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作ろう! 紙ペット動物園

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作ろう! 紙ペット動物園

リアクション

 少女が遊ぶ紙犬達の場所へと、二人の影が近付いた。
「あ、あの子よね?」
「うん。きっとそうだよ」
 双葉 京子(ふたば・きょうこ)の問いかけに、椎名 真(しいな・まこと)がしっかりと頷いた。
「紙わんこ!」
 呼んで駆け寄り、全身を撫でまわして抱き上げる。紙わんこも嬉しそうに「くぅん」と鳴いた。
 それが嬉しくて、更に撫でる。
「久し振りだね! 元気そうでよかった」
 満面の笑みを浮かべる双葉京子の様子に、椎名真も笑みをこぼす。
「よしよし、良い子にしてたかな?」
 撫でて、わんこの様子を観察する二人。
「あ、あの子は骨が好きみたいね」
「うん。あれは……背中を撫でられるのを嫌っているみたいだね」
 周りの犬と飼育員達が触れ合う様子に、二人は視線を走らせた。
 椎名真はメモ帳を取り出し、記録をつけていく。
 歓声を上げて、紙ペットと戯れる者達から少し離れ、草葉 祐太(そうば・ゆうた)が小さくなって、木を削っていた。
「……これでいいでしょうか」
 木くずを吹いて飛ばし、出来上がった代物を覗きこむ。
 手乗りサイズの紙ペット達に合わせた、小さな滑り台。
 彼の周りには他にも、猫じゃらしや骨の形のクッション、ゴムボールなどが散らばっている。
 おもちゃの数々の出来栄えに満足し、頷く。
「さぁ、行きますか」
 できたおもちゃを抱え、草葉祐太が歩き出した。
 紙小動物達のすぐ脇で、【紙ペット同好会】のメンバーは、それぞれ紙ペットと戯れていた。
「えーと、話によると紙ペットは……」
 緋桜 ケイ(ひおう・けい)は、メモ帳を取り出した。先程エリザベート・ワルプルギスに聞いたことが書いてある。
 その肩には、紙カラスが乗っている。
「魔力を含むものを与えていればいいんだったな。実際のその動物が好きなものの形をしているとなおいい、か」
「カァ」
 首を傾げる紙カラスを撫で、魔法紙を取り出して野菜や肉の形を描き、差し出す。
「と言っても、カラスは雑食だからな。魔法紙に更に魔力を込めて……」
 集中して食料の形にした魔法紙に魔力をほんの少し、足す。紅茶に砂糖を加えるように、ほんの少し。
「これ、食べるか?」
 紙カラスは、待ってましたとばかりに、紙肉にかぶりついた。
「肉の方が好きなんだな」
 感心するように頷き、食事を始めた紙カラスを観察し始める緋桜ケイ。
 一方、ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)のもとには、様々な種類の紙クマが集合していた。
 ヒグマ、ツキノワグマ、シロクマ、ハイイログマ……など、色も様々だ。
「ふふっ、みんな可愛いですねー」
 ふわん、と笑ってソア・ウェンボリスが紙クマ達を見る。
「まずはエサです。折角だから秋の味覚を用意しましょう」
 魔法紙でサケを作り、栗やキノコも作り、紙クマ達に振る舞う。
 紙クマ達は歓喜に鳴いて、秋の味覚を頬張る。
 がつがつとあっという間に、用意した餌はなくなった。
「よーし、腹は満ちたか?」
 大きなクマの雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)が、手乗りサイズの紙クマ達に呼びかける。
「それじゃあ俺様が、とっておきの技を伝授してやるぜ」
 そう言って、彼は一歩進み出る。
「おまえらが、動物園一のアイドルになるために必要なのは――」
 真剣に呼びかける雪国ベア。紙クマ達もこくり、と頷く。
「可愛い立ち振る舞いだぜ! まずは基本中の基本、おねだりポーズ」
 そう言って、彼自身が手を合わせて上目使いで見て、手本を見せる。
「あとはゴロゴロするのもいいぜ。癒し系として大いに人気が出るはずだ」
 アイドルとしての立ち振る舞いを、伝授していく。
「あとはダンス! ちょうどいい歌もあるし、行進してみねぇか?」
 そう言って、列になって足を動かし、ジャンプして前に進むダンスを教えていく。
「こいつさえ覚えておけば、アイドル間違いなしだぜ!」
 自分の指導ぶりに満足した雪国ベアが、腕を組んでうんうん、と頷いた。


「よしよし、紙ドラゴン、わらわが芸を教えてやろう」
 そう言って紙ドラゴンと向き合う悠久ノ カナタ(とわの・かなた)
「キュウ」
 応じる紙ドラゴンを撫で、悠久ノカナタは色紙を取り出した。
「今から教えるのは、『おりがみ』という」
 そう言って、黄色の折り紙を一枚手に取る。
「はじめは……『かぶと』あたりがいいか。まずは三角形に折る。やってみてくれぬか」
 こくりと頷いた紙ドラゴンは、器用に翼を使い、三角形を形作る。
「うむ、上出来だ。次は……」
 悠久ノカナタが説明しつつお手本を作り、それを真似て紙ドラゴンは、頭や翼を使って紙を折っていく。
「開園したら、皆の前で披露してもらう。しっかり覚えるのだぞ」
「キュウ」
 先生と生徒のようにしっかりと頷きあって、折り紙を続ける。


 作業やペット達の世話が進む、動物園建設予定地のど真ん中に、小さな格闘技用リングが配置されていた。
「紙ペットバトル、第一回戦開始ですぅ〜」
 エリザベート・ワルプルギスの宣言により、紙ペット同士のバトルが開始される。
 この結果で、紙ペットバトルが動物園の目玉になるか否かが決定する重要な役目を担っている。
「頑張ってね、紙フクロウ」
「負けないでよ紙ライオン!」
 そう言って、それぞれの紙ペットを送り出す遠野 歌菜(とおの・かな)カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)
 リングの中央で、紙のフクロウと紙のライオンという、見た目には圧倒的な力の差のバトルが開始。
「いっけぇ!【フライングずつき】!」
「ライオンパンチ!」
 勢いをつけた二匹の攻撃。振りかぶったライオンの攻撃はフクロウに軽くかわされ、頭突きをガツン、と炸裂。
 ライオンが、ふらりと倒れた。
「勝負あり、紙フクロウの勝利ですぅ」
「やった!」
「よく頑張ったよ〜」
 カレン・クレスティアが駆け寄って紙ライオンを撫でる。ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)も紙ライオンを撫でる。
「良いパンチだったが、もう少し振りかぶりを小さくしないと、相手にばれてしまうかもしれない」
 見ていて思ったことを、紙ライオンに伝えていった。
「ふりを小さくして、不意を突けば行けるはずだろう」
「次の対戦者入るですぅ」
「あちきとバトルしましょ!」
「…………」
 続いて会場入りしたのは、レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)の紙山猫と、ロイ・グラード(ろい・ぐらーど)の紙カラス。
「エリザベート……」
 ロイ・グラードは、この紙カラスを作ってもらった時のことを思い出す――。
 ドージェ・カイラスを作ってもらおうとしたら無理だといわれ、カラスに変えられた後。
 ロイ・グラードはジェラートをエリザベートに進呈した。そして。
『もしも俺が戦争から戻って来た時、そのときは――』
 言いかけて、綺麗な指輪を取り出した。
『この指輪を受け取ってほしい』
 そう告げたのだった。
「ぼーっとしてると痛い目みますよ! 真夜!」
「……ドージェ・カイラス、行け」
 呼びかけに応じ、紙山猫と紙カラスが激突。
 紙山猫の頭突きは紙カラスの俊敏な動きに避けられ、できた隙を紙カラスが翼ではたいて、紙山猫を圧倒する。
「勝負あり、紙カラスの勝利ですぅ」
「残念ですねぇ……」
 肩を落とすレティシア・ブルーウォーターに対し、ロイ・グラードは不敵に不気味な笑みを浮かべた。

「次ですぅ」
 エリザベート・ワルプルギスの声に、次の参加者がリングに上がる。
 紙のワシがバサバサと登場し、紙パンダがずしずしとやって来た。
「ワシさん、頑張ってください」
「ワシが相手ですか……パンダのパワーで押せば、なんとかなりそうですね」
 ミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)が紙ワシを撫でる。アーチャー・パジー(あーちゃー・ぱじー)は腕を組んで両者を見た。
「開始ですぅ」
 のんびりとした開始の合図。対峙する二匹。
 先に仕掛けたのは紙パンダの方だった。
「飛び上がられる前に、潰してしまえばこっちのものです」
 パンダの、勢いをつけた頭突き。しかし、ワシは軽々と避けた。
「今です!」
 主の声に応え、よろめくパンダへと距離を詰め、タカは翼でバシンとはたいた。
 パンダは、そのままうつ伏せに倒れていく。ワシは、憮然と立って胸を反りだした。
「紙ワシの勝利、ですぅ」
「やりましたねぇ」
 レティシア・ブルーウォーターの言葉に、ミスティ・シューティスはしっかりと頷いた。アーチャー・パジーは紙パンダを撫でまわす。
「ふむ、スピードに負けたようですね……」
「一回戦のラストバトルですぅ」
 最後の参加者二名は、紙シャチを連れたエルフリーデ・ロンメル(えるふりーで・ろんめる)と紙トンビを連れた滝川 洋介(たきがわ・ようすけ)
「さぁ、オビワンッ! 海のハンターと言われるオルカの実力を見せてやりなさい!」
「絶対、勝つのですわよ!」
「そのつもりだよ」
 シェプロン・エレナヴェート(しぇぷろん・えれなべーと)の呼びかけに、力強く頷いて返す滝川洋介。
「開始ですぅ」
 合図と同時に、両者とも飛び上がる。シャチの歯が鋭く光り、トンビの瞳がぎらぎら輝く。
 シャチは身体を捻って尻尾でトンビを叩き落とそうとし、トンビも翼で叩き落そうと翼に勢いをつける。
「オビワンッ!!」
「行けッ!」
 二人の呼びかけに、シャチもトンビも同時に叩きにかかる。
 二匹の攻撃が相殺。同じだけ力が自分に返ってきて、二匹はぱたりと倒れた。
「ん〜、引き分けですぅ〜」
「あぁ……」
 応援むなしく、二匹の紙ペットは同時に倒れた。
「全てのバトル参加者尾がそろったですぅ。次また行きますよぅ」
 エリザベート・ワルプルギスは楽しげに、バトルの継続を告げたのだった。