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リアクション
そこへ、近付く影が三つ。
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)とエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)とクマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)だ。
剣竜の子供まで連れている。
「なんですかぁ〜?」
首を傾げるエリザベート・ワルプルギスに、歩み寄るルカルカ・ルー。
「一緒に、紙ペットを作ってほしいの」
すっ、と取り出したのは剣竜を折り紙で折ったものだ。
「いいですよぅ〜」
呪文を唱えようとしたエリザベート・ワルプルギスを、手で制止する。
「折り紙はルカの故郷日本の文化よ。簡単、簡単。一緒に折ろう!」
「……折るですか〜」
眉間にしわを寄せ、頬を膨らめるエリザベート・ワルプルギス。
「俺達も折るから、やろうぜ」
エース・ラグランツも加わる。
「息抜き用にコレも持ってきたの。やりましょう?」
ルカルカ・ルーが菓子折りとチョコバーを取り出すと、エリザベート・ワルプルギスの表情がピクリと動いた。
「仕方ないですねぇ」
そう言ってエリザベート・ワルプルギスは魔法紙を手に取った。
「まずは、こうして――」
ルカルカ・ルーの指示のもと、剣竜折りが始まった。
エース・ラグランツとクマラ カールッティケーヤも折るが……。
「う……」
「きれいにおれなーい。よれよれー」
クマラ カールッティケーヤが音を上げた。
「角は曲がるし、端は折れるし」
「定規や爪楊枝を使うと、キレイにできるのよ」
「ムリ―」
なんとか仕上げた二人だったが、その出来上がった剣竜らしきものに、ルカルカ・ルーは冷たい視線を向ける。
「……あれは別のモノみたいですぅ」
「そうね、コレじゃアルマジロよね」
エリザベート・ワルプルギスの感想に苦笑するルカルカ・ルー。「俺は庭を作りに行くよ」
逃げるようにエース・ラグランツが去っていく。
「オイラもあとから行くよー」
クマラ カールッティケーヤが手を振る。
「オイラ、出来上がるまで待ってるから」
「……仕方ないわね。二人で折りましょ」
「……仕方ないですぅ」
苦笑しつつ、菓子を頬張りつつ、折り続けていると、ドラゴニュートが一人、近付いてきた。カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)だ。
「俺も手伝おう」
「あ、カニも来た!」
楽しげにクマラ カールッティケーヤが笑う。カルキノス・シュトロエンデは手を上げて応え、折り紙に参加する。
「……それにしても、どうして剣竜なんですかぁ〜?」
エリザベート・ワルプルギスが、折り紙に苦戦しつつ問いかけた。「他の生徒は、動物園によくいる動物を頼んできますぅ〜。あえてこれを選んだのは、どうしてですかぁ?」
「理由は、二つ」
金の瞳を光らせ、カルキノス・シュトロエンデが語り始めた。
「1つ目は形や生態に慣れて貰える為だ」
真剣に語る姿に、誰もが耳を傾ける。
「ヴァイシャリーですら、前怖がられたが、見慣れてりゃ違うだろ? 俺達とは進化樹形図から遠い竜だがな」
カルキノス・シュトロエンデは、変わった空気におろおろするチビ剣竜を、撫でて落ち着かせる。
「2つ目は竜族の将来の為だ」
「将来……ですかぁ?」
「竜族は、部族や種も多く寿命も長いんで繁殖ペースも遅い。人族は年中発情期でいいよなぁ」
ふう、と深く息をつくカルキノス・シュトロエンデ。
「あと、地球人がやってる”開発”は、既に個体数がヤベェ竜族にゃ厳しい。絶滅回避に協力して貰う為に、種の認知度を高めてぇ」
「そういうことだったんですかぁ」
うんうん、と頷いてエリザベートが納得した。
「長くなって悪いな。でも、知っておいて貰いたかったんだ」
「そんな風に考えてたのねー」
目をぱちくりさせて、カルキノス・シュトロエンデを見るルカルカ・ルー。
こうして話をしながら折って、かなりの数の剣竜が出来上がった。「さぁ、仕上げですぅ」
エリザベート・ワルプルギスが魔力を込めると、剣竜達が一斉に動き出した。
「じゃあ、連れて行きましょう」
ルカルカ・ルーとカルキノス・シュトロエンデが剣竜達を抱え上げ、クマラ カールッティケーヤが数匹にリードをつけて、歩き出した。
「校長はん、僕とも折り紙折ろうやないか」
そう言って近寄るのは大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)だ。
エリザベート・ワルプルギスは鴛鴦茶を一口飲み、不機嫌そうに表情を歪める。
「またですかぁ〜?」
「大変なら、協力しますよ」
「私も折るわ!」
そう言って簡易テーブルを抱え、駆け寄ってくるのは【折り紙教室】の二人緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)と蒼澄 雪香(あおすみ・せつか)。
「頼むですぅ〜」
ため息交じりに二人に頼むエリザベート・ワルプルギス。
「僕は三すくみを作ろうと思うとるんや。カエルとヘビの折り方はわかるから……」
そう言って、魔法紙を一枚手に取る。
「カエルはこうして……こうして折るねん」
「なるほど……やってみましょう」
緋桜遙遠がカエル作りに取り掛かる。
「エリザベート校長、チョウとかテントウムシとか折っていいかしら?」
「おーけぃですぅ〜」
了承を得て、蒼澄雪香が虫を折り始める。
「嬢ちゃん、校長はん、ナメクジの折り方って、わかる?」
カエルとヘビを手早く作り終えた大久保泰輔が、蒼澄雪香とエリザベート・ワルプルギスに問いかける。
「ナメクジ……折ったことはないわね」
「わからないですぅ」
「……ま、やってみようや」
ああでもない、こうでもないと言いながら、四人で折り紙を折り続ける。
紙ペット作りと同時に、様々な場所で建設作業が進められていく……。
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