜ!」
「やったであります!」
 喜んでふと顔を上げる。【イルミンお宝鑑定団】のメンバーの姿を見つけた。
「おーい、俺達も混ぜてくれよ!」
 呼び掛けて輪に加わる。
「これで全員だな」
 集まった面々を見てエル・ウィンドが頷いた。
「紙ペットを接触させよう!」
 ミレイユ・グリシャムの声に全員が頷く。紙ペット達が、近づけられた。
 金の紙鷹、紙茶リス、紙虎、紙ふたこぶらくだ、紙狐。六匹の紙ペットは前足や尾、胴体に触れあう。
 光が溢れ、流星のごとく紙ペット達に降り注ぐ。
「接触が完了したようですね」
 ホワイト・カラーのその言葉が合図であるかのように、紙ペット達はばらばらに宝を探し始めた。