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リアクション
プロローグ
朝も9時を過ぎれば、すでに照りつける日差しが厳しくなってきている。夏まっさかりの空京の街。2つの大籠いっぱいのチラシを手に、勢い良く店を飛び出しては来たものの、街行く人々を眺めているうちに、チラシを渡す、という行動にしり込みし始めたたま☆るである。
(うう……貰ってくれるだろうかぬ……。冷たい目で睨まれたらどうしようかぬ……)
手にしたチラシには
「本日たま☆るカフェ開店500日記念パーティー 貴方はお客さん? それともスタッフ??」
と銘打たれており、
・和風・アーバン・キュートなど数タイプ、しかもタイプ別5色の制服で一日接客スタッフをしてみませんか?
・料理自慢の貴方! カフェの呼び物、新メニュー募集! ベスト1はたまカフェにて採用!
・新メニューの試食ほか、カフェパーティでゆったり飲食、どうぞおいでください!
・特別ゲストとして空京万博コンパニオンのあの人たちが!?
などのコピーが並んでいる。企画者である空京 たいむちゃんがそのコネを駆使し、パーティの新メニュー試食豪華ゲストとして招待した、ゲストの名前−たいむちゃん本人、アイシャ・シュヴァーラ(あいしゃ・しゅう゛ぁーら)、雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)、イングリット・ネルソン(いんぐりっと・ねるそん)、金元 ななな(かねもと・ななな)らの名前が並ぶ。
その、そうそうたるメンバーが、数時間後にはやってくるのだ。
(ちゃんとしたものが出せるんだろうかぬ……うう……
そもそもスタッフが揃うんだろうか……いやそれ以前にお客さんが来るんだろうかぬ
ううう……胃が痛くなってきたんだぬ……)
たま☆るは巨大なチラシ籠2つを手にしたまま、街路樹の陰にぼんやりと立っていた。くっきりと晴れた空を映すビルの窓ガラスがキラキラと眩しい。籠は心の重さに比例しているかのようにずっしりと重い。
(と……とにかく配るしかないんだぬ……)
気を取り直し、籠を木陰に置く。チラシの束を手にして、道行く人におずおずとチラシを差し出してみる。だが、なかなか声をかけられず、あまりに控えめすぎる差し出し方なため、気づかずそのまま通り過ぎてゆく人が多い……。
(こ、こんなに難しいとは……うう……心が折れそうだぬ……)
ため息をついて、たま☆るは街路樹に寄りかかった。背後にはチラシが山をなしている。そのすさまじい量に恐れをなし始めたたま☆るであった……。
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